浮遊図書館の魔王様

るーるー

第63話 たどり着きました

「うう、ようやくたどり着きました」


 神殿から強制的に転移させられて二週間。
 ボクはようやく本の街 《ライブラリ》の外壁前の検問所に辿り着きました。
 ええ、ボンパドゥール様は確かに近くの街には転移をしてくれました。
 本当に近くに。
 具体的には教会の二つ横の村に。


「確かに近くの村とは言ってましたけど」


 まさかあんなに近場に転移させられると思わなかった。
 わずかな銀貨しかなかったためかなりの距離を徒歩で歩くことになりましたが久しぶりの外は中々に新鮮でした。教会に入ってからは外に行く機会がなかなかなかったですし。実質は貴族の子供なら泣き叫ぶようなサバイバル生活でしたが。


「見た感じは完全にファンガルム皇国と同じなんですよねぇ」


 《ライブラリ》に来る前にファンガルム皇国王都の前を辻馬車でとおったのだが人が住んでる気配は全くせず廃墟と化していましたし。
 一緒に乗り合わせた護衛の冒険者の話では野盗が住み着いているとのことです。


「ファンガルム皇国は滅亡したて考えていいでしょうね」


 となると現在の中央での三大国は魔導国家アズガルド、精都サーティスノア、そしてここ、本の国ライブラリに変わっているのかもしれない。


「とりあえずは情報ですね」


 勇者を探そうにも情報がないですし、この国のことも全然知らないですしね。
 そう考えながら情報収集する場所を考えます。
 よく話で聴くのは情報収集と言えば酒場ですかね。
 外壁前の検問所を特に何事もなく(なにもわるいことしてますせんし)通り抜け衛兵に酒場の馬車を聞いたのでそちらに向かうとしましょう。


 やたらと活気がある大通りにある酒場。衛兵に紹介された酒場に足を踏み入れる。
 中は想像していたよりも綺麗な空間だ。まだ昼だからかあまりお客さんは入っていないようです。
 昼間から見るからにお酒だとわかるものを飲んでいる輩がいるから健全とは言えませんが。


「いらっしゃい」


 退屈そうにグラスを拭いているおじさんかいるカウンター席にとりあえず座ります。
 すごく物珍しそうにこちらを見てきますがなんでしょう。


「ミルクをください」
「ここは酒場なんだがな」


 苦笑いをしながらもおじさんはミルクを出してくれました。修道女シスターはお酒を飲まないのです。


「一応修道女なんですけど?」
修道女シスターも人間だろう? 飲む奴もいるさ。あんたは旅の修道女シスターかい?珍しい奴だ」


 なるほど、先程の物珍しそうな視線は旅の修道女シスターが珍しいといった意味でしたか。


「ええ、そんなところです。驚きました。ファンガルム皇国に行ったんですがゴーストタウンみたいになっていたので」


 実際廃墟でしたが。


「ああ、魔王様がやったやつだな」
「魔王ですか?」


 あれやったの魔王だったんですか。


「ああ、と言っても皆殺しにしたわけじゃない。むしろ一人も殺してないな」
「一人も殺さずにですか? 一体どうやって」
「ここ、本の街 《ライブラリ》はほぼファンガルム皇国王都と同じ作りをしている。住民を奪ったって話だがな」


 まさかの力尽くではなく外堀を埋める手段でしたか。
 なかなかに知的なやり方です。


「無理やりですか?」
「そんなわけないさ。あの魔王様は無理強いを嫌うからな。住民が自分の意思で移り住んできたのさ」
「しかし、そんなことをしたら貴族様が怒るんじゃないですか?」


 貴族は嫉妬深い。特に特権階級を失うとしたらなにをするかわからない。


「確かにそうだが、魔王様は力を見せつけてるからな。そういった貴族は財産と家族を連れて亡命ってやつか? 他国に行ったという話だぜ」
「なるほどです」


 聞いてた話よりかなりまともな魔王のようです。
 なによりこの国は活気が溢れています。そのせいか精霊達も楽しそうに飛んでいますし。


「なかなかいい話が聞けました」


 カウンターに銅貨を置き席を立ちます。


「ああ、もういいのかい?」
「ええ、最後に一つ聞いても?」


 ボクは酒場の入り口で振り返り酒場の質問を口にする。


「魔王様ってどうやったら会えます?」

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