浮遊図書館の魔王様
第二十六話 勧誘されました
「貴族にならんか?」
そう言い、ベアトリスはこちらに向かい手を出してくる。
わたしはその手をジッと見つめながら考える。
貴族、貴族ねぇ。
あんまり魅力感じないな!
今の状態でも十分満足してるし、本はあるし、ケモミミメイドはいるし、邪魔してくる敵とかいないし!
衣・食・住完備なんだよ! 今の生活!(食べ物はなくても困らない身体になったしね)
あ、でもマーテ達の事考えたら学校とか行かしといたほうがいいのかな。
いや、そもそも貴族ってなにするの?
「貴族になって、わたしに得がありますか?」
わからないから素直に聞くことにした。
ベアトリスほ軽く笑い、差し出した手を引き下げた。
「まず、国王陛下より爵位を叙勲後に領地をもらうことができるんじゃ。その領地は好きにしてもろうて構わん。余程のことをしない限りはなにかされることはないのぅ」
「余程というと?」
「最近なら領地の税をかなり高くして税の免除の代わりなは女を貢がせまくったバカ貴族が王都で捕まったのぅ」
女の敵だから死刑でもよかったんじゃないだろうか。
「後は税、税金じゃの。好きにかけられる。ただ、毎月決まった金額を国王に献上せねばならぬがな」
めんどくさそうだなぁ。
税を高くしたら民集に恨まれて、低くしたら献上金がかさむ。
そんな頭使いたくないんだけど。
「まあ、大体の貴族は誰かにこの役を任して自分の趣味に没頭しておるのぅ」
わたしの心を読んだのかのようにベアトリスが苦笑しながら付け足す。
確かにアトラにでも任せたら楽なんだろうけど。
「貴族ってのはそんな簡単になれるものなの?」
「なんらかの功績を上げた者が爵位を得て貴族になることはごく稀にあるかのう」
淀みなく答えるなぁ。
でも、腑に落ちないね。
「最後にもうひとつ質問があるんですけど」
「わっちに答えれることなら」
「なんでそこまでわたしを貴族にしようとするんです?」
「は?」
わたしの発言にベアトリスが間抜けな声を出す。というか間抜けな顔もしてる。
「いや、だってベアトリスさんがわたしを貴族にするわけじゃないでしょ? するのは国王ってことだし。でもベアトリスさんはわたしを貴族にしたいという。普通、国王からの命令ならそれを頭に起きますよね。それをしないということは……」
「国王に貴族にしてもらったあとに派閥に取り込むということだね」
わたしが言葉を濁したところをアトラが引き継ぐ。
ようは王都、いや、国内での派閥争いがあるということなんだよね。
学園でもあったよ。◯◯派とか。
わたしは何にも入らなかったけど。
貴族になる、と答えるのは簡単だ。
ただし、どちらの派閥に入れられるかは貴族にならなければわからない。
仮に争ってるならどっちにも入りたくないし。自分から危険の中に飛び込むのも嫌だし。
「……」
ベアトリスは答えない。
ただ瞳にこちらの価値を探るような色を浮かべるのみで答えない。
やがて、諦めたようにため息をついた。
「おっしゃる通り、わっちは派閥に属している貴族じゃ」
「あっさりと認めるんですね」
もうちょっと隠すかとおもったけど。
「隠しても調べたらわかるからのう」
ベアトリスは居住まいをなおしこちらをむいた、
「まぁ、もともと無理にする気はないしのぅ、なってくれればラッキーみたいなもんじゃし」
「話聞いたら貴族なんてなりたくないですよ」
「お主の力なら国をひとつ取る位は容易じゃろ?」
ベアトリスの発言に隣のウフクスが息を呑む。
「先にも言ったけど領地とかは興味ないんです。欲しいものは手に入ってます」
図書館とメイドがいるしね。
結構満たされてるよね。
「欲がないのう、もう少しわがままにいてくれたほうがこちらとしても操りやすいんじゃが」
そうぼやいたベアトリスの前に二つの銀閃が飛び込む。
ギンっと金属が打ち合わされる音が響いた。
「我が主になんたる無礼!」
レキがいつの間にか剣を抜きおそらくベアトリスの頭を串刺しにしようとしたんだろう。その剣を塞ぐ形でウフクスがベアトリスの前に剣を盾のように使い防いでいた。
