浮遊図書館の魔王様
司書を探しました①
マーテの作った昼食を食べ終え、さて読書に再び戻ろうかと席を立った瞬間だった。
「司書を雇おうかと思います」
珍しくレキからわたしに提案してきた。
日頃わたしに提案してくる人といえばベアトリス、ユール、カハネルの三人くらいだからだ。
「ほう、それはどうして?」
「こちらをご覧ください」
レキがわたしの質問に答えず映す鏡にどこかの部屋を映し出す。
「わたしの部屋だね」
「ちなみにこちら現在のいえ、正確に言えば二時間前の映像になります」
へぇ、映す鏡は過去の映像も写せるのか、、初めて知ったよ。
映す鏡に映されているのは綺麗に整頓され足の踏み場がありきっちりと本が本棚に収められている綺麗な部屋だ。マーテ達ががんばったんだろう。
「続いてこちらをご覧ください」
そう告げると再び映す鏡を操作し部屋を映し出す。
「また、わたしの部屋だね」
ただ、次に映し出されたのは確かにわたしの部屋だ。
そこいら中に隙間がないほどに本が置いてある見間違えることないわたしの部屋だ。
「こちらが今、さっきの映像から二時間後の映像になります」
「なるほど」
「それだけですか?」
「え?」
レキがどんよりとしたような目でわたしを見てくるけどどうしたんだろ?
「たった二時間でどうやったらあれだけ散らかせるんですか!」
声大きい。耳が痛いし。
「二時間ですよ⁉︎ 普通二時間であれだけ散らかせますか!」
「本を読んでたらそうなるんだよ」
読んでは積み読んでは積みをしてたらそうなるんだけどね。
「マーテが泣きながら来ましたよ? すぐに散らかされるって」
ええ⁉︎ マーテが!
それは悪いことをしたかもしれない。今度お菓子を買ってあげよう。
「しかし、現状は魔王様の部屋の掃除だけでかなり時間を潰してしまいます。そこで! 司書です」
いちいちレキの動きがオーバーリアクションな気がするけどあえて言うまい。
「司書を一人雇うことによって私たちは魔王様の本の整理をその方に任すことができますので」
「わしも賛成じゃの」
鮮やかな赤い和服?(東ではそう言うらしい)を着たベアトリスが気だるげに現れる。
「なんで?」
「正直、最近この街で売りに出されている本の数は異常じゃ。さすがは本の国と言われるだけのことはある。」
椅子に座るとレキが紅茶をベアトリスに差し出す 。
受け取り軽くすするがベアトリスは眉を潜め飲むのを辞める。熱かったのだろうか。
「こちりゃとひても目録がふぉしいのじゃ」
軽く火傷でもしたのだろうね。言ってる言葉がふにゃふにゃとしてる。ベアトリスは猫舌だったか。
「そんなに大量なの?」
確かに新刊の量はすごかったけどそこまでとは思わなかった。
「ああ、そりゃ新刊だけの話であろう?」
「どういうこと?」
「お主、自分で挙げた条例わすれとるじゃろ」
ああ、あれか。
誰でも本を出すことができる権利。それがわたしが唯一盛り込んだ条例だ。
《ライブラリ》での紙の普及率は紙の質を無視すれば高い。
そしてなによりこの国を作ったのはわたしが本を読みたいという理由からだけだ。そのため作家じゃない人達にも本を出すことができるように紙を安く提供し、本を売りやすくしたのだ。
結果は上々。
様々な本が売りに出され初心者が書いた本ばかりが並べられる通りまでできているのだ。
おそらくベアトリスが言っているのはそういった本のことなんだろう。
「そんなに多いの?」
「うむ、初心者の本ばかりがだしてる通り、初心者通りだったかのう。あそこだけでも七百以上の本がでとるらしい」
まぁ、内容はピンキリじゃがの。と小さく漏らす。
七百はなかなかに多い。ヨダレがでるね。
「そんなわけでわしとしても魔王様が司書を抱えるのは賛成じゃ。ついでに目録もくれるとなお良いがな」
「むさ苦しいのじゃなかったらいいよ」
どうせ整理整頓とかしてくれるなら可愛い方がいいに決まってるしね。
「では、とりあえずは司書を雇うというのは決定ということでよろしいでしょうか?」
「いいよ」
「ではさっそく募集いたします」
レキの提案にわたしは軽く返事をするのであった
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