浮遊図書館の魔王様
第四十七話 ビリアラ秘策(自称)あります ③
光の本流が止み周辺を粉塵が舞い視界を遮っていた。
それと同時に幾つもの元は本であっただろう欠片が花びらのように宙に浮かぶ。
アリオンはニヤニヤと笑みを浮かべながらその光景を眺める。
勇者魔法は勇者だけが使用できる最強の破壊魔法だ。
見たことのない魔法であっても粉砕できるとアリオンは確信している。
「久々にたのしかったよ〜」
そのためすぐに関心をなくしフランク達冒険者のほうに振り返り楽しげに呟く。
すでにアリオンは立ち込める粉塵の奥にはおそらく破壊の後しかないだろうと考え興味を失っていた。
「おい、あれ……」
誰かが呟き、それを見た全員が息を呑んだ。
濛々と上がる粉塵の中から白い球体が現れたからだ。
球体はパラパラと崩れ幾つもの紙となり宙を旋回し始める。
「危なかった。死ぬかと思った」
崩れた球体の中からボロボロのメイド服を身に纏ったビリアラが姿を見せる。
「あり得ない!」
この戦闘が始まり初めてアリオンの顔から笑顔が消える。代わりに顔に張り付いているのは困惑だ。
「勇者魔法は現代の魔法で最強と言われる破壊魔法なんだよ⁉︎ なぜ服がボロボロになる程度で済む!」
アリオンがビリアラに対し尋ねる声はもはや悲鳴に近いものがあった。
それに対しビリアラは可愛らしく首を傾げる。
アリオンはビリアラを無視し、周りを確認するが変わった様子は見られない。
本棚が壊れそこいら中に紙が飛んでいるだけだ。
いや、破壊された量に比べ飛んでいる紙の量が少なすぎる。
「さっきの無差別の攻撃でわざと本棚を壊したのか!」
紙魔法は紙を使う魔法だ。ならば大量の紙を使い魔力を通わせれば先ほどより強力な防御を行うことができるだろう。
「単純、あなたの魔法より私の魔法が強かった」
その言葉に一瞬でアリオンの顔が紅潮し怒りに身体を震わせる。
頭の中が怒り一色で埋め尽くされたアリオンは瞬時に全身を魔法で強化、両の手に光剣を生成。石畳を砕き瞬く間にビリアラとの間合いをゼロにする。
常識を外れた速度にビリアラは全く反応できないのをアリオンは確認すると再び口元に笑みを浮かべる。
(そう、ボクは強い!勇者なんだから)
 
袈裟斬りにするように剣を振るう。
だが、ビリアラが反応せずとも魔法が反応した。ビリアラを切り裂く前に幾つもの紙が集まり盾と化す。
先ほどは軽く振るっただけで弾き飛ばした防御だ。恐れるに足らない。
判断は一瞬、だが念には念をいれ先程よりも魔力を込め確実に命を断つべく全力で斬撃を放つ。
だが、現実は再びアリオンを裏切る。
ギンっという音がアリオンの耳に届く。
音の発生源は紙が集まり作られた盾。盾が光剣弾き返したのだ。
アリオンの眼が驚愕で見開かれる。
拮抗するならまだわかる。だが、弾かれた。さらには剣を握った手には何か硬いものに当たったかのように痺れが走り、姿勢は全力で放ったために完全に崩れていた。
その姿をビリアラは瞳で捉えると瞬時に身を守っていた盾の形状を変化。
槍の形状に変化した紙を即射出する。
姿勢を崩したアリオンに槍が這いよるがアリオン光剣にさらに魔力を注ぎ込み大きさを変化させる。
長剣サイズだった光剣がアリオンをすっぽりと隠し切る程の大剣に変化し、防御の構えをとろうとするが先の防御力を思い出し正面から受けるのは危険と判断。
大剣をわずかに斜めに角度を付け受け流すように構えた。
瞬間、ビリアラの放った紙の槍が着弾。
