浮遊図書館の魔王様
第72話 ライブラリ防衛しました①
「弓放てぇぇ!」
カハネルの号令で街門の上に陣取った冒険者達が一斉に弓を放つ。
幾千もの弓が大地に広がる緑色の絨毯に突き刺さる。途端に魔物特有の紫の血が至る所で飛び散った。
「次々撃って! 今撃てば当て放題よ! 削れるうちに削りなさい!」
カハネルの声に冒険者達が答えるかのように弓の放たれる量が増える。多すぎるゴブリンの群れはどこに撃っても当たる。これはなかなか爽快だ。
「なんか数が減らないね」
「一方的ではありますが数が多すぎますわ」
わたしのつぶやきにカハネルが悔しげに呟く。まぁ、数の暴力というのは世の常だからね。
「炸裂弓矢を使いなさい!」
「あ、あれはカハネル隊長が『金食い虫の弓だから使うのを禁止します!』って言ったじゃないですか!」
「お金は浮遊図書館のレクレ宛にしときますわ」
「えっ⁉︎ わたし宛⁉︎」
「「「「了解です!」」」」
再び冒険者達が慌ただしく動き始め、普通の弓矢は取り下げられ代わりに丸い球体がくっつけられた弓矢に次々と交換されていく。
あれが炸裂弓?
「一度高価な武器を湯水のように使いたかったのです」
「え、そんな理由でわたしのお金使うの⁉︎」
カハネルはわたしの言葉を無視し、着実に炸裂弓の準備をして行く。
「ゴブリン共め一本金貨八枚の威力を思い知るがいい」
「高⁉︎ 普通の弓矢って銅貨の下の銭貨一枚くらいだよね⁉︎」
恐ろしい物価だ。ユールやベアトリスが聞いたら卒倒してしまうかもしれない。
「放てぇぇ!」
怒っているかのような大声に再び弓矢が放たれ始める。ただ先ほどよりは飛距離が出ていない。おそらくあの丸い球体の重みの分だけ飛距離が落ちたのだろう。
しかし、それでもゴブリン共の群れに炸裂弓が飛び込んでいく。
次の瞬間眩いばかりの閃光が炸裂弓が着弾したであろう場所から放たれ始める。
炸裂弓が着弾した所には小さなクレーターができており、ゴブリンの死体すら残っていなかった。
「やりました! さすが金貨八枚!」
「……戦争が経済活動と言った人は天才だよ。こんな風に高価な湯水の如く使うのなら確かに商人達は丸儲けだろうし経済が動くだろうさ」
確かにすごい威力だけどこの破壊力に対するコストが割りに合わなさすぎる。
この戦闘で勝ってもマイナスになることはプラスになることは考えられないのだ。
流石に魔物でと同胞がいきなり殺されたことに戸惑ったのか一瞬動きが止まる。
その隙をカハネルは見逃さず再び弓矢を放たさせる。
今度は普通の弓矢がゴブリンに幾つも刺さり行動不能にして行く。ゴブリン共も普通の弓矢である事に気付いたのか進軍を開始しようとした矢先に再び轟音が響きゴブリンどもが消し飛んだ。恐怖に駆られたのかゴブリン達の動きに混乱のようなものが見え隠れしていた。
「高価な武器をひたすらに使うのは愚策ですわ。武器には使い所というものがありますのよ」
確かにカハネルの言うとおり同じ攻撃をしているとなれる物だ。しかし、普通の攻撃を混ぜ油断、安心した所に強烈な攻撃をされたならたまったものではないだろう。
「さすが主席卒業」
「あなたがいうと皮肉にしか聞こえませんわ」
普通に褒めたのになんで嫌そうな顔をするんだろう?
