浮遊図書館の魔王様

るーるー

第五十七話 二人増えました

 シロと話をした次の日、なんとなく、本当になんとなく浮遊図書館より下界を見下ろすとなんと街ができてました。
 しかも、また浮遊図書館と同じくファンガルム皇国の首都そっくりな街が。
 一緒に居た面々が「またなにかやらかしたな」見たいな顔で見てたけど断じてわたしは何もしてない。
 唯一、ユールだけが、「街を作る手間が省けました」と喜んでいたくらいだ。
 やってもいないことをやったことにされる存在。
 案外、魔王とはそんな奴らのことを言うのかもしれないと染み染みと思った。


 閑話休題。
 とりあえずあるものは有効活用しようということでファンガルムコピー街はそのまま使うことに全員賛成。国としての名前をつけることになったわけさ。


「魔王様の国ですから魔王が名前をつけないと」


 まぁ、丸投げされたから名前を考えた。
 悩んだよすごく。とても悩んだよ
 時間にすると三分くらい。
 国の名前は 《ライブラリ》
 《ライブラリ》は昔の言葉で図書館という意味らしいので浮遊図書館を有するわたしたちにはピッタリな名前だったのだ。
 といってもわたしが国を作るために何かをしてたわけではないし(街を用意したのシロだし)これから動いていくのはほぼユールなわけだし。
 ユール曰く、


「魔王様の要望と世界征服のために頑張りますわ」


 と子供のように無邪気に嬉しそうにユールは話してきた。
 わたしの知らないところでまたいろいろ暗躍しそうだから怖い。ちびっ子三人組が悪影響を受けないことを願うしかない。
 また、ユールが欲しい人材に上げたのがカハネル・リミテス、ベアトリス・ラ・フュールの二人だけだった。


「現時点での国を動かす人材は十分に揃っています」


 とあっさり言い切った。


 そんなわけで呼び出したベアトリスとカハネルを謁見の間で待ってるわけだけど。
 ベアトリスはまだしもカハネルとは卒業式以来だから(といっても友達付き合いがあったわけではないなんか向こうがよく突っかかってきたくらい)複雑な心境というさどう接したらいいかわからないし。
 やがて現れた二人は片や顔面蒼白、片や顔面紅潮という両極端な顔色で現れた。
 二人は王座の前までくると片膝を付き頭を下げる。


「ベアトリス・ラ・フュール参りました」
「カハネル・リミテス参りました」
「うん、楽にしていいよ。敬語もいらないし」


 敬語使われ続けるのもつらいしね。


「絶対呼ばれると思ったがよりにもよって殿下に国政を預けたのか」


 頭を上げ、こちらを見たベアトリスが顔を真っ青にしながら言ってきた。
 え、なんか選択間違った?


「いや、まぁ、お主となら馬も合うじゃろ、多分」


 なぜかベアトリスは視線を合わせようとしない。
 不安すぎるよ。


「貴方方!一体なにをしたの⁉︎」


 カハネルに物凄い剣幕で詰め寄られた。
 紫の瞳にゆらゆらと私! 怒ってます! みたいな色が見えるし。


「なんのこと?」


 全く見に覚えがないんですけど……
 全部やったのユールだし。


「先日、カドラト国王とお父様が魔法騎士団まで来たのよ」
「国王はともかく、父親が娘に会いに来ただけじゃないの?」
「ええ、私もただ会いに来てくれただけだったらどれだけ良かったか……」
「な、なにがあったの?」


 怒りで肩を震わせるカハネル。なにこれめちゃくちゃ怖いんですけど。
 ちびっ子三人組が震えてるし。無意識で魔力ばら撒いてるから圧力が半端ない。


「始めは当たり障りない話をしていました。最近の調子とか騎士団の話などをね。でも途中から我が国が戦争に負けたというじゃないですか。しかもたった五人に。挙句に国家財産の半分と領土もとられたと。ええ、ここまでは理解できます。わが国は負けたのですから!」


 無表情で怒りの言葉を吐くカハネルが怖すぎる。
 でも、ここで口を出したら絶対火に油を注ぐようなことになりかねないし。


「理解はしましたが次にその負けた相手のトップがレクレ、貴女というじゃないですか。更に要求がベアトリス卿と私という人材? 貴女どれだけ私の人生狂わせますの!」


 やばい。怒ってる原因がわたしにあるみたいだけど心当たりが全くない。


「えっと、全く怒られる理由がないんですけど? 人材を求めたのはユールだし……」
「貴女は! 貴女って人は! 学院時代から人の努力をあざ笑うかのように常にトップに君臨しておいて!」
「でも最終的にカハネル主席じゃない、わたし次席だし」
「それも最後の試験の時に貴女が休んだからでしょう⁉︎」


 そういえばテスト最終日は新刊の発売日で出席しなかったな。


「最終的には問題行動の多い貴女を主席にするのは問題だという先生方の考えでお情けで主席に私はされたんですのよ!ええ、私のプライドはボロボロでしたよ! ライバル視してた人が私に一切関心がなかったんですからね!」


 そ、そんないきさつがあったのか。
 というかわたし、カハネルのライバルだっのか。だからあんなに突っかかってきたのか。
 そんな泣かなくてもいいんじゃ。


「話が逸れましたわ。私がその話を断ると貴族であるお父様と国王様が土下座ですよ! 東洋から伝わる最上級の誤りである土下座をあの二人は私にしたのです!」


 なにやってるの国王。


「大の大人二人がですよ! 涙流しながらこの国に行ってくれって、なにしたらそこまでいくの⁉︎」


 無言で横に控えるユールを睨むと彼女は軽く微笑む。


「別に対したことはしていません。軽くレキ様の剣の腕を王城でお父様の前で披露してこうならなければいいですねっと言っただけです」


 ユール。それを人は脅迫というんだよ。
 きっとレキも喜んで剣を振るったんだろうな。


「本当に嫌なら帰ってもいいよ?」
「ふん、そうやって私が帰ったらまた自分の勝ちだと自慢するんでしょ! 」


 善意で言ったのになんだこの女。
 わけのわからないことばかり器ちっちゃいな。


「ま、まぁ、ワシは仕えさしてもらうとしよう。楽しそうじゃしな」
「私も仕方なく仕えます。ここで出世して見返してやるんだから!」


 ベアトリスは楽しそうだから。カハネルは出世欲から仕えるとはこの国は大丈夫だろうか。


「それで、ワシ達になにをさせる気だ?」
「ええ、それは私から説明さしていただきます」


 そういいユールが一歩前に出る。
 たったそれだけの動作でカハネルとベアトリスがビクリと肩を震わし、空気が変わる。
 一歩前に出る。
 たったそれだけでもユールがすると様になってるだけではなくなんだか王族のみが纏うような感じのオーラが出ている気がする。


「まずは貴女達には馬車馬のごとく働いていただきます」
「「はあ?」」


 悪魔でもしないであろう邪悪な笑みを浮かべ告げた言葉にベアトリスとカハネルは間抜けな声で返していた。

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