浮遊図書館の魔王様
第四十六話 ビリアラ秘策(自称)あります ②
少し紙魔法とビリアラの話をしよう。
紙魔法。
それはレクレが本収集を作る段階で作った失敗作の魔法である。
当初のレクレの目的は本を自在に操る程度の能力が欲しかっただけだ。
その理由は自室に本が多すぎてどこにあるかわからなくなったためだった。
色々と思考錯誤したがこの魔法はレクレにとっては失敗だった。
その理由の一つにこの魔法は紙しか自在に操ることしかできず本を自在なは動かすことができなかったのである。
そのためレクレにとっての紙魔法という魔法はただの紙くずを魔力で操りゴミ箱に放るためといいたただの生活魔法でしかなかったのだ。
しかし、ビリアラはこの紙魔法をレクレが使ったのを初めて見た時とてつもない感動に襲われたのだ。
ビリアラは四姉妹の三女である。
長女のレキは掃除と剣を使った戦いが得意であり、次女のアルシャットは肉弾戦が得意だ。末っ子のマーテは戦いは苦手だが家事全般、特に料理のスペシャリストと言えるだろう。
そしてビリアラは自分には才能がないことがよくわかっていた。好きなのはレクレと同じ本を読むことだけだ。ただ口下手であるためあまり人と感想を言い合ったりするのは苦手だ。
しいて才能として挙げるなら想像することがビリアラの唯一と言える特技だ。
本を読み、想像する。
そしてその才能はレクレに教えてもらった紙魔法とは歯車が合うかのようにビリアラと相性がぴったりだったのだ。
想像が創造に変わり、それだけで紙はビリアラの唯一の武器になり防具になったのだから。
ビリアラが紙魔法を纏い一歩前に踏み出す。
しかし、冒険者達は前に進むことができない。
先の盗賊とビリアラの戦闘とは呼べない力の差に恐怖しているからだ。
「ボクがいきますよー」
そんな誰もが動けない中、ヘラヘラと笑いながらアリオンが一歩前に踏み出す。
それを誰もが期待をこもった眼で見つめている。
勇者なら、いや、アリオンなら犠牲を出さずになんとかできるのではと。
アリオンは笑いながらビリアラとの距離を詰める。何も持たず、ただ笑い歩きながらゆっくりと詰める。
ビリアラの周りには相変わらず紙魔法紙で攻防一体の武器と化した紙が旋回しておりアリオンが近づいてくるのを警戒をしているようだった。
その警戒範囲に入る一歩手前でアリオンはニコニコと笑ながら立ち止まる。
「フランクさん、勇者殿を援護しなくていいのですか?」
「なんだ、惚れたのか?」
「茶化さないでください」
フォルトは不安そうな顔でフランクを見上げてくる。
それに対しフランクは肩をすくめるだけだった。
彼女の不安はもっともだ。ただ、それはあくまで常人だった場合だ。
「いらんだろ。あれには」
「無責任では? 彼は武器を何も持っていないんですよ?」
確かに戦場でなにも持たずに戦いに出るのはバカのすることだろう。フランクだってそんなことしたくない。というかしたらすぐに死ぬ自信が彼にはある。
「まぁ、見とけ。そしたらわかる」
フランクは勇者アリオンを指差す。
その指の先には相変わらず緊張感の欠片もなくヘラヘラ笑う勇者の姿があった。
「勇者ってのがどれくらい規格外かな」
アリオンが動く。ただそれは決して早くない。むしろ遅いとも言える。
「右手に剣を」
ゆっくりとした動きで右手を横に伸ばす。
「左手に剣を」
右手と同じように左手も横に伸ばし何かを掴むような仕草を行い、体を回転。
パァンという音がなると同時にビリアラの周囲の紙の一部分が弾け飛ばされ、先程まで何も握られていなかったアリオンの両手には光の塊が握られていた。
「勇者魔法一番! 光剣」
アリオンが静かに告げるとともにビリアラの瞳に驚きの色が混じり続き警戒の色に染まる
旋回していた紙が止まり、一瞬で形を変える。
作られた形状は剣。それも一本や二本ではなく二十近くの紙の剣が宙に浮かぶ。
「刺す」
ビリアラが短く命令。
