浮遊図書館の魔王様

るーるー

第101話 知らないところでMMPが始まってました

 
 MMPとは女神が集まる会議の略称である。
 正式名称は女神 マジで ぱない、略してMMPという名前になっている。
 つまりはMMPというのは女神がこの世界で信仰を集めるにはどうしたらいいかな? という議題を会議するためのものなのだ。


「ではまずお配りの資料をご覧ください」


 ウサギ仮面が椅子に座った女神達に数枚束ねた紙を配って行く。


「ねぇ、ワタシの椅子がないんだけど?」
「おや? ボクはちゃんとだしたんだけど」
 紙を受けとったはいいがタルメアは立ったままだ。


「不思議なことがあるのね」


 ラヴリの言葉にタルメア以外の女神がなんとも言えない表情を浮かべる。
 彼女達はみたのだ。ウサギ仮面が出したタルメアの椅子は彼女が転がっている間にラヴリが蹴り壊すのを。


「じゃ、もう一つ出しま……」
「その必要はないわ! タルメア仕方ないから、そう椅子がなくて仕方ないからわたくしの膝の上に座るといいわ」


 ウサギ仮面が再び椅子を出そうとするのを大声で止め、ラヴリはタルメアを自分の膝をポンポンと叩き誘う。


「うん? ありがとう!」
「っ!」


 ニパァとタルメアが笑いラヴリの膝に座る。途端ラヴリは顔を背け鼻を抑えていた。興奮しすぎたのか鼻血がでたのか手が赤く染まっていた。


「……どんだけタルメアが好きなのよ」


 ポンパドゥールがドバドバと鼻血を流すラヴリをじと目で見る。


「ラヴリはタルメアが大好きだから」
「……キモい」


 カナエは微笑ましいような笑みを浮かべ、ハピナスは気持ち悪いものを見る目で二人を見ていた。


「話を進めても?」


 仮面のせいで表情がわからないウサギ仮面がティッシュをラヴリに渡しながら声をかけてくる。それに対し、渡されたティッシュで鼻血を止めようと頑張っているラヴリ以外が「はーい」と返事をする。


「では現在の魔族の侵略具合から説明をお願いします」
「中央大陸はあらかた片付いてるよ。もともと魔族そんなにいないからね」
「カナエの所も魔王軍との小競り合いが続いてますけど一進一退です」
「……わたしの所も同じ」
「うん! ワタシの所はガンガン攻めてるよ!」
わたくしのところは変わらずです」


 各女神達がそれぞれに報告してくる。


「ふむ、では次に信仰数ですが紙には書いていますが、まずはいない二人から教えましょう」


 信仰数。
 その言葉を聞いた瞬間その場にいた女神達に緊張が走る。信仰は女神の力の源になっているとても重要なものなのだ。それは信者の数やその女神への信仰度合いによって数値が変わる。しかもその信仰数が高ければ高いほどその女神は行使する力が増えるのだ。


「まずは軍神様ですが信仰数、100800ポイント。前回よりも10000ほど信仰数が増えております」
「……ちっ、やはり軍神。戦争で信仰数稼いでる」


 ウサギ仮面の言葉にハピナスが舌打ちする。
 軍神の信仰される地域は戦争多地帯であり、戦の女神として軍神は崇められているのだ。


「次に遊戯の女神様ですが、こちらは94500となっています。前回と比べますとやや落ちていますね」
「相変わらず遊んでらっしゃるのでしょう?」
「そうね、この前は『最強のゾンビを作るんだ!』って笑顔で言ってたわ」
「……達が悪い」


 遊戯の女神はとにかく遊ぶ癖がある。それは魔物相手であったり魔族相手であることもあればくだらない理由で人間が遊ぶ対象になることがあることもすでに周知の事実である。


「だけど何故が信仰数は高いんだよな」
「おそらくその遊びが信者たちに還元されているためでしょう」


 ポンパドゥールの疑問にウサギ仮面が淀みなく答える。


「さて次にポイントが高いのは愛情の女神、ラヴリ様です。ポイント80000」
「当然よ」


 両の鼻に血を止めるためのティッシュを詰めた間抜けな顔でラヴリは満足げに頷く。


「ラヴリのとこは相変わらず純愛ピュアを信仰さしてるのかしら?」
「ええ、やはり種族は同じ種族同士で子をなすことが一番自然なのよ」


 ラヴリは異なる種族で生まれたのを凄まじく嫌う。そのために同じ種族同士で子を設けるように純愛ピュアの教えを広めているのだ。


「特に獣人種よ。あれは嫌だわ。昔に魔族と獣が混ざって生まれた種族なんだから何が生まれるかわかったものじゃないわ」
「差別発言だよ? それ」
「他の所にまで押し付けはしないわ。ただわたくしは無理なだけよ」


 膝に乗せているタルメアの頭を撫でながらラヴリは顔を顰めながら告げる。
 獣人種はむかしむかしと言えるほどの時代に魔族が自身の血を獣に混ぜたことによって作られた種族であるということは女神しかしらないのだ。


「んん! 続けますよ」


 ウサギ仮面が軽く咳払いを行い話の流れを元に戻す。


「続きましては知識の女神カナエ様、ポイントは70058」
「あら」


 名前を呼ばれたカナエが嬉しそうな声を出す。


「しかし、前回より下がっています」
「はい、なんでかしら? わかりやすく本まで出していのに」
「……どういった本?」
「み、見て上げてもいいよ!」
「これなんだけど」


 ハピナスとタルメアに言われカナエが取り出した本をテーブルに置く。
 ドスン!っというおおよそ本を置いただけではならないような音が響き渡った。


「……これ、なに?」


 ハピナスらテーブルに置かれたものを指差しながらカナエに尋ねる。


「なにって、これはカナエ教の本よ?」
「「「「「本⁉︎」」」」」


 カナエの言葉にウサギ仮面以外の女神全員から驚愕の声が出た。それも仕方ない。なぜならカナエがテーブルに置いた物は本と呼ぶにはあまりにも分厚かったからだ。高さはざっと50センチはあるだろう。


「かなり削ったんだけどね」
「……これで削ったのね」


 ラヴリが顔を引きつらせながらテーブルの上に置かれた本? を見る。


「うわ、細かい! 細かすぎるよカナエ!」
「何を言ってるのポンパドゥール。みんなにわかりやすく説明するためにはこれくらい細かく書かないとダメなのよ?」


 カナエにそう言われたポンパドゥールは小さくため息をついた。なんとなく彼女の信者が増えない理由がわかったからだ。おそらくは信者達にこの本を渡したのだろうがきっと信者たちはめんどくさくて読まなかったのだろう。


「カナエ様、とりあえずは持ち運びするのが楽なサイズまで削って見ることをオススメします」
「……また削らないといけないのね」


 ウサギ仮面のアドバイスにカナエは少し悲しそうな顔をしながらテーブルの上の本を消す。


「ふふーん! あなた達真面目にしなさいよ! わたしの方が真面目に信者たちを集めているわよ! どうして持って言うなら靴を舐めさしてあげるわ!」


 ラヴリの膝から降りたタルメアが細やかな胸を張りながら高らかに告げる。


「「「「うざ!」」」」


 場の空気を読まない発言にラヴリ以外の女神から白い目で見られたタルメアだった。

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