魔力で構成されている光剣を削るが角度を付けていたため光剣の上を耳障りな音を立てながら滑るよう進みアリオンの後ろへ着弾。
「ぎゃぁぁぁぁぁ!」
後方から悲鳴と爆発音が聞こえたがアリオンは振り返らない。いや、振り返る余裕がなかった。
光剣を再び構え追撃を警戒するが当の彼女はただ悠然と立っているだけだった。
「さっきより強くなってない……?」
魔法を削る攻撃力、光剣、光の壁を防ぐ防御力、先程まっ戦っていた彼女にはなかったものだ。
つまり、手を抜かれていたのだ。
「なめてるね」
アリオンが感じた感情は憤怒。
勇者になってからは諦めたような顔をした奴か死に物狂いになりかかってきた奴しかいない。
このようにあからさまに手を抜かれたのは初めての経験だった。
(必ず殺す)
殺意を漲らせながらアリオンは心に誓う。
「手を抜いてごめんなさい」
少しも悪びれた様子もなくビリアラは謝罪する。
「勇者相手に五冊程度の本では無理があった。だから」
再びビリアラの周囲に紙が舞う。ただ先程とは違い数が増え更には込めらている魔力が跳ね上がっていた。
すでにビリアラの周囲は白く染まる程の紙が展開されている。
「この予備図書館の全てであなた方を潰す」
ビリアラの宣言とともに壁に備え付けられていた本棚が爆ぜ、フロアすらを白く染め上げる。
「使用する本は約五万冊」
何かを指揮するように右手を上に掲げる姿は一面が白で埋め尽くされたこの空間では幻想的に見えた。
そして彼女の頭上には数え切れないばかりの紙によって形成された武器が浮遊してる。
そのあまりの数に冒険者達がそして勇者であるアリオンすら息を呑んだ。
「死なないように加減はします。ご検討を」
軽く礼をするとビリアラは掲げていた右手を、
「全員迎撃しろ!」
フランクの叫び声を聞きながら振り下ろした。
次の瞬間には天井が白く輝いた。
紙で作られた剣が、槍が、斧が、槌が一斉に頭上から降り注いだのだ。
それらの武器はアリオンのみならず後ろで構えていた冒険者達をも飲み込んだ。
「炎だ!炎で焼き払え!」
「盾持ってるやつは魔法使いを守れ!」
あちらこちらで怒号が響く。
魔法使いは炎の魔法を宙に放ち数本の武器を燃やし尽くすがあまりにも数が多く焼け石に水の状態だ。
盾を持つものは頭上に構え、他のものを守りやり過ごそうとしていた。
そして一番被害を受けているのは弓使いと盗賊という軽装備で迎撃手段がないもの達だ。
盗賊は点-単体攻撃に対する攻撃は持ち前の敏捷性で回避することができるがビリアラが放った攻撃は面-範囲攻撃だった。
そのためある程度は回避できても徐々に被弾し、最後は足を貫かれ動けなくなるというものが続出した。
弓使い達はさらに悲惨だった。
従来、弓とは上から狙うことが多い。だがビリアラが放った紙魔法により作られた武器は上から攻撃を仕掛けてきており、飛んで来るものを迎撃するというのは神業に等しいのだ。盗賊のような敏捷性もない弓使い達は瞬く間に餌食となったのだった。
「ああああ!」
次々と降り注ぎ味方を行動不能にする攻撃の中、雄叫びを上げながらアリオンは襲い来る紙の武器を片っ端から迎撃し進み続ける。
先程よりもさらに魔力を込め巨大化さした左右の光剣を縦横無尽に減り回し着実に前進していく。
その姿を確認したビリアラはアリオンに攻撃を集中さすべく周囲への攻撃を中断。より魔力を込め、大量の紙を使った武器を射出し、進行を止めようとした。
「光の壁」
魔力を上乗せした光の波動を放ち武器を止めようとするが拮抗。しかし、アリオンは止まらず前進。