紙の剣は命令を遂行すべくアリオンに向かい驚異的な速度で迫る。
しかし、アリオンはそれらを容易く捌く。
ひたすらに左右の光剣振るい片っ端から叩き落とす。
ビリアラもそれで仕留めれると思ってなかったのか紙を一枚だけ持ち横薙ぎに払うような動きをする。
何も持っていないのだから空を切ると思われていたその動きは次の瞬間アリオンを驚愕させる。
アリオンが叩き落とした紙の剣が瞬時に紙に戻りビリアラの持っている一枚の紙に幾つも合わさり強大な棒と化す。
一本の光剣では受けきれないと判断したアリオンは両の剣で棒を受け止める、
紙と魔法がぶつかったせいか派手な音がなることはなく代わりにフロアが軽く揺れる。
ギチギチとどちらも力を入れているためどちらも動けず膠着状態が続くがビリアラが先に力を抜き、棒が紙へと戻され宙をヒラヒラと舞う。
急に力が抜かれたためアリオンが前のめりになり姿勢を崩した瞬間、舞っていた紙が小さな針と化しアリオンに向かい雨のように降り注ぎ、殺到する。
「やば!」
アリオンの脳内に危険信号が鳴り響く。
態勢を崩された所に先程までより広い範囲攻撃が放たれたのだ。喰らえば無傷でいることは不可能だろう。
「当たればの話だけど」
ニヤリと笑い光剣を手放す。消える光剣など気にもかけずに飛んでくる針の雨に対し両手を翳す。
「勇者魔法三番! 光の壁!」
アリオンがかざした両手から光の魔力を放ち針の雨を押し返す。
更に光の魔力は威力を落とさずそのままゆっくりとビリアラを飲み込もうとする。
「む」
ビリアラは小さく呻くと操る紙を自身の周囲に集め、高速で旋回させる。
「無駄だよ。さっきの光剣で削れる防御なんかじゃこの光の壁はとめられない」
アリオンの言葉を無視しビリアラは紙を高速旋回をさしながら剣状の紙を射出するが、回転さしながら攻撃しているためかアリオン以外の所にも飛んでいき至る所、本棚に、石畳に破壊の爪痕を残す。
アリオンが勝利を確信する笑みを浮かべ光の壁がビリアラを飲み込んだ。
紙魔法。
それはレクレが本収集を作る段階で作った失敗作の魔法である。
当初のレクレの目的は本を自在に操る程度の能力が欲しかっただけだ。
その理由は自室に本が多すぎてどこにあるかわからなくなったためだった。
色々と思考錯誤したがこの魔法はレクレにとっては失敗だった。
その理由の一つにこの魔法は紙しか自在に操ることしかできず本を自在なは動かすことができなかったのである。
そのためレクレにとっての紙魔法という魔法はただの紙くずを魔力で操りゴミ箱に放るためといいたただの生活魔法でしかなかったのだ。
しかし、ビリアラはこの紙魔法をレクレが使ったのを初めて見た時とてつもない感動に襲われたのだ。
ビリアラは四姉妹の三女である。
長女のレキは掃除と剣を使った戦いが得意であり、次女のアルシャットは肉弾戦が得意だ。末っ子のマーテは戦いは苦手だが家事全般、特に料理のスペシャリストと言えるだろう。
そしてビリアラは自分には才能がないことがよくわかっていた。好きなのはレクレと同じ本を読むことだけだ。ただ口下手であるためあまり人と感想を言い合ったりするのは苦手だ。
しいて才能として挙げるなら想像することがビリアラの唯一と言える特技だ。
本を読み、想像する。
そしてその才能はレクレに教えてもらった紙魔法とは歯車が合うかのようにビリアラと相性がぴったりだったのだ。
想像が創造に変わり、それだけで紙はビリアラの唯一の武器になり防具になったのだから。
ビリアラが紙魔法を纏い一歩前に踏み出す。
しかし、冒険者達は前に進むことができない。
先の盗賊とビリアラの戦闘とは呼べない力の差に恐怖しているからだ。
「ボクがいきますよー」
そんな誰もが動けない中、ヘラヘラと笑いながらアリオンが一歩前に踏み出す。
それを誰もが期待をこもった眼で見つめている。
勇者なら、いや、アリオンなら犠牲を出さずになんとかできるのではと。
