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浮遊図書館の魔王様

るーるー

第五十六話 再会して押し付けられました

 目を開けると真っ白な空間に一人たっていた。


「ここは……」


 ああ、前もあったなこんなこと。
 相変わらず長くいると精神的にまずそうなくらいの白い空間だし。


「シロ、いるんでしょ?」


 わたしはポツリと呟くように尋ねる。
 ここが以前と同じ白の魔導書の中なら確実にシロがいるはずだしね。


「久しぶりの再会なんだからもう少し感動的な演出はないの?」


 目の前の空間から少しづつぼやけるようにシロが現れる。
 魔法かな?


「久しぶりもなにもそんなに親しくはなかったと思うけど」
「君には友愛の精神が足りないよ」


 楽しそうにシロが笑う。


「楽しそうだね」
「ああ、楽しいよ。レクレは予想以上に魔王をやってるからね」


 わたしとしては不本意なことが多いし、巻き込まれたことの方が多いんだけどね。


「だとしてもだよ。君が動くことによって少なくとも歴史は多少変わったんじゃない?」
「不本意だけど」
「だから僕はとても楽しいんだよ。でも君も楽しいんじゃないかな?」
「そうかもね」


 確かに騒がしくはなったけど楽しくもなってるかな。
 その倍は疲れることも多くなってるし。


「今後は国を手に入れたことによりより混沌が深まるだろうし。君を選んで本当によかったよ」


 すっごい笑顔だな。
 殴りたくなるよ。


「よくないよ! わたしの読書の時間が減るじゃないか」
 そのために国を作ったというのに本末転倒じゃないか。
「まあまあ、でもそんな君に今回もプレゼントを持ってきたんだよ」
「プレゼント?」
「そうさ、今回のプレゼントは街だよ」
「街? どうするのさ」
「国を作ったのに街がなかったらなんとも言えないじゃないか。だから街を作るから君たちは住人を集めるだけでいい。とても楽になるだろう?」


 確かに楽になる。いくらわたしの魔力がバカみたいにあるといっても限界がある。そもそもわたしは細かい魔法の制御が苦手だしね。


「だからこそ僕が、白の魔導書が手助けをしようというわけさ」
「願いを叶えるのにも限度があると言ってなかった?」


 確かこいつは願いによるといってたかな。


「君が僕の所有者になったから魔力が足りないということはないと思うよ」
「所有者?」


 いつの間にそんなことになったんだろ。契約とか全くした記憶もないんだけど。


「以前会った時に願いを告げた時点で契約が交わされてるんだ」
「……それ、下手らしたら詐欺じゃないか」


 満足してるからよかったものの不満だったらどうする気だったんだよ。


「街ができてしばらくは退屈だろうけど、きっと君はすぐにイロイロと巻き込まれる。なんとなくそんな気がするんだ」


 そう言うシロはとても邪悪な笑みをわたしに向けてくる。わたしの周りにいる奴らは悪い笑顔をする人ばかりだよ。


「君も悪い笑顔をよく浮かべるじゃないか」


 それを言われると言い返せないけどね。


「僕は君と一緒で嘘はつかない。ただただ退屈なだけだからね」
「なら出てくればいいじゃん」


 中にいるから退屈なんだし。
 街とか作れるなら自分の器くらい簡単に作れるはず。


「それも楽しそうだけど今はまだ見てるだけにするよ」


 曖昧な笑みを浮かべるシロはゆっくりと姿を消して行く。
 いや、シロが消えてるんじゃなくてわたしが消えかかっているのか。


「またね。レクレ」


 こちらに手を振るシロを見たのを最後にわたしの記憶は途切れた。

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