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浮遊図書館の魔王様

るーるー

第四十一話 第二階層 アル張り切りました①

「ちくしょう、なんてダンジョンなんだ」


 落ちていった仲間を見たフランクは吐き捨てるように呟いた。
 まっするぅ革命団という貴重な爽やか筋肉を失ってしまった。
 罠自体は子供の遊びのような物の延長だ。ただ、発動するタイミングがえげつないのだ。


「さっきの回想だけで二百人近く脱落したみたいね」
「ああ、いくつかのパーティーは壊滅的だったからな」


 唯一の救いは死者が見当たらないということくらいか。落とし穴にはまった奴らどうかわからないが。


「だが、相手が子供と侮ったのも事実だ。これから先はより一層気を引き締めていくぞ」


 フランクの言葉に周りの冒険者達が頷く。
 ぞろぞろといった様子で周りを警戒しながら階段を上がっていく。やがて再び第一階層でも見たような大きな扉が見えた。
 全員に緊張が走る。今度はどんなトラップが仕掛けられているのかと。


「どうだ?」


 扉にトラップがないかを確認している盗賊にフランクは尋ねる。盗賊は静かに首をふりトラップがないことを伝えてきた。


「よし、一階層のように扉を開けたら落とし穴というのはたまらないからな。ゆっくりと慎重に開けるぞ」


 フランクの指示に盗賊が頷き、慎重に扉を押し開ける。
 扉を開け終わると床が落とし穴じゃないかどうかを確認し、なにもないことを確認し終わると合図をフランクに送る。
 その合図を受け取るとフランクを先頭に冒険者達がゆっくりと用心した様子で第二階層に入っていく。


「なんだこりゃ?」


 フロアに入り警戒していたフランクであるが目の前に置かれている物に怪訝な表情を浮かべる。
 フランクが見たフロアには埋め尽くす程の甲冑が並べられているのだ。


「こんにちはぁぁぁぁ!」


 大きな掛け声を上げながら影がフランクの前に大きな音を立てて舞い降りて来た。
 フランクはすぐさま盾を構え落ちてきた影を注視する。
 影ゆらりと立ち上がるとフランクに視線を合わせニヤリと笑う。


「第二階層担当アル! ぶっとばすぞぉぉぉぉ!」


 ニコニコと笑いながら肩を回す影ーアル。その姿は元気がいっぱいでその目はすでにやる気満々である。
 その両手、両足には磨かれ鏡のような美しさをだす白銀の手甲、足甲を装備していた。
 いきなり現れたアルにフランクは警戒の視線を送る。


「このフロアはトラップなしの殴り合いだよ!」


 ガン!と両の手甲を合わせあるは好戦的な笑みが一段と深くなった。それに呼応するように手甲に嵌め込まれている青い宝玉も薄っすらと光る。
 フランクは剣を抜きいつでも斬り掛かれるように構えをとる


「一人でこの人数とやるきか?」


 周辺を警戒しつつ答えが返ってこないと思いながらもアルに尋ねる。


「いやぁ、オレとしては一人でやってみたいけど流石にむりだよ」


 頭をかきながら残念そうに言う。
 その言葉にフランクは困惑したような表情になる。
 数では完全にこちらが多いのにアルには余裕があるように見える。
 それが不気味だ。


「だから、これ使うのさ!」


 アルが芝居かかったように両手を広げると、ガシャンという音が広間に流れる。
 その音の鳴ったほうを見るとフロアに飾られていた甲冑達がカタカタと震え動き始める。


「な⁉︎」


 フランク達が驚愕の声を上げる中、甲冑達は動きアルの後ろに並び始める。


「こっちはオレを含めて丁度百人!」


 心底楽しそうにアルは甲冑達を振り返る。


「それに対してあなた達は七百人!」


 そう語りながらフランク達を指差す。冒険者達は気圧されたかのように一歩後ろに下がった。


「数ではあなた達が勝ってる。さて……」


 アルはぺろっと舌なめずりをした。その瞳には隠しきれない好戦的な光が浮かべておる、ポケットから砂時計を取り出し床に置く。


「殴り合いしようか!」


 アルの戦闘開始宣言にその場にいる人全員の頭の中でゴングが鳴り響いた。

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