浮遊図書館の魔王様
第122話 狂人の動きを知りました
流れる血で凄惨な血化粧をしながら笑みを浮かべるレキに武蔵丸は狂気を感じる。
(普通じゃないぴょん)
普通ならあれほどの血が流れたのであれば多少は戦意が鈍るものだ。だが、レキは全く衰えない。それどころか戦意は向上していると見ていいだろう。
(ならば、四肢を叩きおり戦意があっても戦えないようにするぴょん)
武蔵丸としても勇者ではあるが無闇矢鱈と命を奪うのは好きではない、それ故の判断だ。
そう考えると武蔵丸は四肢に力を込める。しかし、レキはその様子を見ながら無防備に右手だけを前に出す。
「『戻れ』」
ただ一言告げる。ただ、その一言は劇的な変化をもたらした。武蔵丸の手にあるレキの大剣がその手にあるのを嫌がるかのように暴れ出したのだ。
「な!」
驚愕のあまりに武蔵丸は暴れる大剣から手を離すと大剣はクルクルと回転しながらレキの手元に再び収まった。
「血を啜り、姿を顕せ、鮮血皇帝」
レキが眼前に大剣を掲げただ唱える。それだけで威圧感が周囲に充満し始める。
一瞬にして警戒数値が跳ね上がった武蔵丸は聖斧を振り上げ脚力に物を言わせ突撃する。
間合いを詰めながら今だに剣を掲げたままのレキを武蔵丸は冷静に観察する。
(さっきまで血塗れだったのにいつの間にか血が止まったぴょん?)
疑問を感じながらも聖斧をレキ目掛け振り下ろす。しかし、その斧撃は甲高い音をと共に阻まれる。
「今度はなにぴょん!?」
弾かれ態勢を完全に崩した武蔵丸は再度、レキに視線を向ける。その視線の先には確かにレキは先ほどと同じ様にただ剣を掲げているだけだ。ただ、武蔵丸が感じたように血塗れだったはずだったのに既に血の跡すら見えない。
一つ、レキが掲げる大剣の刃が血のように赤く染まっていること以外は。
「魔剣?」
赤く染まり脈打つ大剣を眺めながら武蔵丸は呟く。
魔剣。それは武蔵丸の持つ聖なる力を宿した武器と真逆の性質を持つ武器である。
聖なる武器、聖剣と呼ばれるのが代償が少量で済むのに対して魔剣と呼ばれる類の武器は代償が大きいというリスクを背負う。
「ええ、魔剣、鮮血皇帝。あまり名前で呼びたくないんですよ。だからいつもは名無しと読んでいますが」
片手で大剣を持ち遊びなが不敵な笑みを浮かべる。
「魔剣として使うための対価は『所持者の一定量の血』」
よく見ると流れ出る血が大剣が喰らうかのように刃に引き寄せられている。赤い染みの一つとなる。
「対価は支払いました」
軽く大剣を振るう、それだけで大地に亀裂が入る。その光景に武蔵丸は聖斧を構え答える。
レキ、武蔵丸が同時に踏み出し互いの武器を交差させる。
「弾けて、鮮血皇帝!」
レキが唱えると刃を覆っていた血が弾ける。弾けた血は赤い針となり武蔵丸に突き刺さる。
「ぐぎゃ!」
左目に赤い針が突き刺さった武蔵丸が悲鳴を上げ、後ろに下がる。
赤い針はすぐに大剣に戻り赤黒い刃と化す。そして隙を逃すまいと大剣を振り切った。
閃光が走ると共に紅い雫が飛び散り、武蔵丸の左手が聖斧を握りしめたまま宙をクルクルと回りながら飛ぶ。
「鮮血皇帝という大層な名前のくせに使える能力は刃を覆った血の形態変化というなんとも微妙な能力。不意をつくことにしか使えない。しょぼい剣です」
呆れたような声を出しながら大剣を振るった勢いを殺すことなくレキは再度回転。ただし、今度は武蔵丸の足を狙うべく下方に刃を放つ。
「きがぁぁぁぁ!」
針の刺さった左目に右指を突き刺し血の針が刺さった左目をえぐり出し、投げ捨て、足に迫る刃を武蔵丸は上から無理やり踏みつける。
「いや、迂闊ですよ」
レキの嘲笑とも言える声をあげ、武蔵丸を眺めた。
大剣を踏みつけた武蔵丸の足から血の刃が生える。
「血の形態を変えられるというのは別に針とは限らないんですよ」
血の刃で抉るように大剣を動かし武蔵丸の傷口を抉る。しかし、武蔵丸はその傷を無視し、傷口が広がるのも構わずに左脚から血を撒き散らしながらレキに蹴りを放つ。
「ぐぇ」
鳩尾に蹴り飛ばされ一瞬呼吸が止まる。落下してきた聖斧を握りしめたた左手を右手で掴み袈裟斬りに振る。
しかし、レキも呼吸ができない状態で有りながらも武蔵丸が蹴りをはなったことにより自由になった大剣を再び閃かし、逆袈裟斬りを放つ。
「「がふっ」」
二人の放った剣撃は寸分たがわず両者を斬り裂き、胸から大量の血が流れる。
「ああ、楽しかった」
大量の血が流れる中、レキは膝をつき満足げな声を上げる。その前には同様に血を流した武蔵丸が倒れこんでいた。
武蔵丸は息絶え絶えになりながらも恍惚の笑みを浮かべるレキを見上げる。
「お前……イカれてるぴょん」
「そんなことないわよ。さあ、次の相手を……」
動くたびに血が滴り落ちるような状態でレキはフレイムゴーレムを軽々と葬ったゼシカに向き直るのであった。
(普通じゃないぴょん)
普通ならあれほどの血が流れたのであれば多少は戦意が鈍るものだ。だが、レキは全く衰えない。それどころか戦意は向上していると見ていいだろう。
(ならば、四肢を叩きおり戦意があっても戦えないようにするぴょん)
武蔵丸としても勇者ではあるが無闇矢鱈と命を奪うのは好きではない、それ故の判断だ。
そう考えると武蔵丸は四肢に力を込める。しかし、レキはその様子を見ながら無防備に右手だけを前に出す。
「『戻れ』」
ただ一言告げる。ただ、その一言は劇的な変化をもたらした。武蔵丸の手にあるレキの大剣がその手にあるのを嫌がるかのように暴れ出したのだ。
「な!」
驚愕のあまりに武蔵丸は暴れる大剣から手を離すと大剣はクルクルと回転しながらレキの手元に再び収まった。
「血を啜り、姿を顕せ、鮮血皇帝」
レキが眼前に大剣を掲げただ唱える。それだけで威圧感が周囲に充満し始める。
一瞬にして警戒数値が跳ね上がった武蔵丸は聖斧を振り上げ脚力に物を言わせ突撃する。
間合いを詰めながら今だに剣を掲げたままのレキを武蔵丸は冷静に観察する。
(さっきまで血塗れだったのにいつの間にか血が止まったぴょん?)