「ベアトリス卿、口が過ぎる」
「いや、わっちも死ぬかと思ったわ」
顔は青褪めているがかろうじて笑顔を見せてくるベアトリス。
操るとか物騒なこと言うなぁ。
わたしはというと見えない剣戟に怯えるのはもうやめた。死ぬ時はあっさり死にそうだし。
「まあ、わっちは個人的にお主のことは好きじゃよ」
そう言い震えながらベアトリスは椅子から立ち上がる。
ウフクスもそれに続くように立ち上がり剥き出しの剣を腰の鞘に戻す。
レキも渋々といった感じに戻していた。
「お主の要望は必ずや聞き届けよう。とりあえずは来月に新刊を届けそう。連絡はどうすればよいかの?」
ああ、連絡手段がないのか。もうこの図書館、空を飛ぶだけの魔力溜まったし。
わたしが軽く右手を振るうと武器庫の魔導書が右の掌の上にふわふわと現れる。
そしてパラパラと本を捲り目当ての物が書いてあるページを開く。
そこに書いてあるものは薄蒼い色をした指輪。
「あった。具現」
そう唱えると本な上に魔法陣が展開され、描かれていた薄蒼い色の指輪が現れる。
再び手を振るうと魔導書は消え、指輪だけが掌の上に残った。
「はい、これでわたしに連絡とれるから」
掌の指輪をベアトリスに向かい投げる。慌てたようにベアトリスは両手で指輪を受け取った。
「……いろいろともっとるんじゃなぁ」
受け取った指輪を物珍しそうに眺めながらベアトリスは呆れるような声を出す。
「では、また近いうちに会いましょう。図書館の魔王様」
優雅に礼をしたあとにベアトリスとウフクスは謁見の間を後にした。
図書館の魔王か。
「結局、魔王になったなぁ」
乾いた笑みを浮かべながらわたしは二人が転移される様を見ていた。
「ファス先生はどうされますか?」
一人椅子に座り残ったファスに話しかけたが彼女は興味があまりなさそうだ。
「交渉は普通に終わったし、しばらくは貴様の監視だな。それにここにいれは三食昼寝付きみたいだし」
本音を全く隠さないファスにわたしは笑い、レキとアトラはなんともいえない表情を浮かべたのだった。
そう言い、ベアトリスはこちらに向かい手を出してくる。
わたしはその手をジッと見つめながら考える。
貴族、貴族ねぇ。
あんまり魅力感じないな!
今の状態でも十分満足してるし、本はあるし、ケモミミメイドはいるし、邪魔してくる敵とかいないし!
衣・食・住完備なんだよ! 今の生活!(食べ物はなくても困らない身体になったしね)
あ、でもマーテ達の事考えたら学校とか行かしといたほうがいいのかな。
いや、そもそも貴族ってなにするの?
「貴族になって、わたしに得がありますか?」
わからないから素直に聞くことにした。
ベアトリスほ軽く笑い、差し出した手を引き下げた。
「まず、国王陛下より爵位を叙勲後に領地をもらうことができるんじゃ。その領地は好きにしてもろうて構わん。余程のことをしない限りはなにかされることはないのぅ」
「余程というと?」
「最近なら領地の税をかなり高くして税の免除の代わりなは女を貢がせまくったバカ貴族が王都で捕まったのぅ」
女の敵だから死刑でもよかったんじゃないだろうか。
「後は税、税金じゃの。好きにかけられる。ただ、毎月決まった金額を国王に献上せねばならぬがな」
めんどくさそうだなぁ。
税を高くしたら民集に恨まれて、低くしたら献上金がかさむ。
そんな頭使いたくないんだけど。
「まあ、大体の貴族は誰かにこの役を任して自分の趣味に没頭しておるのぅ」
わたしの心を読んだのかのようにベアトリスが苦笑しながら付け足す。
確かにアトラにでも任せたら楽なんだろうけど。
「貴族ってのはそんな簡単になれるものなの?」
「なんらかの功績を上げた者が爵位を得て貴族になることはごく稀にあるかのう」
淀みなく答えるなぁ。
でも、腑に落ちないね。
「最後にもうひとつ質問があるんですけど」
「わっちに答えれることなら」
「なんでそこまでわたしを貴族にしようとするんです?」
「は?」
わたしの発言にベアトリスが間抜けな声を出す。というか間抜けな顔もしてる。
