浮遊図書館の魔王様
新刊を買いに行きました②
「痛い」
膝をつき鼻を押さえながら涙ぐんでいるマーテに手を貸しわたしは立ち上がるのを手伝う。
「大丈夫?」
「う~大丈夫です」
こちらを見上げる顔は涙でぐちゃぐちゃだし。
小動物みたいで母性愛をくすぐられるね。なでて進ぜよう。
マーテの頭を撫でながらも考える。
確かにマーテは獣人種のわりにあまり運動神経が良くない。それでも彼女が踏み出しの一歩目でこけるというのはありえないと思うんだけど。いや、マーテならありえるんだけど
「ん?」
視界に鈍い光が目に入りそちらに眼を向けるとマーテの足元に黒く光るナイフが突き刺さっていた。
地面からナイフを引き抜きなんとなく眺めるとよくわからない文字が書いてあるな。
「なんだ、これ」
「そりゃ、古代文字が書いてあるから古代魔導具だな」
「おっちゃん知ってるの?」
「ああ、そいつは盗賊がよく使う古代魔導具の影縫いのナイフだな」
盗賊も古代魔導具を使うんだ。影縫いとつくということは
「効果は影に刺すと動きを止めるとか?」
「ああ、使用者の魔力に依存するらしいけどな」
なるほど。本来ならマーテは完全に動けなかったのが使った奴の魔力が弱かったから足だけ固定されて転けたのか。
「サイフを盗った奴はおそらく盗賊ギルドの奴だろうから捕まらないと思うぞ?」
「ああ、それは大丈夫、人の本を買う邪魔をしたやつにはそれなりに制裁を加えないとね」
あと新しい魔法を試したいしね。
わたしはマーテをお姫様抱っこをして抱え上げる。
「あのレクレさま?」
なぜか頬を紅くしながこちらを見てくるマーテ。なぜ紅くなるのか?
「次元魔法」
「ひぃ!」
唱えると共に浮遊感。それと共にマーテが短く悲鳴を漏らした。
そりゃそうだろう。今わたし達がいるのは空なんだから。首に回されていたマーテの腕に力がこもる。
上には蒼い空。下には我が国 《ライブラリ》。絶景だね。
次元魔法は言うならば簡易転移魔法だ。ただし、見える所にしか移動できない。
これだけ聞くと転移魔法と同じように聞こえるかもしれないがどういうわけか転移魔法は浮遊図書館から出る場合と浮遊図書館に戻る場合しか使えないのだ。
浮遊図書館以外の場所に転移魔法を使おうとしても使えなかったしね。
転移魔法自体がすでに激レア魔法だから解析のしようがないから諦めてるけど。
「れ、レクレ様……空、空!」
「ん? ああ、青いね。今日も晴天だし」
今日もいい天気だし、マーテもそれで泣いてるのかもしれないし。
さて、それよりもと周りを見渡すがピカピカは見当たらない。
もう少し高くないと見えないか。
そう考えていると浮遊感が消え、一気に下の地面に向かい落下する。
「みゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
マーテの口から絶叫が溢れる。
下に落ちる風圧によりわたしの服とマーテの服がバタバタと揺れる。
「次元魔法!」
再び魔法を唱え先ほどより前に転移する。
使い方はなんとなくわかった。
後はピカピカを見つけるだけだ。
わたしは連続で次元魔法を使い街の屋根の上を高速で移動していく。
腕の中のマーテはグッタリとすでに気を失っていた。
日頃はここより高い図書館に住んでるのになんでだろう。
何度かの次元魔法の使用でようやく頭が光るピカピカを発見する。
すでに振り切ったと思ってるのか走っておらず悠々と歩いてるな。
「みーつけた」
口元を半月状に歪め再度次元魔法を使用し、ピカピカの前に姿を見せた。
「な⁉︎」
「やぁ、さっきぶりかな? 会いたかったよ」
そう言うと軽く魔力で両腕を強化、グッタリとしたマーテを片手で持ち、もう片方の拳を男の腹に突き刺した。
「がはぁ!」
苦しそうな声を漏らし、男は後ろに吹き飛びゴロゴロと音を立てながら地面を転がった。