光の壁と拮抗し停止している武器を光剣で横から殴りつけるように斬撃を放つ。
均衡が破れ再び光の壁が進みだすがビリアラは巨大な棍を生成。魔力を注ぎ込み 光の壁とアリオンを上から叩き潰すように振り下ろした。
棍の振り下ろしにより 光の壁は霧散。周囲には砕けた石畳による土煙が舞い視界を遮った。
しかし、アリオンは振り下ろされた棍を小さく横に動くこで回避、すぐさまビリアラにむかい疾走を再開する。
一方のビリアラは自分が巻き起こした土煙のせいで完全にアリオンを見失っていた。
そのためわずかに見える影に対し武器を射出するのを繰り返すしか方法がなかった。
「土煙越しに魔法を放て! 無事な弓兵は狙いを付けずに数で撃て!」
フランクの号令で態勢を立てなおした冒険者達が砂煙越しに魔法や弓を雨霰のように狙いを付けずに放ち始めたのだ。
「……っ!」
数発の炎の魔法がビリアラの髪を焦がし周りには嫌な匂いが立ち込め、同時に弓がそこいら中に刺さる。
ビリアラはすぐさま前面に身体を完全に隠す程の大きな盾を展開、土煙で敵は見えないが数に物を言わせ中断していた冒険者達への攻撃を再開する。
再び悲鳴が響き渡る中、盾を作ったことにより生じたビリアラの死角からアリオンが鬼のような形相で斬りかかる。
ぞくりと寒気を感じたビリアラが一歩怯えながら下がる。
先程までビリアラが立っていた場所を盾を軽々と斬り裂き光刃が閃いた。
下がらなければ斬り殺されていた事実にビリアラは震える。
眼前には紙魔法の武器が至る所に刺さったアリオンが立っていた。
本能がこの男は危険と叫んでいた。
その本能に逆らわずビリアラはアリオンを排除するべく手を閃かす。すぐさま紙魔法により剣を生成し斬り捨てようとする。
ビュウッッン!
空気を切り裂く音が響き、ビリアラの手は空を斬る。
「なっ」
ビリアラの手に剣は生成されず、目の前には光剣を振り抜いたアリオンの姿があった。
「浅かった」
アリオンのつぶやきと同時にビリアラの着ていたメイド服一筋の線が入りそこから真っ二つに裂けた。
「えっ、え」
ビリアラが困惑した声を出している間にメイド服はただの布切れとなり平らな胸が露わになりかけた。
顔を真っ赤にしながら胸元を隠しアリオンを睨みつける。
「どうやって?」
光剣を首元に突きつけられながらもビリアラは疑問を吐き出す。
紙魔法は確かに発動し、紙が集まっていたのをビリアラは確実に感じていた。
だが実際には剣は作成されずアリオンの光刃だけがビリアラのメイド服のみを切り裂いたのだ。
「紙魔法が発動して剣が作られる前に魔法の核を斬った」
なんてことはないと軽々とアリオンは告げる。
そんか彼をビリアラは感嘆と諦めを浮かべた表情で見つめる。
「なかなか楽しかった。久しぶりに本気だしたし!」
アリオンは子供のように笑う。
そんなアリオンを見てビリアラも小さく笑う。
「今回は私の負け、でも」
ビリアラの下に魔法陣が展開され始める。
アリオンは驚き後ろに下がる。ビリアラは楽しそうに笑い、階段の横の砂時計を指差す。
砂時計の砂は全て落ちきっており、あれだけの出来事があったというのに 傷一つついていなかった。
「次は……」
 光が強くなりアリオンは眼を開けていられなくなり目を閉じる。
再び瞳を開いた時にはビリアラの姿はなかった。
『うおおおお! 勇者アリオン!』
ビリアラがいなくなったことにより後ろから冒険者達の歓声が上がりそのあまりの声の大きさにフロアを震わせた。
アリオンはそれに振り返らない。
ただ、彼女の言った言葉だけがアリオンの耳に残っていた
