浮遊図書館の魔王様

るーるー

第118話 ビリアラの応用力をみました

「あ、やばい」
「なにがです?」


 ようやく恐怖状態から抜け出したマーテがわたしを見上げてきた。
 ウサギが用意した巨大な鏡が空中に浮かびそこに映し出されているビリアラが明らかに魔力の質が違う黒い剣を使い出したのを見てわたしの脳が警戒の音を鳴らす。


「言ってる暇はなさそうだ」


 結界に込める魔力を増やしとりあえずリングの周辺も結界で包み込んだ。ただし、女神陣営を除いてだ。
 次の瞬間、風を切り裂く音を響かせながら黒い閃光がリング、主に女神の陣営に叩き込まれた。
 雷が落ちたような轟音を響かせながらリングに漆黒の剣が突き刺ささり込められた魔力が爆発するのをわたしは見た。


「あれは紙魔法ペーパークラフトで作られた剣?」


 今までは紙で作られた剣だった気がするけど今飛んできたのは明らかに魔力密度が違うし色も漆黒だ。


「あんた! なんでワタシ達も結界で守らないのよ!」


 漆黒の剣の爆発により周りに砂埃が巻き上がる中、タルメアの怒りに満ちた声が聞こえてきた。やっぱり無事じゃないか。


「いや、一応女神だし死なないかと思って……」
「死ぬ死なないの問題じゃないわ! 誠意! 誠意の問題よ」


 退屈しのぎにこちらに喧嘩を売ってきといてなかなかに言うね。というか女神なんだから逆に住民を守るくらいして欲しかったよ。


「あの女神には誠意があるの?」
「どの女神よ?」


 わたしが指差した方をタルメアを含めたほかの女神達が見るとそこにはボロボロになった勇者の首根っこを掴んでいる傷一つないハピるんの姿があった。


「あぶなかった〜 服が汚れるとこだったよ〜」


 そう独り言を呟くとハピるんはボロボロになった勇者を投げ捨て、服の埃を払い落とすようにポンポンと叩いていた。


「「「……」」」
「で、誠意ある対応についてなんだけど……」
「私達! 女神だから気遣い無用よ!」


 女神達が絶句している中、わたしが話を進めようとタルメアが大きな声を出してきた。勝った。


『どうやらハピるんの勇者が削られ始めているようだ!』


 ウサギの実況に釣られて鏡を見ると確かに殲滅戦と言わんばかりに黒い人形が近接攻撃による一撃でピンク服の勇者達を地面に沈め始めていた。


「凄い! 完全に自律して動いてる」


 多分、あの漆黒の人形は魔力をかなりこめて作れた物なんだろう。魔法を受けた瞬間に当たった部分が紙片に変わり周りに飛び散ってるけどすぐに元に戻ってるし、ある意味紙魔法ペーパークラフトの弱点をなくしてると言ってもいい。


「あれが出てきたら数で攻める事に意味がありませんから」
「そうだね。近づいてくる敵には漆黒を当てればいいし、ビリアラ本人は遠距離から攻撃したらいい。さらに漆黒は紙魔法ペーパークラフトで作った物だから同士討ちを考慮する必要がないし」


 レキの冷静な分析にわたしは頷き答えた。
 個で群を圧倒する理想形と言える。


「そろそろ決着ですかね」


 レキの言葉で鏡に再び視線を向けるとビリアラが上空に漆黒の剣を幾つも展開さしていた。それは全て空にむけられているようだ。剣が漆黒になってから魔法の性能が桁外れに上がってるな〜


「おそらくはあの人形でどの程度自動で動くか試したのでしょう」
「実験が終わったから早速使うんだね。流石はビリアラ」


 そんな好き勝手にいっている間に鏡の向こうではビリアラが上空に展開さしていた漆黒の剣を全て空中に放つ。
 剣は回転しながら空を舞い、遅れて幾つもの破裂音が観客のいるこのリングまで聞こえてきた。


「おー」


 間の抜けたわたしの声が響く。
 ビリアラの放った漆黒の剣は全て空を飛ぶターゲットである鳥を殲滅したのだ。


「終わりましたね」
「だね」


 はじめこそ数で押されていたが蓋を開けて内容をみれば完全にビリアラの勝利と言えるだろう。


「まぁ、本屋を潰したのは大目に見るよ」
『目標を全て撃破したのは浮遊図書館ビリアラたぁぁだぁぁぁ!』


 ウサギのやかましい実況、そして観客の割れんばかりの歓声を聞きながらわたしは苦笑したのであった。

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