しばらくすると腹を抑えながらゆっくりとした動作で立ち上がり、恐らく何処かに装備していたナイフを構えた。
突然、目の前に姿を見せたわたし達を驚愕の表情を浮かべた土まみれの男にわたしは極めてフレンドリーに話しかけた。
ふふふ、驚いてる驚いてる。
「お前、どうやって!」
「ん? 魔法だよ? あ、あとこれ落し物」
そう言い、先程拾ったナイフを男ではなく、男の足元に向かい魔力を込め放り投げた。
魔力により強化されたナイフは男が全く反応できない速度で放たれドンっ!という重い音を立て、男の影の部分の地面を吹き飛ばし突き刺さる。
調整難しいな。
「だめだよ? 貴重な古代魔導具なんか落としたら」
ニコニコと笑顔を浮かべながら近づくわたしに対し男の表情は明らかに引きつっている。
身体を動かそうとしてるみたいだけど動かないよね。
だって落とし物の影縫いのナイフが刺さってるんだから。
ゆっくりと恐怖心を煽るように歩く。この歩き方はユールの歩き方を真似てみた。
   彼女の笑顔の歩き方はなかなかに怖いからね。
「ところでおじさん。わたしも落し物をしてね。サイフなんだけど知らない?」
あくまで落し物しただけですよと周りから見てる人にアピールする。脅迫じゃないよ。話し合いだよ。
「俺の服のポケットに入ってる」
「なんだ、拾ってくれてたんだね」
男の言った通りにポケットを探ると確かにわたしのサイフ
があった。
「ありがとうね! おじさん、これはお礼だよ」
青ざめた顔をした男に対しわたしは笑顔で小さくつぶやく。
「風魔法」
唱えた魔法はすぐさま発動。男の着ていた服を全て切り裂き、身動きのとれぬままま男は全裸に早変わりした。
さりげなく陰縫いのナイフは魔法を調整し、自分の足元に転がって来るようにした。
それを確認したわたしは大きく息を吸い込み、
「キャァァァァァァ! 露出狂よぉぉぉ!」
叫んだ。
すぐさまに周りも気づき所々で女性の悲鳴が上がる。
計画通り。
すぐに鎧を着込んだ騎士が現れ全裸の男を取り押さえる。
その後ロープでぐるぐる巻にした露出狂をすぐに連行していった。
なかなかに仕事が早い騎士団だ。
「まぁ、これで勘弁してあげるよ」
次はないけどね。
と考え未だに気絶しているマーテを背中に背負うよいにし再び本屋に向かうべくわたしは歩きだした。
膝をつき鼻を押さえながら涙ぐんでいるマーテに手を貸しわたしは立ち上がるのを手伝う。
「大丈夫?」
「う~大丈夫です」
こちらを見上げる顔は涙でぐちゃぐちゃだし。
小動物みたいで母性愛をくすぐられるね。なでて進ぜよう。
マーテの頭を撫でながらも考える。
確かにマーテは獣人種のわりにあまり運動神経が良くない。それでも彼女が踏み出しの一歩目でこけるというのはありえないと思うんだけど。いや、マーテならありえるんだけど
「ん?」
視界に鈍い光が目に入りそちらに眼を向けるとマーテの足元に黒く光るナイフが突き刺さっていた。
地面からナイフを引き抜きなんとなく眺めるとよくわからない文字が書いてあるな。
「なんだ、これ」
「そりゃ、古代文字が書いてあるから古代魔導具だな」
「おっちゃん知ってるの?」
「ああ、そいつは盗賊がよく使う古代魔導具の影縫いのナイフだな」
盗賊も古代魔導具を使うんだ。影縫いとつくということは
「効果は影に刺すと動きを止めるとか?」
「ああ、使用者の魔力に依存するらしいけどな」
なるほど。本来ならマーテは完全に動けなかったのが使った奴の魔力が弱かったから足だけ固定されて転けたのか。
「サイフを盗った奴はおそらく盗賊ギルドの奴だろうから捕まらないと思うぞ?」
「ああ、それは大丈夫、人の本を買う邪魔をしたやつにはそれなりに制裁を加えないとね」
あと新しい魔法を試したいしね。
わたしはマーテをお姫様抱っこをして抱え上げる。
「あのレクレさま?」
なぜか頬を紅くしながこちらを見てくるマーテ。なぜ紅くなるのか?
