浮遊図書館の魔王様

るーるー

第116話 勇者のチートをみました

「ルールは簡単です」


 ウサギはそういうと懐から数枚の紙を取り出すと宙に向かい投げた。すると紙が鳥の形をとりウサギの周りを飛び始める。


「今からこの紙の鳥をライブラリの街に放ちます。全部で十羽です。鳥にはそれぞれ点数が設けられています」


 ウサギは鳥を指差しながら説明をする。


「ですので最終的に捕まえた鳥の点数が高いほうが勝利となります」


 捕まえて見るまで鳥の点数はわからないわけか。何点が最高点かわからないけど点数が低いやつばかりでは勝てないと。


「点数は壊したら入らないのですか?」
「いえ、壊した場合も点数は入ります」
「ハピるんからも質問だけど、参加するのは私の勇者と魔王側一人でいいのよね?」
「はい、それで構いません」


 ビリアラとハピるんが質問を終え、対峙する。それを見たウサギは満足そうに頷く。


「では、準備はよろしいですね? それではスタートです!」


 ウサギが高らかに宣言した瞬間、シュっとした音が鳴り、続けてウサギの横を羽ばたいていた鳥が一話爆散した。


「⁉︎」


 驚愕の表情を浮かべたウサギはゆっくりとビリアラの方に視線を向ける。するとそこには紙魔法ペーパークラフトを展開し、ウサギと同じように幾つもの紙で作られた剣を周囲に浮かべるビリアラの姿があった。


「……先手必勝」


 ビリアラの言葉と同時に周囲の紙の剣が一斉に動く。


「っ! 舞いなさい!」


 ここで潰されたらゲームにならないと思ったウサギは瞬時に紙の鳥を宙に放つ。主の命を受けた鳥達が一気に加速し、散開する。
 明らかにビリアラの方が早く紙魔法ペーパークラフトを放ったはずだったが紙の剣は全てが空を切った。


「逃がさない」


 ビリアラがそう呟くと跳躍、先程空を切った剣が一気にただの紙へと戻りビリアラの足元に集まると足場となりビリアラを宙へ浮かべる。飛んで行った鳥に向かい加速する。


「おお! そんな使い方が!」


 紙魔法ペーパークラフトで足場を作りその上に乗る。さらに紙魔法ペーパークラフトで足場を操ることで自由に空を飛ぶ。そんな使い方ができるなんて思いもよらなかった。


『ハピるん様は追わないのですか?』
「今から追うわ」


 そういうとハピるんは懐から小さな笛を取り出すと思いっきり吹いた。


 ピィィィィィィ!


 耳が痛くなるような音が響き渡り思わず両手で耳を抑えた。


「勇者! 来なさい!」
『はい! 姫!』


 何人もの声が聞こえズザザと言う音を鳴らしながら幾人もの男達が膝をついていた。全員が全員ピンクの服で背中には姫の一文字。


「私の勇者達よ!」
「え、勇者って一人じゃないの⁉︎」
「勇者が一人だなんて誰も言ってないし〜」
『まぁ、確かに女神が選ぶ勇者は一人とは言ってないですね』


 確かに言ってなかったけどずるくない?


「さぁ、勇者改め親衛隊! あの紙の鳥を捉えなさい! あと何人かはあのビリアラって子を足止めしちにきて〜」
『はい! 姫様!』


 ハピるんの言葉にピンク服達が一斉に散会する。しかも一人一人が無駄に機敏だ。


「ハピるんの勇者に授けた能力は勇者シールなの〜」


 勇者シール? なんだそれ? 古代魔導具アーティファクトみたいなものかな?


「勇者シールは貼った人間を勇者にできるものなのよ〜」
「だからあんなに勇者がいるのか!」


 ある意味一番ずるい能力だ。下手したらいくらでも勇者が増殖しちゃうわけだし。
 でも……


「ビリアラとは相性が悪いじゃないかな」


 ビリアラの使う魔法。紙魔法ペーパークラフトは極論で言えば一対多数の極致のような魔法だからね。ただ、範囲が狭いというのが難点だけど。


 ドォォォォン


 音が響き軽く地面が揺れる。
 音のなる方を見ると土煙が上がり空中には幾つも紙魔法ペーパークラフトで作られたであろう剣と弾き飛ばされたであろうピンク服が浮かんでいた。


「むぅ〜 あれだけじゃまだ足りないのね」
「どうしますか姫」


 一人だけハピるんの側に残ったピンク服、どうもこいつが勇者の元みたいだ。


「もっと増やして〜 一気にやっちゃって〜」
「姫の仰せのままに!」


 そう言った男はばっと手をふるい手元に丸いものを出現させる。あれが勇者シールというやつかな。


「これで君も勇者~」


 そんなことを呟きながらペタペタと観客に貼っていく。
 え、そんなので勇者になっちゃうの?


『姫のために!』


 貼られた人達はテンション高めにそんなこと言ってるし。勇者がなんかピンクの服を配ってるし。


「さあ、勇者たち! ハピるんのために戦うのよ〜!」
『はい! 姫!』


 先程のピンク服の人達と同じように勇者からもらった服を着込み散会する新しい勇者達。


「ビリアラ大丈夫かな〜」


 再び大きな音が鳴ったほうを見ながらわたしはそう呟いた。

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