浮遊図書館の魔王様
筋肉の襲来きました③
「死ねぇぇぇぇぇぇ!」
激情に任せ炎魔法をこの世の憎しみを込め筋肉に向かい解き放つ。
轟々と音を立てる炎塊を叩きつけられ一気に燃え上がった。
「むぅ! レキ殿なにをする?」
鬱陶しそうに筋肉が軽く腕を払うだけで炎が消えた。
というか傷とか火傷が一切ないとかどんな身体をしてやがるんだ。
「うるさい! お前は今、推理小説を読んでる人間に対してやってはいけないことをやった! だから殺す!」
「我輩がなにをしたというのだ?」
こいつ、わかってないのか。
ならば教えてやる。教えたうえで殺!
「いい⁉︎  推理小説を読んでる人間がいたならばタイトルを確認して読んだかの確認が必ずいるの! ネタバレとか気にしない人もいるかもしれないけどわたしは気にするの!」
「う、うむ」
わたしに気圧されたのか筋肉が後ろに下がる。
「だから、お前は死んでよし!」
再び複数の炎魔法を展開。立て続けにイオンに向かい放つ。
慌てたようにイオンは持っていた本を放り投げ回避。
時間をおいて中に投げられた本が音を立てて床に散らばる。
それを見てわたしはイオンを睨み付ける。
「本を粗末に扱うなぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁ!!」
「おぬしのせいであろう!」
いくつもの炎魔法を放つがイオンはその筋肉の塊のような外見をしていながらも意外とすばやくかわす。
早く火ダルマにしてやりたいがどうするかな。
考えながらも炎魔法を放つのはやめない。あちらこちらで爆音が響くがやっぱり当たらない。
いや、いくつかは当たっているんだけど傷が全く付かない。なんなんだあの筋肉。
「この魔力、レキ殿、貴様が魔王か!」
「ただの本好きだ!」
「貴様が魔王であるのならば我輩も全力を出すまで!フン!」
気合の入った声を出すとイオンの体がというか筋肉が一回り大きくなった。
なんだあれ?なにかの魔法か?
「我輩の肉体に魔法はきかん! 我輩を倒したければ肉弾戦でかかってくるがいい!」
ほう、魔法がきかないと。
信用しないけどね!
右手に魔力を圧縮。
「雷魔法」
右手に閃光放つ槍を生成。すぐさまにそれを走り勢いを付け投擲。
貫通力に特化した魔法で貫く!
雷魔法は寸分の狂いなく腕を組み仁王立ちしているイオンの腹筋に叩き込む。
腹筋に雷魔法が突き刺さりイオンに雷が襲いかかる。
「ふん!」
ただ単に腹筋に力を入れただけだったようにしか見えなかったがそれだけで雷魔法は霧散する。
「効かぬと言ったはずだが?」
なんか勝ち誇ってるような顔が腹立つ。
「次は我輩から行くぞ!」
筋肉が迫る! それだけでかなり怖い。
防御魔法結界を発動。
イオンが拳をわたしに叩きつけるがわたしは全くダメージないからね。
それどころか拳を振るったイオンの拳から嫌な音が響き血が飛び散る。
「むぅ!」
「わたしに攻撃は効かないよ」
先程言われたことて同じようなことを言い返してやる。
「ならば殴り続けるのみよ!」
ふぅと息を吸い込んだ次の瞬間、
「らぁぁららららららららりらららららりらら!」
奇声を上げながらわたしに対しひたすらに拳を振るい続ける。
嫌な音、血が飛び散り続けわたしは眉をひそめる。
「不快ね」
部屋全体を魔法でコーティングしてるから本に汚れは着かないが飛び散るというのがすでに不快だ。あと匂いとか嫌でも鼻につくし。
しかし、魔法が効かないとなるとどうするかな。
わたしの自衛方法って魔法しかないからね。
「まてよ」
魔法は効かないけど肉弾戦は通る。
様は拳とか脚で攻撃したらいいわけだよね。
だったら魔力を再び右手に圧縮。
こんどは魔法にせずにただ圧縮し纏う。
「ふっ、」