「次は泣かす」と
残り冒険者 158/1000
それと同時に幾つもの元は本であっただろう欠片が花びらのように宙に浮かぶ。
アリオンはニヤニヤと笑みを浮かべながらその光景を眺める。
勇者魔法は勇者だけが使用できる最強の破壊魔法だ。
見たことのない魔法であっても粉砕できるとアリオンは確信している。
「久々にたのしかったよ〜」
そのためすぐに関心をなくしフランク達冒険者のほうに振り返り楽しげに呟く。
すでにアリオンは立ち込める粉塵の奥にはおそらく破壊の後しかないだろうと考え興味を失っていた。
「おい、あれ……」
誰かが呟き、それを見た全員が息を呑んだ。
濛々と上がる粉塵の中から白い球体が現れたからだ。
球体はパラパラと崩れ幾つもの紙となり宙を旋回し始める。
「危なかった。死ぬかと思った」
崩れた球体の中からボロボロのメイド服を身に纏ったビリアラが姿を見せる。
「あり得ない!」
この戦闘が始まり初めてアリオンの顔から笑顔が消える。代わりに顔に張り付いているのは困惑だ。
「勇者魔法は現代の魔法で最強と言われる破壊魔法なんだよ⁉︎ なぜ服がボロボロになる程度で済む!」
アリオンがビリアラに対し尋ねる声はもはや悲鳴に近いものがあった。
それに対しビリアラは可愛らしく首を傾げる。
アリオンはビリアラを無視し、周りを確認するが変わった様子は見られない。
本棚が壊れそこいら中に紙が飛んでいるだけだ。
いや、破壊された量に比べ飛んでいる紙の量が少なすぎる。
「さっきの無差別の攻撃でわざと本棚を壊したのか!」
紙魔法は紙を使う魔法だ。ならば大量の紙を使い魔力を通わせれば先ほどより強力な防御を行うことができるだろう。
「単純、あなたの魔法より私の魔法が強かった」
その言葉に一瞬でアリオンの顔が紅潮し怒りに身体を震わせる。
頭の中が怒り一色で埋め尽くされたアリオンは瞬時に全身を魔法で強化、両の手に光剣を生成。石畳を砕き瞬く間にビリアラとの間合いをゼロにする。
常識を外れた速度にビリアラは全く反応できないのをアリオンは確認すると再び口元に笑みを浮かべる。
(そう、ボクは強い!勇者なんだから)
 
袈裟斬りにするように剣を振るう。
だが、ビリアラが反応せずとも魔法が反応した。ビリアラを切り裂く前に幾つもの紙が集まり盾と化す。
先ほどは軽く振るっただけで弾き飛ばした防御だ。恐れるに足らない。
判断は一瞬、だが念には念をいれ先程よりも魔力を込め確実に命を断つべく全力で斬撃を放つ。
だが、現実は再びアリオンを裏切る。
ギンっという音がアリオンの耳に届く。
音の発生源は紙が集まり作られた盾。盾が光剣弾き返したのだ。
アリオンの眼が驚愕で見開かれる。
拮抗するならまだわかる。だが、弾かれた。さらには剣を握った手には何か硬いものに当たったかのように痺れが走り、姿勢は全力で放ったために完全に崩れていた。
その姿をビリアラは瞳で捉えると瞬時に身を守っていた盾の形状を変化。
槍の形状に変化した紙を即射出する。
姿勢を崩したアリオンに槍が這いよるがアリオン光剣にさらに魔力を注ぎ込み大きさを変化させる。
長剣サイズだった光剣がアリオンをすっぽりと隠し切る程の大剣に変化し、防御の構えをとろうとするが先の防御力を思い出し正面から受けるのは危険と判断。
大剣をわずかに斜めに角度を付け受け流すように構えた。
瞬間、ビリアラの放った紙の槍が着弾。
魔力で構成されている光剣を削るが角度を付けていたため光剣の上を耳障りな音を立てながら滑るよう進みアリオンの後ろへ着弾。
