浮遊図書館の魔王様
第106話 夢を砕かれました
「今日はなんだか空気がパリパリするね」
ライブラリ本通りをマーテ、ビリアラと共に新刊を求めていたわたしはそう呟いた。
「パリパリ?」
「……なんですかその表現は」
両手に荷物を持った二人がこちらの方を見てくる。
さて、なんと説明したものか。
「うーん、パリパリというかチリチリといった感じ?」
「見事に擬音ばかりですね」
何故かがっかりしたようにビリアラはため息をついた。
いやね、ビリアラさん、表現力がないんだよ。ふぃーりんぐ? 的な物なんです。
「レクレさま、今日の夕食はチリチリじゃないよ」
マーテが真面目な顔で言ってきた。
別にチリチリした物を食べたいわけじゃないんだけど。今もそんなにお腹減ってるわけじゃないし。
「お腹減ってないから大丈夫だよ」
「でもレクレさま、さっきレキねえのおやつを勝手に……」
「マーテ! あっちに最近できたという新しいお菓子屋さんがあるみたいだよ!」
マーテの言葉を遮り新しく出来たと聞いたお菓子屋さんをわたしは指差した。
「おかしー」とマーテはお菓子屋さんに吸い寄せられるかのように小走りになり向かって行った。そんなマーテをビリアラは心配そうにしながら着いて行った。
危ない危ない。マーテに言われるまで忘れてたけど小腹が減ったからレキのおやつを勝手に食べたんだった。
代わりのものを買って帰らないとバレる。
「あれにするかな」
マーテ達が向かった先には人集りができてるしかなり売れてるお菓子なんだろう。売れ筋のお菓子ならよほどのことがない限りはまずくはないはずだしね。
「でもなんだろ? この感覚……」
マーテ達の方に向かい歩きながらも今だに感じている感覚について考える。
やはり感覚的にはチリチリ? という気がするしなぁ。何故か以前にも感じたことがあるようなきがするし。
なんだっけなぁ〜?
「売り切れってどういうことだよ!」
「おっと」
考えてたらもう人集りに辿りついちゃったよ。でもなにこの騒ぎ?
「それが、先ほど来られたお客様が全て買い占めて行かれまして……」
「買い占め?」
そう聞き店前に展示されているメニューを見るとなかなかの金額のお菓子のようだ。これを全部買い占めたのか。
「この店は一人五つまでって決めてたんじゃないのか!」
「そ、そうなんですが……」
お客に言い寄られるおそらく店主さん? は額に汗を浮かべながら一生懸命誤っている。なかなかにかわいそうだな。
店主さんがポケットに手を入れ布切れを取り出し額の汗を拭う。やたらとカラフルな布切れだなぁ〜
「あぁぁ⁉︎」
「ん?」
急に店主さんが大きな声を上げたため周りのみんなの視線が一斉に店主さんに集まる。そしてワナワナと震える店主さんを見た後に視線が自然と手に持っている布切れに向かう。
わたしの視線も店主さんの持つカラフルな布切れに移っていた。しかし、店主さんが持っていたのは、
「パンツ?」
しかもヒラヒラがやたらと付いたパンツだ。
まさかこのおっちゃんの私物か?
「ああ! せっかく頂いたパンツで汗を拭いてしまうなんて!」
よかったおっちゃんのやつじゃないみたいだ。
「パンツなんてどうでもいいんだよ!」
「お菓子を出せ!」
「パンツを食べさろ!」
「パンツを切り刻んでトッピングにしろ!」
お客さん達もどんどんヒートアップしてるし、こりゃここのお菓子は無理かな。
「騒がしいわ! 愚民ども! おとなしく跪けば踏んであげるわ!」
誰だよ? いきなり人を愚民呼ばわりして変なことを言ってる奴は。
どうせろくなやつじゃないと思いながらも声がした方に振り返ると、
「っっっ!」
紫の長い髪に蒼い瞳を持つ芸術品のような美少女がお菓子を食べながら仁王立ちしており、その後ろには黒い服を着込み真っ黒なメガネをかけた男達が跪いていた。
なにこの子! 見てるだけで凄いチリチリする! 空気が変なのはこの子が原因か!