連撃を放つのを辞め、後ろに下がろうとしたイオンを追い、わたしは滑る様に前に出る。
「えーと、グーパン!」
魔力を込めただけの拳をイオンの腹筋にえぐる様に放つ。
腹筋に炸裂した一撃により筋肉に塊の足が床より浮かぶ。
「がっ!」
短く声を上げたイオンを確認し、確信する。
魔法は無効化してるけど魔法として成立していない魔力なら通じる、と。
「我輩の身体には魔法が効かないはず……」
怪訝な顔をしながらイオンは口ごもる。
しかし、イオンはそれに気づいていない様だ。言うつもりもはいけど。
四肢全てに圧縮した魔力を纏い再びイオンの懐に潜り込む。
「むん!」
再びイオンは拳を振るいわたしを殴るが結界が全ての攻撃を無効化する。
「せい」
軽く声を上げ左足をイオンの側頭部に叩き込んだ。コマのようにクルクルと回るがなんとか倒れずに向かってきた。
「はぁぁぁぁ!」
「死ねぇぇぇぇぇぇ!」
片や血塗れの筋肉、片やメイド服を着込んだメイドという奇妙な戦いがつづく。
しかし、戦いはほぼ一方的だ。
筋肉は魔法が効かない肉体と筋肉でこちらを攻撃してくるがわたしは結果で身を守りながら圧縮した魔力を纏った拳や脚で適当に(型とかわからないんだよ)殴るだけだし。
結果、血塗れの筋肉の塊が出来上がった。
「がふぅ……」
イオンが血を吐き膝を付く。体のあちこちに打撲痕やいたるところに内出血、切り傷があった。
「フーフーフー」
かく言うわたしも息が上がっていた。
わたしはインドア派なんだ。肉体労働は疲れるよ。
「まだ、負けぬ!」
血を至るとこから流しながらもイオンはまだ立ち向かってきた。
しつこい、めんどい。
そしてなにより、
「飽きた」
怒りが身体を動かすことにより大分沈静化しているのがわかった。
これ以上やるのはめんどうと判断した。
あと動くのに疲れたし。
「次で最後の攻撃! 受けよ! 我輩の命の輝きを!」
なぜか大げさなポーズを見せつけながらこちらに向かい走りだしたイオンが凄まじく邪魔だ。
殴り合いも飽きたし、落とすか。
この浮遊図書館はわたしの領域。つまり、
「どこでも好きに弄れるんだよ!」
わたしに向かい拳を突き出す瞬間を狙いイオンの足元を魔法で落とし穴に変換する。
「ぬぉう⁉︎」
足場が急になくなったことにより重力に従い落下し始めたイオンだったがギリギリまだ残っている床を掴み落下を防いだ。もう少し大きく開ければよかったな。下の階はもっと大きな穴にしよう。
「我輩の筋肉に恐れをなして罠を使うとは卑劣なり!魔王!」
「卑劣?」
なんかカチンときた。
わたしは床を持つ手のそばまでよるとイオンを見下ろす。
イオンの下にはすでに穴が開けてあり、地上の黒曜の森が目に入った。
「いい? 魔王っていうのは悪役なんだよ?」
圧縮魔力を纏った脚で床にくっついている手を踏みグリグリと動かす。
「そして卑怯汚いと言えるのは生きてる敗者だからだよ。死人はそんなこと言わない」
「くぅぅ、我輩の共であるまっするぅ革命団の仇を取れぬとはぁぁぁぁぁぁ!」
ああ! いたね! まっするぅ革命団! 落とし穴にはまった奴らだ。
「ちょうどよかったね。彼らと同じ末路を辿れて」
手を踏みつけるのを辞め、後ろに数歩下がる。
そしてわたしの足元まで穴を広げる。
当然掴む物がないイオンは宙に投げ出され落下。
「おのれ魔王! いつか必ず成敗してくれるぅぅぁぁぁぁ!」
大声を上げながら森に落下し、ドォォォンというなにかがぶつかるような音が聞こえたのを確認し、再び魔法で穴を塞ぐ。
「終わった終わった」
軽く体を伸ばすとくるりと身を翻すといつも座っている王座に向かい歩き始める。
ネタバレされたとはいえ気になる物は気になるしね。
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