「ぎゃぁぁぁぁぁ!」
後方から悲鳴と爆発音が聞こえたがアリオンは振り返らない。いや、振り返る余裕がなかった。
光剣を再び構え追撃を警戒するが当の彼女はただ悠然と立っているだけだった。
「さっきより強くなってない……?」
魔法を削る攻撃力、光剣、光の壁を防ぐ防御力、先程まっ戦っていた彼女にはなかったものだ。
つまり、手を抜かれていたのだ。
「なめてるね」
アリオンが感じた感情は憤怒。
勇者になってからは諦めたような顔をした奴か死に物狂いになりかかってきた奴しかいない。
このようにあからさまに手を抜かれたのは初めての経験だった。
(必ず殺す)
殺意を漲らせながらアリオンは心に誓う。
「手を抜いてごめんなさい」
少しも悪びれた様子もなくビリアラは謝罪する。
「勇者相手に五冊程度の本では無理があった。だから」
再びビリアラの周囲に紙が舞う。ただ先程とは違い数が増え更には込めらている魔力が跳ね上がっていた。
すでにビリアラの周囲は白く染まる程の紙が展開されている。
「この予備図書館の全てであなた方を潰す」
ビリアラの宣言とともに壁に備え付けられていた本棚が爆ぜ、フロアすらを白く染め上げる。
「使用する本は約五万冊」
何かを指揮するように右手を上に掲げる姿は一面が白で埋め尽くされたこの空間では幻想的に見えた。
そして彼女の頭上には数え切れないばかりの紙によって形成された武器が浮遊してる。
そのあまりの数に冒険者達がそして勇者であるアリオンすら息を呑んだ。
「死なないように加減はします。ご検討を」
軽く礼をするとビリアラは掲げていた右手を、
「全員迎撃しろ!」
フランクの叫び声を聞きながら振り下ろした。
次の瞬間には天井が白く輝いた。
紙で作られた剣が、槍が、斧が、槌が一斉に頭上から降り注いだのだ。
それらの武器はアリオンのみならず後ろで構えていた冒険者達をも飲み込んだ。
「炎だ!炎で焼き払え!」
「盾持ってるやつは魔法使いを守れ!」
あちらこちらで怒号が響く。
魔法使いは炎の魔法を宙に放ち数本の武器を燃やし尽くすがあまりにも数が多く焼け石に水の状態だ。
盾を持つものは頭上に構え、他のものを守りやり過ごそうとしていた。
そして一番被害を受けているのは弓使いと盗賊という軽装備で迎撃手段がないもの達だ。
盗賊は点-単体攻撃に対する攻撃は持ち前の敏捷性で回避することができるがビリアラが放った攻撃は面-範囲攻撃だった。
そのためある程度は回避できても徐々に被弾し、最後は足を貫かれ動けなくなるというものが続出した。
弓使い達はさらに悲惨だった。
従来、弓とは上から狙うことが多い。だがビリアラが放った紙魔法により作られた武器は上から攻撃を仕掛けてきており、飛んで来るものを迎撃するというのは神業に等しいのだ。盗賊のような敏捷性もない弓使い達は瞬く間に餌食となったのだった。
「ああああ!」
次々と降り注ぎ味方を行動不能にする攻撃の中、雄叫びを上げながらアリオンは襲い来る紙の武器を片っ端から迎撃し進み続ける。
先程よりもさらに魔力を込め巨大化さした左右の光剣を縦横無尽に減り回し着実に前進していく。
その姿を確認したビリアラはアリオンに攻撃を集中さすべく周囲への攻撃を中断。より魔力を込め、大量の紙を使った武器を射出し、進行を止めようとした。
「光の壁」
魔力を上乗せした光の波動を放ち武器を止めようとするが拮抗。しかし、アリオンは止まらず前進。
光の壁と拮抗し停止している武器を光剣で横から殴りつけるように斬撃を放つ。