「聞こえなかったのかしら? 跪いたら踏んであげると言ったんだけど?」
そう言いながら美少女は後ろに控え跪いている男の背中をやたらと尖った靴でグリグリて踏みつけていた。
「ああ! 女神様! もっともっとしてください!」
……なんだこの変態の編隊は。お近づきには絶対なりたくない類だ。
恍惚の表情を浮かべている男たちに白い目で送りながらも視線を再び美少女に戻す。
美少女は新たなお菓子を頬張りながらまだ男の背中を踏み続けている。
「ワタシが全部買い占めた店の前で暴れるのはやめなさい! 迷惑でしょ!」
変態を従えているわりにはまともなことをいう。しかし、買い占めたのはこの子か。確かに後ろの黒服がなんだか大きな箱持ってるしあれに入ってるのか。
「おい嬢ちゃん、俺たちはお菓子が欲しいんだよ」
「それは残念ね! ワタシが買い占めちゃったわ」
美少女はむしゃむしゃと次々に新しいお菓子を取り出し口に放り込みながら答えた。
「だからよ? そんだけ買い占めてるんだからよ。いくつか分けてもらいたいんだが」
「お断りよ!」
「はぅぅぅ!」
詰め寄る男の言葉を遮り美少女は大声を上げる。黒服も美少女の靴が更に背中にめり込んだ筈なのに喜悦の混じった声を上げる。
「てめぇが買い占めたからだろが!」
男が拳を振り上げ美少女に殴りかかろうとする。まずい!雷化の魔法陣が書かれた紙をポケットから取り出そうとするが間に合わない!
「武蔵丸!」
「はぁーい」
美少女が誰かの名前を読んだ次の瞬間、美少女の前に大きな音を立て何かが着地し、土煙が舞い上がった。
そんなものに構わず男は拳を土煙で見えなくなったが美少女のいたところに向かい振るった。
「うらぁ!」
パァン! と乾いた音が響き男が腕を伸ばし切った姿勢で固まる。
「へへ、素直に渡しとけば痛い目を見ずに済んだのによ」
「なに言ってるの! 痛い目を見るのはあなたのほうよ!」
「ああ? なに言って……かぺぇ!」
得意げな顔で喋っていた男が突如として視界から消え、少し離れた建物から何かがぶつかるような音が聞こえてきた。そちらを見ると建物には人型の穴が空いてるし。
「なにしたんだ?」
魔法を使ったような感じはしなかった。でもさっきより肌で感じるチリチリした感覚は大きくなっている。
「ゴホ! ゴホ! 武蔵丸、あんまり砂埃を上げないで頂戴! 目が痛いわ」
「それはすまなかったぴょん。女神様」
砂埃が晴れて来るとそこには咳き込む美少女と岩のような大きな体が膝を付いていた。
褐色の肌に筋肉をこれでもかというほど盛り込んだ体は腕一本でわたしの体と同じくらいあるだろう。そしてその体には歴戦の戦士であるかのように至る所に傷跡があった。
いや、一番わたしの目に止まったのはそう言ったものではなく頭の上で揺れる、
「うさ耳だと……」
そうごつい人の頭の上に揺れる物体、それは見間違えることはないほどの立派なうさ耳だ。 
「うわぁぁぁぁぁん!」
わたしは地面に膝をつき涙を流した。なぜかって? 決まってる。
「なんで美少女じゃないんだよぉ!」
ケモミミは美少女こそに似合うんだ! 決して厳つい奴につけていいものじゃない! 可愛いは正義なんだ!
「あの人、涙ながしてるけど大丈夫かぴょん?」
「放っておきなさい。それより武蔵丸。新しいパンツを出して! お腹が冷えるわ」
「……穿いてなかったぴょん?」
「さっきあの店の店主にあげたの。ないて喜んでたわ!」
「……また売られてないといいねぴょん」
そんなやりとりの声が徐々に遠ざかって行くが失意のどん底のわたしには意味がよくわからなかった。
「レクレさま! レクレさま!」
マーテやビリアラに声をかけ続けられ意識がしっかりし出したのは30分後のことだったという。
ケモミミは美少女にこそ似合うをんだ!
