浮遊図書館の魔王様

るーるー

第三十一話 捕まってました

「すいませーん」


 薄暗い中、わたしは大きな声を出す。
 ただ、だれも反応はしない。
 わたしがいるのは小さな個室だ。箱の上にシーツを敷いただけの簡易なベッド。部屋の隅には異臭のする小さなあな。周りは薄汚れており壁を触ると手が汚れた。


「すいませーん」


 わたしはもう何度目かわからない位の大きな声を出すが声は反響するだけで誰かがくる気配は全くない。
 いや、人の気配はするんだけど、


「うるせぇぞ! 新入り! ぶっ殺されてぇのか⁉︎」


 わたしのいる小部屋と通路を挟んだ向こう側の鉄格子から子供が見たら泣き出しちゃぃそうな形相をしたおっさんが怒声を上げる。


「はぁ〜」


 わたしは盛大にため息を付くと自分の目の前にあるいかにも頑丈そうな鉄格子を握り、


「どおしてこぉなぁっぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 絶叫した。


 冷静に少し考えてみよう。
 わかっている状況を整理しないと助かるものも助からない。
 まずここは牢屋である。周りにもいかにも目つきの悪い人達がいるし鉄格子だし間違いはない。
 次にこの鉄格子というか牢屋。
 なんか魔力が集まらない物質みたいだ。さっきから魔法を使おうとしてるけど全く使えない。


「一番の問題はここが何処かってことなんだけど」


 ここがファンガルム皇国ならばまだなんとかなりそうなきがするけどもし、国境越えて他国ならばどうしようもない。


「すいませーん」
「うるせぇっていってりだろが! 新入り」
「ここどこです?」
「人の話きけよ!」
「え?」
「え? じゃねぇよ! ……ファンガルムの刑務所だよ」


 あら、あっさりと教えてくれた。
 なかなか素直なおっさんだ。しかし、ファンガルムでよかった。
 だとすると、


「なんでわたし刑務所にいるんだろ?」


 確かレキに叩き落とされたところまで記憶はあるんだけど。
 でも体が無傷なところを見ると落ちた時にはまだ結界があったみたいだけど、この牢屋に放り込まれた時に解けたのかな。


「おっさん、わたしなんでわたしここにいるの?」
「知るわけねぇだろが」


 ですよねぇ。


「ああ、でもお前が放り込まれる前にでかい地震があったな」


 地震か。それ、わたしが落ちた時の衝撃かな。
 被害とかがなかったらいいんだけどここじゃわからないし。とりあえず外にでないとな。


「どうやってでるかな」


 腕を組み考えてみるがいまいち名案が浮かばない。
 とりあえず魔法が使えないのが痛い。
 手のひらに魔力を集めようにもうまく集まらない。
 魔力は出ているのはわかるんだけどな〜。


「う〜ん」


 魔力はでてる。体の中に魔力があるのはよくわかるんだけど、外に出そうとすると形にならない。
 つまり身体の中になら魔法は使えるということかな。
 そう考えたわたしは体の中に強化魔法を使うがいまいち強化されたか実感がわかない。
 軽く壁を叩いてみると普通に痛い。


「強化できてないのかな?」


 もしくは中に強化をかけたただけだから外側である皮膚は強化されてないのかもしれない。
 もし強化されてなかったら壁の殴り損だし。
 そう考えていると外が騒がしい感じになってきた。


「目が覚めたのか?」
「はい、先ほどから声が聞こえておりますので」
「ならば、丁重にお連れしろ。殿下がお会いになるそうなのでな」
「わかりました!」


 カツカツという音が段々と近づいてくる。
 音はわたしの入っている牢屋の前で止まる。視線を上げるとそこには鎧を着込んだ騎士が立っており、ガチャガチャと鍵をはずしているようだった。


「殿下がお待ちです。こちらにどうぞ」


 騎士に促されるまま牢屋の外にでる。
 というか一応捕まえてた人間に対して縄でくくるなりなにかするかと思ったけどなにもしてこないし。全く警戒してないよね。
 殿下と呼ばれる人物は以前手紙を送ってきた人物しか心あたりがない。


「殿下? それってユニエール・ラ・ファンガルム」
「申し訳ございません。私には答えるはことができないので」


 騎士は答えず黙々と歩く。
 え、なにその秘密主義。


「全て殿下本人にお聞きください」


 そういい、わたしは騎士に従い歩きながら牢屋を後にした。

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