「いや、だってベアトリスさんがわたしを貴族にするわけじゃないでしょ? するのは国王ってことだし。でもベアトリスさんはわたしを貴族にしたいという。普通、国王からの命令ならそれを頭に起きますよね。それをしないということは……」
「国王に貴族にしてもらったあとに派閥に取り込むということだね」
わたしが言葉を濁したところをアトラが引き継ぐ。
ようは王都、いや、国内での派閥争いがあるということなんだよね。
学園でもあったよ。◯◯派とか。
わたしは何にも入らなかったけど。
貴族になる、と答えるのは簡単だ。
ただし、どちらの派閥に入れられるかは貴族にならなければわからない。
仮に争ってるならどっちにも入りたくないし。自分から危険の中に飛び込むのも嫌だし。
「……」
ベアトリスは答えない。
ただ瞳にこちらの価値を探るような色を浮かべるのみで答えない。
やがて、諦めたようにため息をついた。
「おっしゃる通り、わっちは派閥に属している貴族じゃ」
「あっさりと認めるんですね」
もうちょっと隠すかとおもったけど。
「隠しても調べたらわかるからのう」
ベアトリスは居住まいをなおしこちらをむいた、
「まぁ、もともと無理にする気はないしのぅ、なってくれればラッキーみたいなもんじゃし」
「話聞いたら貴族なんてなりたくないですよ」
「お主の力なら国をひとつ取る位は容易じゃろ?」
ベアトリスの発言に隣のウフクスが息を呑む。
「先にも言ったけど領地とかは興味ないんです。欲しいものは手に入ってます」
図書館とメイドがいるしね。
結構満たされてるよね。
「欲がないのう、もう少しわがままにいてくれたほうがこちらとしても操りやすいんじゃが」
そうぼやいたベアトリスの前に二つの銀閃が飛び込む。
ギンっと金属が打ち合わされる音が響いた。
「我が主になんたる無礼!」
レキがいつの間にか剣を抜きおそらくベアトリスの頭を串刺しにしようとしたんだろう。その剣を塞ぐ形でウフクスがベアトリスの前に剣を盾のように使い防いでいた。
「ベアトリス卿、口が過ぎる」
「いや、わっちも死ぬかと思ったわ」
顔は青褪めているがかろうじて笑顔を見せてくるベアトリス。
操るとか物騒なこと言うなぁ。
わたしはというと見えない剣戟に怯えるのはもうやめた。死ぬ時はあっさり死にそうだし。
「まあ、わっちは個人的にお主のことは好きじゃよ」
そう言い震えながらベアトリスは椅子から立ち上がる。
ウフクスもそれに続くように立ち上がり剥き出しの剣を腰の鞘に戻す。
レキも渋々といった感じに戻していた。
「お主の要望は必ずや聞き届けよう。とりあえずは来月に新刊を届けそう。連絡はどうすればよいかの?」
ああ、連絡手段がないのか。もうこの図書館、空を飛ぶだけの魔力溜まったし。
わたしが軽く右手を振るうと武器庫の魔導書が右の掌の上にふわふわと現れる。
そしてパラパラと本を捲り目当ての物が書いてあるページを開く。
そこに書いてあるものは薄蒼い色をした指輪。
「あった。具現」
そう唱えると本な上に魔法陣が展開され、描かれていた薄蒼い色の指輪が現れる。
再び手を振るうと魔導書は消え、指輪だけが掌の上に残った。
「はい、これでわたしに連絡とれるから」
掌の指輪をベアトリスに向かい投げる。慌てたようにベアトリスは両手で指輪を受け取った。
「……いろいろともっとるんじゃなぁ」
受け取った指輪を物珍しそうに眺めながらベアトリスは呆れるような声を出す。
「では、また近いうちに会いましょう。図書館の魔王様」
優雅に礼をしたあとにベアトリスとウフクスは謁見の間を後にした。
図書館の魔王か。
「結局、魔王になったなぁ」
乾いた笑みを浮かべながらわたしは二人が転移される様を見ていた。
「ファス先生はどうされますか?」
一人椅子に座り残ったファスに話しかけたが彼女は興味があまりなさそうだ。
「交渉は普通に終わったし、しばらくは貴様の監視だな。それにここにいれは三食昼寝付きみたいだし」
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