ライブラリ本通りをマーテ、ビリアラと共に新刊を求めていたわたしはそう呟いた。
「パリパリ?」
「……なんですかその表現は」
両手に荷物を持った二人がこちらの方を見てくる。
さて、なんと説明したものか。
「うーん、パリパリというかチリチリといった感じ?」
「見事に擬音ばかりですね」
何故かがっかりしたようにビリアラはため息をついた。
いやね、ビリアラさん、表現力がないんだよ。ふぃーりんぐ? 的な物なんです。
「レクレさま、今日の夕食はチリチリじゃないよ」
マーテが真面目な顔で言ってきた。
別にチリチリした物を食べたいわけじゃないんだけど。今もそんなにお腹減ってるわけじゃないし。
「お腹減ってないから大丈夫だよ」
「でもレクレさま、さっきレキねえのおやつを勝手に……」
「マーテ! あっちに最近できたという新しいお菓子屋さんがあるみたいだよ!」
マーテの言葉を遮り新しく出来たと聞いたお菓子屋さんをわたしは指差した。
「おかしー」とマーテはお菓子屋さんに吸い寄せられるかのように小走りになり向かって行った。そんなマーテをビリアラは心配そうにしながら着いて行った。
危ない危ない。マーテに言われるまで忘れてたけど小腹が減ったからレキのおやつを勝手に食べたんだった。
代わりのものを買って帰らないとバレる。
「あれにするかな」
マーテ達が向かった先には人集りができてるしかなり売れてるお菓子なんだろう。売れ筋のお菓子ならよほどのことがない限りはまずくはないはずだしね。
「でもなんだろ? この感覚……」
マーテ達の方に向かい歩きながらも今だに感じている感覚について考える。
やはり感覚的にはチリチリ? という気がするしなぁ。何故か以前にも感じたことがあるようなきがするし。
なんだっけなぁ〜?
「売り切れってどういうことだよ!」
「おっと」
考えてたらもう人集りに辿りついちゃったよ。でもなにこの騒ぎ?
「それが、先ほど来られたお客様が全て買い占めて行かれまして……」
「買い占め?」
そう聞き店前に展示されているメニューを見るとなかなかの金額のお菓子のようだ。これを全部買い占めたのか。
「この店は一人五つまでって決めてたんじゃないのか!」
「そ、そうなんですが……」
お客に言い寄られるおそらく店主さん? は額に汗を浮かべながら一生懸命誤っている。なかなかにかわいそうだな。
店主さんがポケットに手を入れ布切れを取り出し額の汗を拭う。やたらとカラフルな布切れだなぁ〜
「あぁぁ⁉︎」
「ん?」
急に店主さんが大きな声を上げたため周りのみんなの視線が一斉に店主さんに集まる。そしてワナワナと震える店主さんを見た後に視線が自然と手に持っている布切れに向かう。
わたしの視線も店主さんの持つカラフルな布切れに移っていた。しかし、店主さんが持っていたのは、
「パンツ?」
しかもヒラヒラがやたらと付いたパンツだ。
まさかこのおっちゃんの私物か?
「ああ! せっかく頂いたパンツで汗を拭いてしまうなんて!」
よかったおっちゃんのやつじゃないみたいだ。
「パンツなんてどうでもいいんだよ!」
「お菓子を出せ!」
「パンツを食べさろ!」
「パンツを切り刻んでトッピングにしろ!」
お客さん達もどんどんヒートアップしてるし、こりゃここのお菓子は無理かな。
「騒がしいわ! 愚民ども! おとなしく跪けば踏んであげるわ!」
誰だよ? いきなり人を愚民呼ばわりして変なことを言ってる奴は。
どうせろくなやつじゃないと思いながらも声がした方に振り返ると、
「っっっ!」
紫の長い髪に蒼い瞳を持つ芸術品のような美少女がお菓子を食べながら仁王立ちしており、その後ろには黒い服を着込み真っ黒なメガネをかけた男達が跪いていた。
なにこの子! 見てるだけで凄いチリチリする! 空気が変なのはこの子が原因か!