疑問を感じながらも聖斧をレキ目掛け振り下ろす。しかし、その斧撃は甲高い音をと共に阻まれる。
「今度はなにぴょん!?」
弾かれ態勢を完全に崩した武蔵丸は再度、レキに視線を向ける。その視線の先には確かにレキは先ほどと同じ様にただ剣を掲げているだけだ。ただ、武蔵丸が感じたように血塗れだったはずだったのに既に血の跡すら見えない。
一つ、レキが掲げる大剣の刃が血のように赤く染まっていること以外は。
「魔剣?」
赤く染まり脈打つ大剣を眺めながら武蔵丸は呟く。
魔剣。それは武蔵丸の持つ聖なる力を宿した武器と真逆の性質を持つ武器である。
聖なる武器、聖剣と呼ばれるのが代償が少量で済むのに対して魔剣と呼ばれる類の武器は代償が大きいというリスクを背負う。
「ええ、魔剣、鮮血皇帝。あまり名前で呼びたくないんですよ。だからいつもは名無しと読んでいますが」
片手で大剣を持ち遊びなが不敵な笑みを浮かべる。
「魔剣として使うための対価は『所持者の一定量の血』」
よく見ると流れ出る血が大剣が喰らうかのように刃に引き寄せられている。赤い染みの一つとなる。
「対価は支払いました」
軽く大剣を振るう、それだけで大地に亀裂が入る。その光景に武蔵丸は聖斧を構え答える。
レキ、武蔵丸が同時に踏み出し互いの武器を交差させる。
「弾けて、鮮血皇帝!」
レキが唱えると刃を覆っていた血が弾ける。弾けた血は赤い針となり武蔵丸に突き刺さる。
「ぐぎゃ!」
左目に赤い針が突き刺さった武蔵丸が悲鳴を上げ、後ろに下がる。
赤い針はすぐに大剣に戻り赤黒い刃と化す。そして隙を逃すまいと大剣を振り切った。
閃光が走ると共に紅い雫が飛び散り、武蔵丸の左手が聖斧を握りしめたまま宙をクルクルと回りながら飛ぶ。
「鮮血皇帝という大層な名前のくせに使える能力は刃を覆った血の形態変化というなんとも微妙な能力。不意をつくことにしか使えない。しょぼい剣です」
呆れたような声を出しながら大剣を振るった勢いを殺すことなくレキは再度回転。ただし、今度は武蔵丸の足を狙うべく下方に刃を放つ。
「きがぁぁぁぁ!」
針の刺さった左目に右指を突き刺し血の針が刺さった左目をえぐり出し、投げ捨て、足に迫る刃を武蔵丸は上から無理やり踏みつける。
「いや、迂闊ですよ」
レキの嘲笑とも言える声をあげ、武蔵丸を眺めた。
大剣を踏みつけた武蔵丸の足から血の刃が生える。
「血の形態を変えられるというのは別に針とは限らないんですよ」
血の刃で抉るように大剣を動かし武蔵丸の傷口を抉る。しかし、武蔵丸はその傷を無視し、傷口が広がるのも構わずに左脚から血を撒き散らしながらレキに蹴りを放つ。
「ぐぇ」
鳩尾に蹴り飛ばされ一瞬呼吸が止まる。落下してきた聖斧を握りしめたた左手を右手で掴み袈裟斬りに振る。
しかし、レキも呼吸ができない状態で有りながらも武蔵丸が蹴りをはなったことにより自由になった大剣を再び閃かし、逆袈裟斬りを放つ。
「「がふっ」」
二人の放った剣撃は寸分たがわず両者を斬り裂き、胸から大量の血が流れる。
「ああ、楽しかった」
大量の血が流れる中、レキは膝をつき満足げな声を上げる。その前には同様に血を流した武蔵丸が倒れこんでいた。
武蔵丸は息絶え絶えになりながらも恍惚の笑みを浮かべるレキを見上げる。
「お前……イカれてるぴょん」
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