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浮遊図書館の魔王様

るーるー

第73話 ライブラリ防衛しました②

 
「やはり普通のゴブリンよりも手強いみたいですわね」
「いやーゴブリンバカにしてたよ。盾使えるなんてね」


 イメージ的にゴブリンは数は多いが頭が悪い。そんなイメージがすごいあるんだよね。だからこそ盾を持ち、棍棒じゃない武器を持ってるゴブリンに驚いたんだけど。


「確かにそれにも驚きましたがもっと驚くべき所はあの盾ですわ」
「炸裂弓矢を防いだからね」


 地面に小さな穴を開けるような代物である炸裂弓矢を防ぐ盾。これはなかなかに驚異だ。下手をすると魔法すら防ぎかねないし。


「まさかお金の力が効かない相手とは……」
「いや、本当にあれを湯水のように使われると国が傾くからやめて欲しいんだけど」


 財政破綻しかねない武器だからね。






「ゴブリンが第一ラインを超えました!」


 視力強化の魔法を受け戦場を観察していた伝令が大きな声を上げる。


「では今より魔法使いにも参戦していただきますわ」


 杖や魔導書を持った魔法使い達が街壁の上にずらりと並ぶ。これはまた壮観だ。
 カハネルの提案した作戦は等間隔にラインを引き、そこを超えるごとに指示を出していくという非常にシンプルなものだ。


「南以外の門はどうなっていますの?」
「こちらほどではありませんが小規模なゴブリンの群れが来ております。そちらは弓と魔法で迎撃機できています」
「そのまま継続しなさい。なにかあればすぐに伝えるように徹底しなさい」
「了解しました」
「ゴブリン、魔法の射程に入ります!」


 伝令の緊迫した声を聞きながらもカハネルは全く動じない。
 あれだけの数がいたら距離感が狂うのによくわかるもんだね。
「魔法使い! 構え! 中央に撃ちくりなさい! 弓は炸裂弓矢を使用せず左右のゴブリンに向け放ちなさい!」


 カハネルの指示通りに弓はは左右のゴブリンに集中され再び紫の血の雨が降り始めた。
 さらには弓が空を覆う中、そこに詠唱を終えた色とりどりの魔法が空を舞い始める。
 炎が、風が、雷が、氷が次々にゴブリン共に叩き込まれていく。その度に盾持ちのゴブリンの群れに穴が空くのだが数が多すぎるのかすぐに塞がれてしまう。


「魔法は効いているようですがそこまで効果があるようでもないみたいですわね」
「そうみたいだね」


 見ていると直撃を受けたゴブリンも吹き飛ぶだけで多少の損傷は見てとれるけど致命傷には程遠く見えるし。


「カハネル、あの辺って農地?」


 中央のゴブリン達が進軍している辺りを指差し尋ねた。


「ええ、でもあの辺はまだ開拓したばかりだからまだ農地としては使えないと聞いているわ」


 さすがユール、カハネル、ベアトリスはちゃんと情報が共有されてるね。わたしの所には情報がこないけど。
 それはさて置き。
 ふむ、なるほど。ならばまだ壊しても文句を言われないということだよね?
 わたしも少しやってみるとしよう。


火魔法ファイヤーボール
「ちょっ! 貴女なにしてますの⁉︎」


 軽く魔法を発動さしただけでカハネルが驚いたような声を上げた。
 使うのは一番弱い火魔法ファイヤーボールだ。でも一番弱いから複数用意することにしよう。
 わたしの周囲に二十ほどの火魔法ファイヤーボールを浮遊させる。
 周りからはなぜか「なんであんなのできるんだ」「魔力の密度が違う」「同時展開とかないわー」と言った声が上がる。これくらい普通でしょ?


「初めて同時にやったけど上手くいった。では……」
「やめな……」
火魔法ファイヤーボール!」


 カハネルが必死に止めようとするが無視し魔法を放つ。轟々と燃えながら火魔法ファイヤーボールが一際目立ちながら盾持ちゴブリンに向け空を飛ぶ。
 盾持ちのゴブリンもそれに気付いたのか盾を構え衝撃に備えたみたいだ。
 そして火魔法ファイヤーボールがゴブリンの盾に接触した瞬間、


 ゴオオオォォォォォ!