「聞こえなかったのかしら? 跪いたら踏んであげると言ったんだけど?」
そう言いながら美少女は後ろに控え跪いている男の背中をやたらと尖った靴でグリグリて踏みつけていた。
「ああ! 女神様! もっともっとしてください!」
……なんだこの変態の編隊は。お近づきには絶対なりたくない類だ。
恍惚の表情を浮かべている男たちに白い目で送りながらも視線を再び美少女に戻す。
美少女は新たなお菓子を頬張りながらまだ男の背中を踏み続けている。
「ワタシが全部買い占めた店の前で暴れるのはやめなさい! 迷惑でしょ!」
変態を従えているわりにはまともなことをいう。しかし、買い占めたのはこの子か。確かに後ろの黒服がなんだか大きな箱持ってるしあれに入ってるのか。
「おい嬢ちゃん、俺たちはお菓子が欲しいんだよ」
「それは残念ね! ワタシが買い占めちゃったわ」
美少女はむしゃむしゃと次々に新しいお菓子を取り出し口に放り込みながら答えた。
「だからよ? そんだけ買い占めてるんだからよ。いくつか分けてもらいたいんだが」
「お断りよ!」
「はぅぅぅ!」
詰め寄る男の言葉を遮り美少女は大声を上げる。黒服も美少女の靴が更に背中にめり込んだ筈なのに喜悦の混じった声を上げる。
「てめぇが買い占めたからだろが!」
男が拳を振り上げ美少女に殴りかかろうとする。まずい!雷化の魔法陣が書かれた紙をポケットから取り出そうとするが間に合わない!
「武蔵丸!」
「はぁーい」
美少女が誰かの名前を読んだ次の瞬間、美少女の前に大きな音を立て何かが着地し、土煙が舞い上がった。
そんなものに構わず男は拳を土煙で見えなくなったが美少女のいたところに向かい振るった。
「うらぁ!」
パァン! と乾いた音が響き男が腕を伸ばし切った姿勢で固まる。
「へへ、素直に渡しとけば痛い目を見ずに済んだのによ」
「なに言ってるの! 痛い目を見るのはあなたのほうよ!」
「ああ? なに言って……かぺぇ!」
得意げな顔で喋っていた男が突如として視界から消え、少し離れた建物から何かがぶつかるような音が聞こえてきた。そちらを見ると建物には人型の穴が空いてるし。
「なにしたんだ?」
魔法を使ったような感じはしなかった。でもさっきより肌で感じるチリチリした感覚は大きくなっている。
「ゴホ! ゴホ! 武蔵丸、あんまり砂埃を上げないで頂戴! 目が痛いわ」
「それはすまなかったぴょん。女神様」
砂埃が晴れて来るとそこには咳き込む美少女と岩のような大きな体が膝を付いていた。
褐色の肌に筋肉をこれでもかというほど盛り込んだ体は腕一本でわたしの体と同じくらいあるだろう。そしてその体には歴戦の戦士であるかのように至る所に傷跡があった。
いや、一番わたしの目に止まったのはそう言ったものではなく頭の上で揺れる、
「うさ耳だと……」
そうごつい人の頭の上に揺れる物体、それは見間違えることはないほどの立派なうさ耳だ。 
「うわぁぁぁぁぁん!」
わたしは地面に膝をつき涙を流した。なぜかって? 決まってる。
「なんで美少女じゃないんだよぉ!」
ケモミミは美少女こそに似合うんだ! 決して厳つい奴につけていいものじゃない! 可愛いは正義なんだ!
「あの人、涙ながしてるけど大丈夫かぴょん?」
「放っておきなさい。それより武蔵丸。新しいパンツを出して! お腹が冷えるわ」
「……穿いてなかったぴょん?」
「さっきあの店の店主にあげたの。ないて喜んでたわ!」
「……また売られてないといいねぴょん」
そんなやりとりの声が徐々に遠ざかって行くが失意のどん底のわたしには意味がよくわからなかった。
「レクレさま! レクレさま!」
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