「規格外に褒められても嬉しくもなんともありませんわ」
「……君はわたしを目の敵しすぎだとおもうんだけどね?」
そこまで悲観しなくてもえと思うんだけどね。
「貴女は本でも読んでたらいいんです。変にちょろちょろされたり規格外な魔法を使われてもたまりませんから」
「……君たちは本当に魔王であるわたしにも物怖じしないよね」
「あら、我が国に魔王様そんな小さなことを気にするような器が小さいお人でしたの?」
ああ言えばこう言う。性格の悪い女だ。
「ゴブリン達が動きます!」
カハネルから今までいいようにやられていたゴブリン達のほうに視線を移すと今までただただ直進していただけのゴブリンが左右二手に別れ始めていた。
「魔物にも知性があるようですね。バカにしていましたわ」
「なにが?」
ただ二手に別れたようにしか見えないんだけど。
「よく見なさい。二手に分かれたのは普通《• •》のゴブリンだけですわ」
「普通の?」
そう言われ今だ二手に別れているゴブリン達を見ているとやがて中央に今まで見ていた緑ではなく赤黒い塊が動いているのが目立ち始めた。
「なにあれ?」
「おそらくはゴブリンの上位種、もしくは亜種でしょう」
「そんなのもいるんだ」
本ではゴブリンはゴブリンとしかでてこないからね。魔物の図鑑もないし種類まではわからないし。でもあいつらなんか盾と色んな武器持ってるんだけど。
「たとえ上位種であろうと殲滅することに変わりません。弓矢うて! 騎士団も準備をしておくのですわ!」
カハネルの支持により騎士団の面々が慌ただしく動き始めた。
「まだ結構距離あるよ?」
「……勘ですがあの赤黒いゴブリンは一筋縄ではいかなそうです」
空を覆わんばかりの弓矢が左右に別れたゴブリン達を串刺しにし紫の血で大地を染める中、中央のゴブリン達は全く動じることなく進軍を続けていた。
「……左右には通常弓矢を、中央に炸裂弓矢を集中させなさい」
カハネルが真剣な顔で指示をする。いや、今までも真剣だったんだけどより一層ね。
指示通りに炸裂弓矢が中央のゴブリン達に突き刺さり閃光があちらこちらで生まれる。
「これなら……」
カハネルの口から小さな呟きがこぼれてる。
ダメだよ。そんなこと言ったら……
やがて閃光が落ち着き始め、土煙が徐々に晴れ始めその下からは盾を構えたゴブリン共が進軍を続けていた。
「報告! 目標は健在! 繰り返します、目標は健在!」
ほら、やっぱりフラグが立ったじゃないか。
カハネルの号令で街門の上に陣取った冒険者達が一斉に弓を放つ。
幾千もの弓が大地に広がる緑色の絨毯に突き刺さる。途端に魔物特有の紫の血が至る所で飛び散った。
「次々撃って! 今撃てば当て放題よ! 削れるうちに削りなさい!」
カハネルの声に冒険者達が答えるかのように弓の放たれる量が増える。多すぎるゴブリンの群れはどこに撃っても当たる。これはなかなか爽快だ。
「なんか数が減らないね」
「一方的ではありますが数が多すぎますわ」
わたしのつぶやきにカハネルが悔しげに呟く。まぁ、数の暴力というのは世の常だからね。
「炸裂弓矢を使いなさい!」
「あ、あれはカハネル隊長が『金食い虫の弓だから使うのを禁止します!』って言ったじゃないですか!」
「お金は浮遊図書館のレクレ宛にしときますわ」
「えっ⁉︎ わたし宛⁉︎」
「「「「了解です!」」」」
再び冒険者達が慌ただしく動き始め、普通の弓矢は取り下げられ代わりに丸い球体がくっつけられた弓矢に次々と交換されていく。
あれが炸裂弓?
