浮遊図書館の魔王様
第112話 戦いが始まりました
『みなさん、本日はお日柄も良く快晴であります。こんな炎天下の中集まる皆様は大層退屈しているだろうと思いましてこのウサギ、大衆の皆様に娯楽を提供しようと……』
「ながいわ!」
ウサギの長い口上を以前お菓子を買い占めた少女、女神タルメアが蹴り上げ止める。確かに長い。
ライブラリ、大広場。
それなりの模様し物ができる大きさの広場にはかなりの人数が集まっており女神、勇者と浮遊図書館の戦いをは完全に見世物になっている。あ、あそこには屋台まであるじゃないか。
「お主、勝算はあるんじゃろうな?」
「ん?」
浮遊図書館側の待機場で椅子に座り本を読んでいたわたしにベアトリスが話しかけてきた。今いい所なんだけどな。
「勝算っていうかゲームでしょ?」
「はぁ、そうだろうと思いましたが全くなにも考えてないのですか?」
わたしの答えにユールはため息をついた。え、考えないとダメだったの?
「これは言うならばゲームと言う名の外交戦じゃからな」
「ええ、女神と勇者は言うならばその国で一番崇拝されている象徴ですからここで勝利するということには非常に意味があります」
なるほど、そういう考え方もできるのか。向かいの女神側の待機場を見てみるとやたらとワイワイとしていて楽しそうだ。浮遊図書館側もあれくらいの心構えでいればいいのにやたらと優秀なだけに頭が硬い。
「そういえば魔王様、戦いの方法はどう決めたのです?」
「あ、オレも知りたい!」
ビリアラが何気無く聞いてきた事にアルも食いつく。まぁ、気になるよね。
「あ〜、まぁ、ゲーム感覚で適当に決めといたよ」
あのウサギも割とノリノリでこちらの準備も手伝ってくれたし。いろいろと仕掛けも作るのやってくれたしね。
「戦闘はないのでしょうか?」
レキがそわそわした様子で尋ねてきた。さっきから鞘から刃出して輝きを見ては再び鞘に戻すのを繰り返してるし落ちつきが全くない。見れば耳がピコピコと動いてるし興奮してるのかもしれない。
「戦闘要素もちゃんとあるよ。それなりに楽しめるやつを用意したよ」
何しろ今回は浮遊図書館内での戦闘じゃないわけだしね。ライブラリの住人も見てるわけだしあんまり血生臭いのは見せるわけにはいかないからそこは考えたよ。
「やい! 魔王! 早くしなさい! 今すぐ出てきたら踏みつけてパンツを上げるわ!」
「タルメア様、お腹が冷えるからやめてピョン」
即席で作られたかなり大きなリングの上にはわたしに精神的ダメージを与えてきたあの褐色のウサミミ獣人が肩に小柄な女神タルメアを乗せながら立っていた。
「あのウサミミできますね」
「そうなの?」
「はい、纏っている闘気というものでしょうか? 他とはレベルが違います」
闘気って。そんなものが存在するのか。
レキは心底嬉しそうだ。わたしも目を凝らしてウサミミを見てみるが闘気とやらは微塵も見えない。
レキが好戦的になってます。だが、そんなものは予想の範疇だ。わたしはリングに控えるウサギに目線を送る。するとそれに気づいたウサギがコクリと頷いた。どうやら準備は万端のようだ。
「早くかかってきなさいよ!」
「タルメア様、はしたないピョン」
「止めないで武蔵丸! 今日こそは女神の中でワタシが一番だと証明するんだから!」
なかなかリングに上がらないわたしたちに焦れたのか女神タルメアが怒鳴り始めたのを武蔵丸が宥めていた。
「じゃぁ、こちらは……」
レキがスッと一歩前に出る。殺る気満々だ。
「マーテ行ってね」
「「え?」」
行く気満タンだったレキ、そして屋台に目を奪われていたマーテが二人同時に驚いたような声を出した。
「じゃ、よろしく」
固まる二人を放置しわたしはカバンから本を取り出す。すぐにビリアラが紙魔法を使い日傘と椅子を用意してくれた。
「ありがとう、ビリアラ」
「この程度どうということありません」
さらにビリアラが持ってきた紅茶を受け取る。うん、いい香り。
「あ、レクレ様、お菓子たべる?」
「たべるたべる」
アルが買ってきたお菓子を受け取り封を切る。これもいい匂いだ。
「「待って待って待って!」」
「……なに?」
慌てたようにレキとマーテが足元に縋り付いてきた。レキは怒り心頭でマーテは涙目だ。
「あんな戦士と戦える機会はめったにありません! 私に行かせてください!」
「あんな筋肉いっぱいの人に叩かれたらたんこぶですまないよぉぉぉ!」
「ううっ」
両極端なリアクションを見せる二人にさすがにわたしもたじろいだ。
「でもレキ、この戦いはレキの望むような戦いにはならないと思うよ?」
「……どういう意味です」
半目で睨むのはやめましょう。怖いよ。
『それでは今から第一回戦早食い対決を始めたいと思いまーす』
「「早食い??」」
ノリノリのテンションで続けるウサギの言葉にマーテ、レキを含めわたしとビリアラ以外の全員が頭に疑問符を浮かべるのだった。
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