均衡が破れ再び光の壁が進みだすがビリアラは巨大な棍を生成。魔力を注ぎ込み 光の壁とアリオンを上から叩き潰すように振り下ろした。
棍の振り下ろしにより 光の壁は霧散。周囲には砕けた石畳による土煙が舞い視界を遮った。
しかし、アリオンは振り下ろされた棍を小さく横に動くこで回避、すぐさまビリアラにむかい疾走を再開する。
一方のビリアラは自分が巻き起こした土煙のせいで完全にアリオンを見失っていた。
そのためわずかに見える影に対し武器を射出するのを繰り返すしか方法がなかった。
「土煙越しに魔法を放て! 無事な弓兵は狙いを付けずに数で撃て!」
フランクの号令で態勢を立てなおした冒険者達が砂煙越しに魔法や弓を雨霰のように狙いを付けずに放ち始めたのだ。
「……っ!」
数発の炎の魔法がビリアラの髪を焦がし周りには嫌な匂いが立ち込め、同時に弓がそこいら中に刺さる。
ビリアラはすぐさま前面に身体を完全に隠す程の大きな盾を展開、土煙で敵は見えないが数に物を言わせ中断していた冒険者達への攻撃を再開する。
再び悲鳴が響き渡る中、盾を作ったことにより生じたビリアラの死角からアリオンが鬼のような形相で斬りかかる。
ぞくりと寒気を感じたビリアラが一歩怯えながら下がる。
先程までビリアラが立っていた場所を盾を軽々と斬り裂き光刃が閃いた。
下がらなければ斬り殺されていた事実にビリアラは震える。
眼前には紙魔法の武器が至る所に刺さったアリオンが立っていた。
本能がこの男は危険と叫んでいた。
その本能に逆らわずビリアラはアリオンを排除するべく手を閃かす。すぐさま紙魔法により剣を生成し斬り捨てようとする。
ビュウッッン!
空気を切り裂く音が響き、ビリアラの手は空を斬る。
「なっ」
ビリアラの手に剣は生成されず、目の前には光剣を振り抜いたアリオンの姿があった。
「浅かった」
アリオンのつぶやきと同時にビリアラの着ていたメイド服一筋の線が入りそこから真っ二つに裂けた。
「えっ、え」
ビリアラが困惑した声を出している間にメイド服はただの布切れとなり平らな胸が露わになりかけた。
顔を真っ赤にしながら胸元を隠しアリオンを睨みつける。
「どうやって?」
光剣を首元に突きつけられながらもビリアラは疑問を吐き出す。
紙魔法は確かに発動し、紙が集まっていたのをビリアラは確実に感じていた。
だが実際には剣は作成されずアリオンの光刃だけがビリアラのメイド服のみを切り裂いたのだ。
「紙魔法が発動して剣が作られる前に魔法の核を斬った」
なんてことはないと軽々とアリオンは告げる。
そんか彼をビリアラは感嘆と諦めを浮かべた表情で見つめる。
「なかなか楽しかった。久しぶりに本気だしたし!」
アリオンは子供のように笑う。
そんなアリオンを見てビリアラも小さく笑う。
「今回は私の負け、でも」
ビリアラの下に魔法陣が展開され始める。
アリオンは驚き後ろに下がる。ビリアラは楽しそうに笑い、階段の横の砂時計を指差す。
砂時計の砂は全て落ちきっており、あれだけの出来事があったというのに 傷一つついていなかった。
「次は……」
 光が強くなりアリオンは眼を開けていられなくなり目を閉じる。
再び瞳を開いた時にはビリアラの姿はなかった。
『うおおおお! 勇者アリオン!』
ビリアラがいなくなったことにより後ろから冒険者達の歓声が上がりそのあまりの声の大きさにフロアを震わせた。
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