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浮遊図書館の魔王様

るーるー

第100話 知らないところで女神様が集まりました

 


 何もないただ白いだけの空間をポ愉悦の女神ポンパドゥールはただひたすらに歩く。歩くたびに豊満な胸がプルンプルンと揺れるのに若干の煩わしさを感じながら。


「何年振りかな? 女神が一同に会すのは」
「約七十年ぶりです。愉悦の女神ポンパドゥール」


 後ろからかけられた声に振り返るとそこは今まで歩いていた真っ白な空間ではなく色とりどりの花が咲き乱れる幻想的な空間に早変わりしていた。


「やぁ、久しぶりだね、愛情の神ラヴリ。相変わらず純愛ピュアの教えを広めてるのかい?」


 しかし、ポンパドゥールは全く動じることもなく声をかけてきた相手ににこやかに挨拶を返した。


「ええ、異物が混じらないように教えを広めてるわ。やはり純粋なものこそが見ていて美しいんですもの」


 愛情の神ラヴリは手元の本から視線を上げることなく桃色に近い金の髪を弄りながら答えた。その言葉にポンパドゥールは苦笑するしかない。


「立ち話もなんだからあなたも座ってはいかが?」
「そうするよ」


 ラヴリが軽く手を振ると先ほどまでなにもなかった場所に黒い椅子が現れる。普通の人間なら驚くがラヴリもポンパドゥールも全く驚かない。女神ならこのようなことは誰でもできるからだ。


「今回のは誰の招集?」
「さぁ? わたくしはあなたか軍神かと思ってましたが?」
「軍神が? あいつ会議とか嫌いじゃん?」
「だったらあなたでは?」
「いやいやいや、それなら聞かないでしょ?」


 ラヴリはあまり関心がないのかあまりポンパドゥールの話には乗ってきてくれない。騒がしいのが大好きなポンパドゥールとしてはあまりにも弄り甲斐がない女神なのだ。


「待たせたわね! 雑魚ども! ワタシの靴を舐めることを許すわ!」
「帰れ」


 いきなりテンション高く現れた新たな女神にポンパドゥールは冷たく言い放った。


「ちょ、ちょっと待ってよ! 冗談よ? 冗談だからね? ワタシのパンツあげるから許して?」
「「いらない」わ」


 スカートを捲り上げ下着に手をかけ本当に脱ごうとしている女神を止める。


「あのねタルメア。どこの世界に靴舐めたりパンツ貰って喜ぶ人がいるの?」
「え? うちの信者達涙を流して喜ぶんだけど違うの?」


 キョトンとした表情を天災の女神タルメアは蒼い瞳をポンパドゥールとラヴリに向けてきた。
 その瞳には嘘を言ってる様子は全く見られない。


「……タルメア、あなた信者に騙されてるわよ」


 持っていた本をパタンと閉じため息をつきながらラヴリはタルメアを見た。しその瞳には呆れと哀れみの色が浮かんでいた。


「そんなことないわ! 信者の人言ってたもの! このパンツのおかげで家族が生きていけます!って」
「うん、今すぐ取り返してきな? 絶対いかがわしいところに売られてるから」


 確か人界には女性の下着を買い取る非合法の組織があったことをポンパドゥールは思い出していた。タルメアの信者はきっとそこに売りにいったのだろう。


「そんな……あの信者はワタシに嘘をついたっていうの⁉︎」
「嘘はいってないわよ? そのパンツの(売ったお金の)おかげで家族は生きていけるわけだし」
「わ、ワタシへの信仰はあるのかしら⁉︎」
「そこまでは知らないわ」
「わあああああああああああ!」


 奇声を上げながらタルメアが花畑を転がる様をポンパドゥールとラヴリは冷めた目で眺めていた。


「相変わらず仲がいいですね」
「……キモいくらいに」


 そう言いながら現れたのは地面つくんじゃないかと思うほど長い煌めく黒髪を束ねた女神と短く揃えられた茶髪の子供くらいの背丈しかない大きなメガネをかけた女神だ。


「あら、知識の女神カナエと」
「ちびっ子陰鬱の女神ハピナス」
「名前でいじったら殺す」


 ポンパドゥールが名前を呼んだ瞬間に大きなハピナスの小さな体から凄まじいまでの魔力が溢れ出す。その余波でいまだ地面を転がっていたタルメアが遠くに転がって行きながら「ああああああ」と悲鳴をあげ、カナエはというと「あらあら」とにこやかに笑っていた。


「へぇ、やる気?」


 ポンパドゥールも好戦的な笑みを浮かべ椅子から腰を浮かし臨戦態勢に入った。その場の空気の緊張が一気に高まった。
 ラヴリも少し興味深げに見ていたがポンパドゥールと同様に臨戦態勢に入った。


「はい、そこまでにしましょう」


 パンパンと手を叩きながらカナエがハピナスとポンパドゥールの間に入る。


「……カナエ」
「ハピナスもすぐに怒るようじゃ立派な女神になれないわよ? ポンパドゥールも」


 カナエに笑顔で諭されハピナスとポンパドゥールは渋々といった様子で引き下がる。そのタイミングを見計らっていたかのようにラヴリが再び椅子を二脚取り出す。


「ありがとう、ラヴリ」
「たいしたことないわ」
「ねえ、ラヴリ! ワタシの椅子はないのかしら?」


 いつの間にか戻ってきたタルメアがラヴリに尋ねた。


「ないわ」
「うわぁぁぁぁぁぁぁん!」


 再び泣きながらタルメアが走り去った。
 その様子をクスクスとカナエが笑ながら眺めていた。


「ラヴリは本当にタルメアが大好きね」
「カナエ、あなたは頭はいいけど目が悪い見たいね。新しいメガネを買うことを勧めるわ」
「わたしの目は両目の視力30あるのよ?」


 ラヴリの皮肉に気づくことなくカナエは差し出された椅子に座る。それに続きハピナスも座りポンパドゥールも上げていた腰を下ろした。


「みなさんお揃いのようですね」


 次々に現れる女神に辟易していた彼女達であったがその声の主に一斉に振り返る。
 立っていたのはタキシード服をビシッと着込んだウサギのお面を付けた人物が立っていた。


「今回の招集もあなたかしらウサギさん?」
「はい、前回同様僕が集めさしていただきました」


 ラヴリの問いにウサギ仮面は優雅に一礼して答える。ウサギ仮面は指をパチンっとならし用意されていなかったタルメアの椅子と大きなテーブルを準備した。テーブルの上には色々なお菓子、まだ湯気が上がる紅茶まで準備されていた。


「軍事と遊戯の女神様は今回は欠席でいらっしゃいます。そのためこちらにおられます五人の女神様によるMMP会議を開始さしていただきます」

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