浮遊図書館の魔王様

るーるー

第五十二話 最終兵器だしました

 
 最後の扉が静かに開き、アリオン達は最後の階層。第五階層に到達する。
 この階層に到着した時点で始め千人いた冒険者達はすでに五十人程まで数を減らしていた。
 そんな冒険者を待ち受けていたのは気だるげに王座に座りながら本を読む少女と後ろに控える先ほどまで戦っていたメイド達だった。


「お前が魔王か?」


 フランクは王座に座る少女に向かい話しかける。
 見た感じ王座に座っているから話しかけたのだがなんとなく魔王ぽくない少女だ。
 はっと本から視線をあげアリオン達を視界に捉えると慌てて立ち上がる。


「わははは勇者達よよくぞきたわたしこそがこの図書館の主だ」


 凄まじく棒読みのセリフを魔王が言い放つ。後ろのメイド達はなぜか花を魔王の頭上にばら撒いていた。
 なんというか無理しているのがよくわかる。


「だったら姫さんを返してもらうぜ!」


 空気を読まずフランクが告げるとともに後ろの冒険者達が武器を構え殺気を放ちながら睨みつけてくる。


「はぁ〜」


 魔王はため息を尽きながら持っていた本に栞を挟むと、


「第五階層にようこそ。さて、実はこちら側の準備がまだできてないんだ。ルール上の関係でわたしは相手をできないし」


 困ったものだよ。と本当に困った様子で魔王は話しかけてくる。
 魔王に戦おうとする意欲は全く感じられないがだからといって警戒を解くわけにもいかない。


「とりあえずこちらの落ち度なわけだからなにか謝罪をと」


 一人喋っていた魔王が唐突に喋るのを止め、フランク達を観察する視線に変わる。


「うん、とりあえず回復させようかな」


 なにかに納得し頷くと魔王は右手をフランク達にかざす。
 全員が動揺したような気配が伝わる。魔王はさっき攻撃をしないと言ったばかりだからだ。
 魔王の右手には緑色の光が集まっており、見る人が見れば圧縮された魔力だというのがわかっただろう。


広範囲治癒エリアキュア


 魔王が右手を軽く振るうと広範囲に緑色の光が満ち、冒険者達の身体を包み込む。


「なんだ? 傷が」


 身体のそこら中に傷を作っていた冒険者達の体が緑の光が包み込むと時間が巻き戻されるように傷が修復されていった。


「骨折すら治るのか……」


 先ほどまで少し動かすだけで激痛がはしっていたフランクの左腕が今やなんの痛みもなく動かせるようになっていた。
 周りを見ると他の重軽傷を負っていた冒険者達も同じような感じだった。


「じゃ、ちょっと待ってね」


 魔王はそう告げると再び本を読もうとするが不意に視線を上に向ける。よく見ると周りのメイド達も上を見上げていた。
 自然、他の冒険者、アリオン、フランク、フォルトも視線を上に向けるとジャラジャラと大きな音を立てながら何かが降りてくるようだった。


「なんだあれ?」


 訝しげな表情を浮かべながらここに降りてくる物に警戒する。
 やがてだいぶ降りてきたためそれの姿形が明らかになり見え始めて来た。
 瞳に映るものは鎧兜だった。
 第二階層でみた安物の甲冑などでと違い明らかに高価な物だとわかる代物だ。
 その鎧全身を鎖でぐるぐる巻きにされ身動きがとれないようにしてこちらに降ろしているようだ。
 やがてドン!っという音が響くと共に真紅の鎧がフロアに降り立った。いや、降り立ったというのは間違いだ。
 真紅の鎧はゆっくりと片膝を付き命令を待つかのように頭を下げた。


「やぁ、レクレ! 待たしたね」


 鎧の肩に座るように片腕を鎖で覆った金髪の女性が魔王に向かいひらひらと手をふる。
 女性の鎖はどうやら鎧に巻きついている鎖の元のようだ。


「遅いです。ファス先生。冒険者さん達が待ってましたよ」
「いや〜着付けに時間がかかっちゃってね」


 そういうとファスと呼ばれた女性は気軽に真紅の鎧をたたいた。
 そんなファスを無視し魔王は興味深げに鎧を見ていた。


「そいつが最後の守護者か」


 アリオンが光剣ライトセイバーを両の手に構えると他の冒険者達も闘志を露わにしそれぞれの武器を構えた。


「ん? ああ違う。私はあくまで運搬役だ。戦うのはこれだ」


 ファスはそう言いと何かを唱え鎧に巻きつけていた鎖がジャランと音を立てながらファスの右手に巻きついた。
 それを確認し終わると彼女はスタスタと歩き王座の横に置かれている椅子に音を立て座る。


「それとこの階層のルールを説明するよ」


 ファスが座ると魔王が再びこちらに向かい話出した。


「このフロアでは即死しない限り死ぬことがない、以上だよ」


 フロア全体に魔法かけてるからよっぽどのことがないから死なないだろう。


「どういうことだ?」
「言葉通りさ」


 全員が疑問を浮かべる中、アリオンのみが顔を青くし魔王を見つめていた。


「ばかな! そんな大規模魔法をそんな簡単に!」
「えっそんなにやばい魔法だった?」


 アリオンの表情になにか危機感を覚えたのか後ろに控える金髪の男に降り返り魔王は訪ねた。


「まぁ、常識はずれの魔法ではありますね」
「そうだったんだ」


 何故か自分の魔法に衝撃を受けたようだった魔王だが軽く咳払いを動揺しながらも言葉をつづけた。


「んんっ! そういえば君たちはこの浮遊図書館での勝利条件をちゃんと見て来たの?」


 勝利条件?
 各階の守護者からの攻撃を凌ぎ階段を上がり最上階の守護者を倒す。これが条件のはずだ。


「それは五層に上がるための条件でしかないよ。まあ、いいや」


 なにか諦めたかのように魔王が言い放ち、指を軽く鳴らす。
 その音を合図にしたのか兜の隙間から青白い鬼火のような光が灯る。
 ゆっくりと音もなく立ち上がる鎧をアリオンは観察する。
 まず一番に目に付くのは右腕だ。そこに甲冑にあるような指はなくただ筒をつけたかのような物になっている。そして左手、とくに何もないが拳の部分だげがやたらと大きい。背中には黒い箱のような物を背負っているのが見え、それを隠すかのように漆黒のマントをそうびしていた。
 あきらかに何かの仕掛けが施されていると考え間違いないだろう


「じゃ、最終章だよ。早く勝利条件満たさないと全滅かもね」


 楽しげに魔王が告げると真紅の鎧が審判を下すかのように一歩踏み出してきた。


残り冒険者 54/1000

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