 火柱が上がった。それも一つではなく立て続けにだ。
 火魔法ファイヤーボールの一つがゴブリンあるいは地面に接触するたびに火柱が上がり続ける。


「大変気分がいい!」


 次々と上がる火柱にテンションが高まる。


「燃〜えろよ燃えろ〜よ、ゴブリン燃えろ〜」


 何故かアルが微妙な音程で歌う。
 周りの味方も唖然とした様子だ。これくらい君たちもできるでしょ?


「このおバカが!」


 パァァン! とわたしの頭部から軽快な音が響く。
 地味に痛い。
 頭を撫でながら後ろを振り向くと悪魔まびっくりするような形相をしたカハネルが以前スペラがわたしの頭を叩くのに使ったハリセンとか呼ばれる武器を持っていた。
 量産されていたのか。


「……ねぇ、その武器本当に紙でできてるの? わたしの結界すり抜けてきたんだけど」
「だまらっしゃい!」


 再びスパァァァァンという軽快な音が響く。
 なせだ! あの武器はなんでわたしの結界をなんなく擦り抜けるんだ!


「さっき言ったばかりでしょうが!? 本でも読んでなさいと!」
「だからわたしも聞いているだろ!? なんなんだ! その武器は!」


 攻撃がさっきから理不尽極まりないんだが・・・・・・


「あの土地はまだつかわないだけで今後は使う余地があるのよ! それが見なさい!」


 カハネルが指さした場所を見ると火柱は消えていたがその代わりと言わんばかりに大地が真っ赤に燃えていた。ドロみたいに見えるけどたまにボコボコと気泡が立ってるくらいで。


「ふむ、よく焼けているね」
「やりすぎだと言うのです! 焼けたとかそんなレベルではありませんよ! あれは溶岩とかマグマとかそんなレベルですよ!」
「痛い! 痛い! その武器は反則だよ!」


 これでかと言わんばかりにハリセンでわたしの頭を叩いてくる。


「わ、わかった。次は火魔法は使わないよ」
「……代わりになにを使おうとしてるんです?」


 叩かれ続けた頭をさすりちょっと涙がでたよ。


「炎がだめと言うなら氷漬けにしたらどうか……」
「どっちにしろ農地に被害がでるでしょうが!」


 あれもダメ、これもダメ、どこぞの教育お母さんみたいだよカハネル。


「レェェェェクゥゥゥレェェェェ!!!」


 なんか呪いが篭ってるような声が聞こえるな。
 声の主を探すと街門の上を凄まじい速度で走ってくるベアトリスが目に入った。脇にはマーテを抱えてるけどそんなこと忘れてると思う位凄い勢いで走ってるのかマーテは揺さぶられすぎて泡を吹いてるし。


「お主はお主はアホか!土地の開拓というのは簡単ではないのじゃぞ⁉︎ それを魔法をポンポンポンポン地形を変えまくりよって!あれか?お前は焼畑でもしたいのか?だったらもっと知識をつけんか!あれは焼畑ではなく唯のマグマ地帯に変わっとるじゃろが!」


 一息でそこまで言いきると流石に呼吸が持たなかったのかベアトリスはぜぇぜぇと息を荒らげた。


「わ、悪かった、です」


 あまりの剣幕に口から謝罪の言葉がでた。
 やがて呼吸が落ち着いたのか再びベアトリスがこちらを睨みつけてきた。


「悪かったですむか!」


 ベアトリスが拳をわたしの腹にめがけ繰り出してくるが拳は腹に当たることなくわずかな隙間を開け静止する。


「……痛い」


 抱えていたマーテを降ろし手をさするベアトリスを眺める。今度は結界は発動しているようだ。
 再びカハネルの持っているハリセンに目をやる。
 あの武器はなんで結界すり抜けるんだろ?



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