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浮遊図書館の魔王様

るーるー

筋肉の襲来きました②

「とりあえずお茶でも入れましょうか?」


 しびれ薬でも入れて身動きが取れなくなったら外に放りだそう。
 しびれ薬はどこにあったかな。


「いや、お構いなく。それよりもここはいつもこんなに汚いので?」


 ちっ!うまくいかないか。
 レキ達を待つしかないな。レキ達なら軽々と追い返してくれそうだし。
 しかし、言われて改めて周りを見渡すとすごい量の本があるんだな。
 積み重ねてるからこれ崩れて巻き込まれたら死ぬかもしれないな。
 本に埋れて死ぬ。
 あれ、読書家としてはかなり満ち足りた死に方じゃないだろうか。


「ええ、魔王様はあまり片付けをしないので」


 とりあえず、無難には返事をかえすけどさ。
 いや、よく見てよ!この緻密に計算された本の位置を!見たい時に見たい本があるじゃない!


「ふむ、ということはメイドであるレキ殿は部屋の片付けの途中だったのでは?」
「え? あ、はい」


 あー、確かにメイドというかマーテがとかレキがせっせと本棚に片付けてるイメージがあるね。
 わたしは片付けないけど。散らかす専門ですから。


「では、我輩も手伝うとしよう。もし、我が魔王に、負けた場合仕事をしてなかったらまずいだろうしな」


 この筋肉イオン、意外と紳士だ。だがピクピク動かすのはやめてよ。吐きそうになるし。
 あと無駄に筋肉を強調するポーズをしないで。
 仕方なしに積んでいた本を本棚に片付けていく。
 どうせすぐに散らかるんだけどね。
 しばらく黙々と(しぶしぶ)散らかしていた本を筋肉イオンと共に本棚にしまっていく。


「ここの魔王はなかなかいい趣味をしておるな」


 不意に筋肉イオンが手に持った本を眺めながらぼやいた。その本はわたしが先程まで読んでいたヴェルリック作のミステリー小説だ。


「そうですか?」
「うむ、我輩も少し本を読むのだが我輩が好きなヴェルリック氏の本が全て揃っているようなのでな」


 本の趣味のことを褒められて嬉しかったがそれ以上にイオンの発言にわたしは驚愕した。
 この筋肉の塊が本を読むだと?
 この明らかに私脳筋ですと言わんばかりの肉体を持つようなこの男が読書?


「あの、イオンさんは本を読むんですか?」
「失礼な。我輩、身体の筋肉だけではなく知性も滲み出ておるだろう?」


 滲み出てるのは汗だよ。そんな手で本を触って欲しくないんだけど。
 わたしはこっそりと部屋の本全てに最上級の防御魔法ハイプロテクトをかけた。
 これであの筋肉の汗とか匂いとかも付かないだろう。


「健全な精神は健全な肉体に宿ると言われているからな。我輩も肉体の鍛錬と一日の読書は欠かさずにしておるのだ」


 宿った健全な精神がこれか。
 どうやらその言葉には例外があると記入しておかねばならないだろう。
 いや、もしくはわたしが健全の意味を取り違えている可能性もあるのか。


「ちなみにどういった本をお読みに?」
「この本の著者でもあるヴェルリック殿の本がなかなかに秀逸であるから好きではあるな」


 まさにわたしが今読んでる作者じゃないか。


「今回発売された新刊、『アリガルの悲嘆』は良い作品だった」
「ですよね! 登場人物の心情描写とか特に!」
「ほう! レキ殿も読まれているのか! あれは確かに素晴らしい作品だ」


 この筋肉、意外と話がわかるかもしれない!
 本好きに悪い奴はいない!
 いやー人を見かけで判断したらいけないね!


「しかし、まさかメイドが犯人だったとは……」


 え……


「しかも妹が共犯者でその兄の復讐に利用するとは我輩とても感動した」


 こいつ何を言った?
 犯人? 共犯者? 復讐? なにそれ?
 こいつまさか……


「いやぁ、アリガルの悲嘆は誠よい作品であった」


 わたしの読んでないとこのネタバレをしやがった!



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