アリオンは笑いながらビリアラとの距離を詰める。何も持たず、ただ笑い歩きながらゆっくりと詰める。
ビリアラの周りには相変わらず紙魔法紙で攻防一体の武器と化した紙が旋回しておりアリオンが近づいてくるのを警戒をしているようだった。
その警戒範囲に入る一歩手前でアリオンはニコニコと笑ながら立ち止まる。
「フランクさん、勇者殿を援護しなくていいのですか?」
「なんだ、惚れたのか?」
「茶化さないでください」
フォルトは不安そうな顔でフランクを見上げてくる。
それに対しフランクは肩をすくめるだけだった。
彼女の不安はもっともだ。ただ、それはあくまで常人だった場合だ。
「いらんだろ。あれには」
「無責任では? 彼は武器を何も持っていないんですよ?」
確かに戦場でなにも持たずに戦いに出るのはバカのすることだろう。フランクだってそんなことしたくない。というかしたらすぐに死ぬ自信が彼にはある。
「まぁ、見とけ。そしたらわかる」
フランクは勇者アリオンを指差す。
その指の先には相変わらず緊張感の欠片もなくヘラヘラ笑う勇者の姿があった。
「勇者ってのがどれくらい規格外かな」
アリオンが動く。ただそれは決して早くない。むしろ遅いとも言える。
「右手に剣を」
ゆっくりとした動きで右手を横に伸ばす。
「左手に剣を」
右手と同じように左手も横に伸ばし何かを掴むような仕草を行い、体を回転。
パァンという音がなると同時にビリアラの周囲の紙の一部分が弾け飛ばされ、先程まで何も握られていなかったアリオンの両手には光の塊が握られていた。
「勇者魔法一番! 光剣」
アリオンが静かに告げるとともにビリアラの瞳に驚きの色が混じり続き警戒の色に染まる
旋回していた紙が止まり、一瞬で形を変える。
作られた形状は剣。それも一本や二本ではなく二十近くの紙の剣が宙に浮かぶ。
「刺す」
ビリアラが短く命令。
紙の剣は命令を遂行すべくアリオンに向かい驚異的な速度で迫る。
しかし、アリオンはそれらを容易く捌く。
ひたすらに左右の光剣振るい片っ端から叩き落とす。
ビリアラもそれで仕留めれると思ってなかったのか紙を一枚だけ持ち横薙ぎに払うような動きをする。
何も持っていないのだから空を切ると思われていたその動きは次の瞬間アリオンを驚愕させる。
アリオンが叩き落とした紙の剣が瞬時に紙に戻りビリアラの持っている一枚の紙に幾つも合わさり強大な棒と化す。
一本の光剣では受けきれないと判断したアリオンは両の剣で棒を受け止める、
紙と魔法がぶつかったせいか派手な音がなることはなく代わりにフロアが軽く揺れる。
ギチギチとどちらも力を入れているためどちらも動けず膠着状態が続くがビリアラが先に力を抜き、棒が紙へと戻され宙をヒラヒラと舞う。
急に力が抜かれたためアリオンが前のめりになり姿勢を崩した瞬間、舞っていた紙が小さな針と化しアリオンに向かい雨のように降り注ぎ、殺到する。
「やば!」
アリオンの脳内に危険信号が鳴り響く。
態勢を崩された所に先程までより広い範囲攻撃が放たれたのだ。喰らえば無傷でいることは不可能だろう。
「当たればの話だけど」
ニヤリと笑い光剣を手放す。消える光剣など気にもかけずに飛んでくる針の雨に対し両手を翳す。
「勇者魔法三番! 光の壁!」
アリオンがかざした両手から光の魔力を放ち針の雨を押し返す。
更に光の魔力は威力を落とさずそのままゆっくりとビリアラを飲み込もうとする。
「む」
ビリアラは小さく呻くと操る紙を自身の周囲に集め、高速で旋回させる。
「無駄だよ。さっきの光剣で削れる防御なんかじゃこの光の壁はとめられない」
アリオンの言葉を無視しビリアラは紙を高速旋回をさしながら剣状の紙を射出するが、回転さしながら攻撃しているためかアリオン以外の所にも飛んでいき至る所、本棚に、石畳に破壊の爪痕を残す。
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