浮遊図書館の魔王様
第91話 予想外な事でした
またここか。
わたしはうんざりしながら真っ白な空間を眺める。
さすがに三度目になれば慣れるしね。
後ろを振り返ると案の定というべきかいつも通りテーブルと椅子が用意されてあった。
呼び出し主の姿は見えなかったがとりあえず椅子に座って待つとしよう。
椅子を引き、腰を掛けた瞬間
バキィ!
「え?」
自分の間抜けな声を聞きながらわたしは真っ白な床を転がる羽目になった。
転がったままの状態でさっき座った椅子を見て見ると椅子の脚の折れた部分にかなり深めに切ったような跡があった。
「シロォォォォォォ!」
勢いよく立ち上がるとわたしは叫んだ。この空間でこんなことができる、いや、こんなことをしようと考える奴は一人しかいないからね。
「はいはーい」
愉快そうな声を上げながら銀の髪をいじりながらニコニコとした男の子、この空間の主シロが姿を現した。
「子供の頃に誰もがやったイタズラを再現してみたんだけどどう? どう?」
「そんなキラキラした瞳で見てもね、痛い物は痛いんだよ! あとインドア派のわたしはそんなことしなかったよ!」
「可愛げのない子供だったんだね」
ああ言えばこう言う! いや、この子のペースに乗せられたらダメだ。
「……で何の用?」
「用がなかったら友達と会ったらいけないの?」
「友達はあんなことしない!」
わたしは脚が折れた椅子を指差し怒鳴った。
「友達ってああやって友情を確かめ合う物じゃないの?」
「誰だよ! そんな間違った知識教えたやつは⁉︎」
「下界の本?」
シロが指差したのは数冊の本の山だ。わたしはかなりイライラしながらその本の山に近づくとその中の何冊かを持ちタイトルを確認する。
『気になるあの子の仕留め方! 肉体暴力編』
『気になるあの子の仕留め方! 精神暴力編』
『友達との仲良くなる方法! まずはお金を掴ませよう!』
『イタズラしてあの子の関心を引こう! まずは軽く怪我をさしてみよう』
などなどふざけたタイトルばかりだ。
何処のバカがこんな訴えられるような本を書いたんだ。
しかし、帯にはベストセラーの文字がデカデカと書かれている。感性がわからないよ!
「……とりあえずこの本は参考にはならないよ」
「え、本当⁉︎」
どう見ても演技しているようには見えない。となると本当に仲良くなりたかったのか。しかし、この悪意のある本の選択基準は何処のどいつだ。
「それで? 友達であるところのわたしを呼んでどうしたの?」
「あ、うん! 浮遊図書館が進化したでしょ?」
「そうだね」
シロから浮遊図書館話題を振ってきてくれるとは好都合。わたしも知りたいことがたくさんあるしね。
「予想外!」
「え?」
「だから予想外なんだよ」
予想外。
その言葉にわたしは愕然とした。
この浮遊図書館はわたしの願いがシロの能力で具現化したものたから全てシロのが思い通りに動かしているものだとばかり思ってたからだ。
「今までの契約者の中にもこんな例外はいないよ? 与えたものが進化するなんてことは今まで一度もなかった」
「じゃあ、どうなるかはわからないってこと?」
「そうなるね。要因として考えられるのはレクレの異常なほどの魔力貯蔵量の増大だろうけど」
つまりわたしの魔力が浮遊図書館に変化をもたらしたってことか。
「これはこれで楽しくなってきたね!」
「シロにとっては楽しくてもわたしにとっては楽しくないよ」
いつも言ってるけどわたしは本さえ読んでいれば幸せなんだから。
「本を読むだけの人生なんてつまらないよ? もっと楽しまなくっちゃ損だよ?」
魔導書に人生を語られているわたしってどうなんだろう? 行ってることが正論だけにやたらとむかつくんですけど!!
「そういうシロは楽しんでるの?」
そうシロに尋ねるとにやりと意地の悪そうな笑みを浮かべた。
しまった! この子にはこの質問は愚問だった!
「そりゃ楽しんでるよ! いつの世の中も人界ほど見ていて飽きないものはないんだから!」
想像していた通りの答えが返ってきた。そうだよね。この子は魔導書でありながらこの世界を一番楽しんでいるのかもしれない。ただし愉快犯的な楽しみ方だが。
「ただ、気をつけた方がいいかもね」
「何に対して?」
「全部だよ」
全部に気をつける? どういうこと?
「今までは浮遊図書館の未知の魔法を、つまり浮遊魔法の謎を人間が知りたかっただけだった。そりゃ、魔族や天使の連中は浮遊魔法なんて使わずに飛べる種族が多いからな関心がなかったからさ」
確かに攻めてきたのは人間だけだった気がするね。
「でも、浮遊図書館は進化した。さっきも言ったけど普通はありえない。だからこそ狙われるんだよ」
「誰に? 天界とか魔界とか」
うわ、面倒なことこの上ないじゃない。
というか天界とか魔界とか存在したんだ。
見たいような会いたくないような複雑な心境だよ。
「浮遊図書館の事がバレれば必ず彼らは何らかの行動を起こすだろうしね」
それを楽しみにしてるよ? そんな無責任でありながら楽しげな声を聞きながら周りが徐々に白くなり同時に意識も遠くなって行った。
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