「一度高価な武器を湯水のように使いたかったのです」
「え、そんな理由でわたしのお金使うの⁉︎」
カハネルはわたしの言葉を無視し、着実に炸裂弓の準備をして行く。
「ゴブリン共め一本金貨八枚の威力を思い知るがいい」
「高⁉︎ 普通の弓矢って銅貨の下の銭貨一枚くらいだよね⁉︎」
恐ろしい物価だ。ユールやベアトリスが聞いたら卒倒してしまうかもしれない。
「放てぇぇ!」
怒っているかのような大声に再び弓矢が放たれ始める。ただ先ほどよりは飛距離が出ていない。おそらくあの丸い球体の重みの分だけ飛距離が落ちたのだろう。
しかし、それでもゴブリン共の群れに炸裂弓が飛び込んでいく。
次の瞬間眩いばかりの閃光が炸裂弓が着弾したであろう場所から放たれ始める。
炸裂弓が着弾した所には小さなクレーターができており、ゴブリンの死体すら残っていなかった。
「やりました! さすが金貨八枚!」
「……戦争が経済活動と言った人は天才だよ。こんな風に高価な湯水の如く使うのなら確かに商人達は丸儲けだろうし経済が動くだろうさ」
確かにすごい威力だけどこの破壊力に対するコストが割りに合わなさすぎる。
この戦闘で勝ってもマイナスになることはプラスになることは考えられないのだ。
流石に魔物でと同胞がいきなり殺されたことに戸惑ったのか一瞬動きが止まる。
その隙をカハネルは見逃さず再び弓矢を放たさせる。
今度は普通の弓矢がゴブリンに幾つも刺さり行動不能にして行く。ゴブリン共も普通の弓矢である事に気付いたのか進軍を開始しようとした矢先に再び轟音が響きゴブリンどもが消し飛んだ。恐怖に駆られたのかゴブリン達の動きに混乱のようなものが見え隠れしていた。
「高価な武器をひたすらに使うのは愚策ですわ。武器には使い所というものがありますのよ」
確かにカハネルの言うとおり同じ攻撃をしているとなれる物だ。しかし、普通の攻撃を混ぜ油断、安心した所に強烈な攻撃をされたならたまったものではないだろう。
「さすが主席卒業」
「あなたがいうと皮肉にしか聞こえませんわ」
普通に褒めたのになんで嫌そうな顔をするんだろう?
「規格外に褒められても嬉しくもなんともありませんわ」
「……君はわたしを目の敵しすぎだとおもうんだけどね?」
そこまで悲観しなくてもえと思うんだけどね。
「貴女は本でも読んでたらいいんです。変にちょろちょろされたり規格外な魔法を使われてもたまりませんから」
「……君たちは本当に魔王であるわたしにも物怖じしないよね」
「あら、我が国に魔王様そんな小さなことを気にするような器が小さいお人でしたの?」
ああ言えばこう言う。性格の悪い女だ。
「ゴブリン達が動きます!」
カハネルから今までいいようにやられていたゴブリン達のほうに視線を移すと今までただただ直進していただけのゴブリンが左右二手に別れ始めていた。
「魔物にも知性があるようですね。バカにしていましたわ」
「なにが?」
ただ二手に別れたようにしか見えないんだけど。
「よく見なさい。二手に分かれたのは普通《• •》のゴブリンだけですわ」
「普通の?」
そう言われ今だ二手に別れているゴブリン達を見ているとやがて中央に今まで見ていた緑ではなく赤黒い塊が動いているのが目立ち始めた。
「なにあれ?」
「おそらくはゴブリンの上位種、もしくは亜種でしょう」
「そんなのもいるんだ」
本ではゴブリンはゴブリンとしかでてこないからね。魔物の図鑑もないし種類まではわからないし。でもあいつらなんか盾と色んな武器持ってるんだけど。
「たとえ上位種であろうと殲滅することに変わりません。弓矢うて! 騎士団も準備をしておくのですわ!」
カハネルの支持により騎士団の面々が慌ただしく動き始めた。
「まだ結構距離あるよ?」
「……勘ですがあの赤黒いゴブリンは一筋縄ではいかなそうです」
空を覆わんばかりの弓矢が左右に別れたゴブリン達を串刺しにし紫の血で大地を染める中、中央のゴブリン達は全く動じることなく進軍を続けていた。
「……左右には通常弓矢を、中央に炸裂弓矢を集中させなさい」
カハネルが真剣な顔で指示をする。いや、今までも真剣だったんだけどより一層ね。
指示通りに炸裂弓矢が中央のゴブリン達に突き刺さり閃光があちらこちらで生まれる。
「これなら……」
カハネルの口から小さな呟きがこぼれてる。
ダメだよ。そんなこと言ったら……
やがて閃光が落ち着き始め、土煙が徐々に晴れ始めその下からは盾を構えたゴブリン共が進軍を続けていた。
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