「次元魔法」
「ひぃ!」
唱えると共に浮遊感。それと共にマーテが短く悲鳴を漏らした。
そりゃそうだろう。今わたし達がいるのは空なんだから。首に回されていたマーテの腕に力がこもる。
上には蒼い空。下には我が国 《ライブラリ》。絶景だね。
次元魔法は言うならば簡易転移魔法だ。ただし、見える所にしか移動できない。
これだけ聞くと転移魔法と同じように聞こえるかもしれないがどういうわけか転移魔法は浮遊図書館から出る場合と浮遊図書館に戻る場合しか使えないのだ。
浮遊図書館以外の場所に転移魔法を使おうとしても使えなかったしね。
転移魔法自体がすでに激レア魔法だから解析のしようがないから諦めてるけど。
「れ、レクレ様……空、空!」
「ん? ああ、青いね。今日も晴天だし」
今日もいい天気だし、マーテもそれで泣いてるのかもしれないし。
さて、それよりもと周りを見渡すがピカピカは見当たらない。
もう少し高くないと見えないか。
そう考えていると浮遊感が消え、一気に下の地面に向かい落下する。
「みゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
マーテの口から絶叫が溢れる。
下に落ちる風圧によりわたしの服とマーテの服がバタバタと揺れる。
「次元魔法!」
再び魔法を唱え先ほどより前に転移する。
使い方はなんとなくわかった。
後はピカピカを見つけるだけだ。
わたしは連続で次元魔法を使い街の屋根の上を高速で移動していく。
腕の中のマーテはグッタリとすでに気を失っていた。
日頃はここより高い図書館に住んでるのになんでだろう。
何度かの次元魔法の使用でようやく頭が光るピカピカを発見する。
すでに振り切ったと思ってるのか走っておらず悠々と歩いてるな。
「みーつけた」
口元を半月状に歪め再度次元魔法を使用し、ピカピカの前に姿を見せた。
「な⁉︎」
「やぁ、さっきぶりかな? 会いたかったよ」
そう言うと軽く魔力で両腕を強化、グッタリとしたマーテを片手で持ち、もう片方の拳を男の腹に突き刺した。
「がはぁ!」
苦しそうな声を漏らし、男は後ろに吹き飛びゴロゴロと音を立てながら地面を転がった。
しばらくすると腹を抑えながらゆっくりとした動作で立ち上がり、恐らく何処かに装備していたナイフを構えた。
突然、目の前に姿を見せたわたし達を驚愕の表情を浮かべた土まみれの男にわたしは極めてフレンドリーに話しかけた。
ふふふ、驚いてる驚いてる。
「お前、どうやって!」
「ん? 魔法だよ? あ、あとこれ落し物」
そう言い、先程拾ったナイフを男ではなく、男の足元に向かい魔力を込め放り投げた。
魔力により強化されたナイフは男が全く反応できない速度で放たれドンっ!という重い音を立て、男の影の部分の地面を吹き飛ばし突き刺さる。
調整難しいな。
「だめだよ? 貴重な古代魔導具なんか落としたら」
ニコニコと笑顔を浮かべながら近づくわたしに対し男の表情は明らかに引きつっている。
身体を動かそうとしてるみたいだけど動かないよね。
だって落とし物の影縫いのナイフが刺さってるんだから。
ゆっくりと恐怖心を煽るように歩く。この歩き方はユールの歩き方を真似てみた。
   彼女の笑顔の歩き方はなかなかに怖いからね。
「ところでおじさん。わたしも落し物をしてね。サイフなんだけど知らない?」
あくまで落し物しただけですよと周りから見てる人にアピールする。脅迫じゃないよ。話し合いだよ。
「俺の服のポケットに入ってる」
「なんだ、拾ってくれてたんだね」
男の言った通りにポケットを探ると確かにわたしのサイフ
があった。
「ありがとうね! おじさん、これはお礼だよ」
青ざめた顔をした男に対しわたしは笑顔で小さくつぶやく。
「風魔法」
唱えた魔法はすぐさま発動。男の着ていた服を全て切り裂き、身動きのとれぬままま男は全裸に早変わりした。
さりげなく陰縫いのナイフは魔法を調整し、自分の足元に転がって来るようにした。
それを確認したわたしは大きく息を吸い込み、
「キャァァァァァァ! 露出狂よぉぉぉ!」
叫んだ。
すぐさまに周りも気づき所々で女性の悲鳴が上がる。
計画通り。
すぐに鎧を着込んだ騎士が現れ全裸の男を取り押さえる。
その後ロープでぐるぐる巻にした露出狂をすぐに連行していった。
なかなかに仕事が早い騎士団だ。
「まぁ、これで勘弁してあげるよ」
次はないけどね。
と考え未だに気絶しているマーテを背中に背負うよいにし再び本屋に向かうべくわたしは歩きだした。
「浮遊図書館の魔王様」を読んでいる人はこの作品も読んでいます
-
-
2.1万
-
7万
-
-
6,571
-
2.9万
-
-
165
-
59
-
-
61
-
22
-
-
1.2万
-
4.7万
-
-
5,013
-
1万
-
-
5,073
-
2.5万
-
-
9,627
-
1.6万
-
-
8,090
-
5.5万
-
-
2,412
-
6,662
-
-
3,135
-
3,383
-
-
1.3万
-
2.2万
-
-
9,294
-
2.3万
-
-
3,521
-
5,226
-
-
6,119
-
2.6万
-
-
1,285
-
1,419
-
-
2,845
-
4,948
-
-
6,614
-
6,954
-
-
3万
-
4.9万
-
-
6,028
-
2.9万
-
-
315
-
800
-
-
6,161
-
3.1万
-
-
65
-
152
-
-
3,630
-
9,417
-
-
1,856
-
1,560
-
-
11
-
4
-
-
105
-
364
-
-
2,931
-
4,405
-
-
2,605
-
7,282
-
-
9,139
-
2.3万
-
-
2,787
-
1万
-
-
4,871
-
1.7万
-
-
2,388
-
9,359
-
-
561
-
1,070
-
-
71
-
145
コメント