浮遊図書館の魔王様
第62話 教会が動きました④
「上の席が一つ空きましたな」
「女神ポンパドゥール様もたまにはいいことをします」
「これ、あれは不運な事故だ。女神様も防ぎようがなかった不運なな」
「「「違いありませんな!」」」
朗らかな笑い声が響く大神殿の中、神官長が生きたまま? 入れられた棺桶が引きずられて外に出される様を眺めます。
この教会、こんなに危なかったんですね。
「さて、どこから説明しようかな」
腕を組み思案するように女神ポンパドゥール? はボクの目の前で首を傾げていた。
この人は本当に女神なんでしょうか?
確かに神秘的な雰囲気はあるけどそれは褐色の肌と踊り子のような服装からだしているような気もしなくもない。
少し動くだけで揺れる胸のせいで非常に目のやり場に困ります。
「女神ポンパドゥール、まずはスペランツァ・タンペットが選ばれた理由を述べてはどうでしょう」
「そうね! 私も今そう思ったところよ、いえそうしようと思ったのよ!」
絶対嘘だ。今思いついたに決まってます。
周りの神官達はこの程度のことは日常茶飯事なことなのか全く動じる気配もありません。
「女神ポンパドゥールの名においてスペランツァ・タンペット、貴女を第七聖女に任命するわ」
あらかじめ神官達に聞かされていたことなので特に動揺することではありません。
「謹んで拝命いたします。つきましては一つ質問をしてもよろしいですか?」
「なんでも聞いていいわよ」
「ボクの前の第七聖女リリス様はどうなったのでしょう? 聞いた話では妊娠されたと聞いたのですが……」
ボクがその話を切り出した瞬間にこやかに笑っていた女神の笑顔が凍りついた。
え、なにか悪いこと言いました?
「あのビッチは聖女じゃないわ」
「え、でも第七聖女はリリス様だったんじゃ……」
「あ・の・女は聖女じゃないのよ〜?」
ボクに一瞬で近づくと笑いながらほっぺを左右に引っ張ってきた。
目が笑ってない。
「あの女は私が目をかけてあげたのに他の男に股を開いていたなんてぇぇぇぇぇ!」
言葉の最後の方にはボクのほっぺを掴む力がかなり入っていて痛すぎます。
それと同時にボクの身体に悪寒が走る。更には大神殿が再び振動をし始める。
まさか、この女神様の怒りで⁉︎
さらに神官達も慌て始める。
「くぅ、最近ようやく収まったっいうのに!」
「女神ポンパドゥール! リリスはすでにここにいません!」
「怒りをお鎮めください!」
神官達が女神の怒りを鎮めるべくいろいろと話しかけた成果か神殿の振動が徐々に収まり始めていた。
「はぁはぁはぁ……ふぅ。ごめんね〜ちょっと嫌なこと思い出しちゃったから」
「は、はい」
ほっぺたを掴むのをやめ軽くステップを踏みながら後ろに下がるポンパドゥール様を見てボクは確信する。
この人は間違いなく女神であると。それもかなりの短気の。あの怒った時の異常なまでの高い魔力。
あれは人では出せないものです。
「では、他の質問をしてもいいでしょうか?」
「ええ、どうぞ」
「どうしてボクなのでしょうか?」
聖女見習いはボク以外にもいたはずなんですけどね。なんで自分が選ばれたかわからないし。
「え、そんなのかわいいからに決まってるじゃない」
「そんな理由ですか⁉︎」
そんな理由でボク聖女になったのか。
「私はね、可愛いものとか欲しいものはなんでも手に入れたいの! あなたは可愛い。だから聖女として私の手元に置いておきたいのよ」
周りの神官達をチラッと見るとまた始まったというような空気が流れている。
「どういった形であれ聖女として選ばれたからには役目を果たしたいと思います」
「うんうん、私も縛り付けるのは趣味じゃないわ。今の所は世の中も平和だしね」
まさか、就任してからすぐに仕事なしですか。
まさかの無職?
「おそれなかがら申し上げます。ポンパドゥール様が神託を授けた勇者が敗れた件いかがいたしましょう」
「あ〜いたわね勇者」
え、神託授けたんですよね?
なのに、忘れてたんですか?
しばらく頭を振りながら考えていた女神様がポンっと手を叩いた。
「よし、では第七聖女スペランツァ・タンペットに女神ポンパドゥールからの最初の使命を与える」
「はい」
「これより中央大陸にて聖剣を与える資格を持つ勇者を探しなさい」
「え?」
聖剣を与える資格を持つ勇者を探す?
中央大陸で?
範囲が広すぎやしませんか?
「女神ポンパドゥール、中央大陸では広すぎるのではないでしょうか?」
神官の一人がそう言ってくれた。
ですよね! 範囲広すぎますよね。
「そうね、なら本の街 《ライブラリ》を目指しなさい」
「《ライブラリ》? ファンガルム皇国ではなくですか?」
聞いたことのない国ですね。新国でしょうか。
中央大陸の三大国といえば魔導国家アズガルド、ファンガルム皇国、精都サーティスノアのはずです。
しかも、この教会から一番近い大国ファンガルム皇国のはずなんですが。
「ファンガルム皇国は実質半壊しています。図書館の魔王と名乗るものに女神ポンパドゥール様の神託を受けた勇者様も倒されています」
行きたくない。そんな凶暴な魔王がいる街になんて行きたくないです。
「安心しなさい! 最寄りの街までは転移魔法で送ってあげるわ!」
そういうと女神ポンパドゥールの手から魔力が放たれボクの足元に一瞬で魔法陣が描かれる。
すぐに魔法陣が輝きだしボクの体は光に包まれ始めていた。
「ちょっとまってくだ……」
「大丈夫よ。転移魔法になれない人は軽い船酔いみたいになるくらいだから死なないわ」
「聖女スペランツァ・タンペット、汝に女神ポンパドゥール以外の加護があらんことを」
なんとも不吉なことを言いながら神官達が空に十字を切る。
自分達の信仰している女神以外の加護って。
「まってくださ……」
「いきまーす」
ボクの言葉を最後まで聞くことなくポンパドゥール様は魔法陣に魔力を通し転移魔法を起動さしたのだ。
ボクに一切の荷物、勇者に与える聖剣すら渡さずに。
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