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浮遊図書館の魔王様

るーるー

第67話 観察されました②

 
 スペラに観察され始め三日目。


 わたし、マーテ、ビリアラ、アルはライブラリの街の冒険者ギルドにやってきていた。
 今までも何度か来たことはあるが相変わらず賑やかなところだ。
 商人がいたり鎧を着込んだ人がいたりと見ていて飽きない。
「レクレ様が外にでるなんて珍しいね!」
「そうだな」
「そうですね。いつも本を読んでますから」


 マーテが嬉しそうに言った言葉に残りのちびっ子組、ビリアラとアルは頷いた。
 この子達の中でもわたしは引きこもり扱いらしい。
 その認識を改めたいが今この時もギルド内の食事を取ることのできるスペースで紅茶を飲みながらわたしは絶賛読書中だから何も言えないね。


「わたしだって外には出るよ?」
「本買う時以外みたことないな」


 そう言われるとなんとも言い返せないんだけどね。
 仕方ないんだよ。読書とはわたしの生活の一部、いや、死活問題と言ってもおかしくないほど重要なんだから。


「それで冒険者ギルドになんの用なんですか?」


 後ろから声をかけられたから振り返ると真っ白な修道服を着たスペラが立っていた。


「やぁ、スペラ。今日もわたしの観察かな?」
「はい、魔王様。たまには本を読んでいる以外の姿が見たいですね」


 スペラの言葉にわたしは苦笑するしかない。
 一日目、二日目とわたしはひたすらに本を読んでいたんだから。でもスペラもヨダレ垂らしながら寝てたからね?
 しかし、今日もまたわたしの観察か。
 小さくスペラに見えないようにため息をついた。
 見られ続ける生活というのは意外とストレスが溜まるものなんだよね。


「なにか依頼でも受けるのですか?」
「ん! マーテが誘ったの!」


 スペラの質問に元気良くマーテが手を上げる。よく見ると尻尾が凄く揺れている。かなり嬉しいらしい。まぁ、あんまり遊んであげてないからかな。今後は遊ぶ時間を少しは作るようにするよ。少しは、多分、きっと。
 今気づいたけどギルド内にいる人達はちびっ子三人組をチラチラと見ている人達が多いな。メイド服だから仕方ないかもしれないけど。
 もし付き合わせてくださいとか言って来たら撃退しよう。うちの子にはまだ異性とお付き合いなんてまだ早いからね!


「ここにいるということは魔王様はギルドカードを持っているのですか?」
「あるよ」


 ポケットから小さく薄い金属のカードを取り出しスペラに見せた。
 このカードは魔鉱石という特殊な鉱石でつくられていて名前、所属、冒険者としてのランクなどか魔力によって書かれているのだ。
 冒険者のランクは下がFから上がSSまでとなっている。


「……なぜ魔王なのに冒険者のランクがDなのです?」
「めんどいじゃないか。依頼受けたりするのって」


 ちなみに魔法学園を卒業した者なら初めから冒険者としてのランクはDとなるらしい。つまりわたしはギルドカードをもらった時からランクが一切上がっていないのだ。
 ランクDの魔王がいても勇者は困ることないでしょ? むしろ弱い魔王で喜ぶんじゃないだろうか?


「ならなんでまた冒険者ギルドに?」
「……たまには外で読書もいいかと思ってね」


 それはほんとうだ。
 ストレスが溜まってるなんて口が裂けても言えない言えないしね。言ったら言ったで鼻で笑われるのが目に見えてるからね。


「今日の晩御飯のための食材を取りに行くの。ついでに依頼も受けるんだよ!」


 マーテかわいい。頭を撫でてあげよう。
 くすぐったそうにしながらも気持ち良さそうにしているマーテの横にスーとアルとビリアラが頭を持ってきた。
 撫でて欲しそうだったので二人も撫でてみる。するとすごい勢いというか千切れそうな勢いで尻尾を振ってた。素直に言えばいいのに。


「よし、じゃ、適当に依頼を受けて来て」
「アイサー!」


 撫でるのをやめそう告げると子供三人組は話をしながら依頼が貼られているボードに向かい歩いて行った。


「なにか顔についてる?」
「いえ、子供に優しいのが意外だっただけです」
「うるさくない子供は好きだよ」


 うるさい子供は嫌いだ。元気があるのはいいけどある程度の落ち着きはほしいし。まぁ、可愛かったら大概許すけどね!


「レクレ様〜受けて来たよ〜」


 元気良く手を振りながらマーテ達が戻ってきた。
 後ろの受け付けのお姉さんがとても微笑ましそうに見てるね。
 さて、たまには働きますか。


「働いてない自覚はあったんですね」


 ボソリとスペラがなにか言ったけど聞こえません!

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