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浮遊図書館の魔王様

るーるー

第二十五話 交渉しました

 数分後、ビリアラとアルが三人を連れて謁見の間にやって来た。


「レクレ様、つれてきたぞ」
「きたよー」


 耳をピコピコ動かしながら報告してくる二人を見てると和む。


「ありがと、じゃ、マーテにお茶の準備を言ってきて。すそれ終わったらお菓子食べてていいから」
「「わかった!」」


 元気よく走りながら謁見の間を後にする二人、子供はあれくらいじゃなくちゃね。
 さてと、


「お待たせしましたね。改まして、この浮遊図書館の一応の主レクレと言います。では、そちらにおかけください」


 アトラに準備してもらった机と椅子を手で指しながらわたしは変わらず王座に座る。その両脇にレキとアトラが控えるように立った。
 あれ? 前までこの配置に凄い違和感あったんだけどな〜。しかもこの椅子に座るの慣れてきてない?
 慣れって怖い。


「では失礼する」


 三人はローブを脱ぐと椅子に座る。
 一人は初老の男性、幾つもの傷が付いた鎧を着込んでおり、歴戦の戦士と言った感じだ。


「私はウフクス・ブ・ハルコットと言う」


 ハキハキと喋るその姿勢は好感がもてますよウフクスさん。名前が長いからきっと貴族なんだろうな。
 二人目は女性。綺麗な黒髪をしており、キラキラしている。気だるそうなやる気のなさそうな目をしている。そしてなによりも目を引くのは、幾つもの布で構成された服だ。


「わっちの名前はベアトリス・ラ・フュールと申す。はわぁ〜」


 口元を抑えながらも欠伸をするベアトリス。指にはまった赤い宝石がキラリと光る。
 欠伸しながら挨拶する人初めて見たよ。でも気になるのは、


「そちらのお姉さんが着ているのは東の国に伝わるキモノですか?」
「ええ、わっちが着ているのは東の国から取り入れてます着物と呼ばれるものですえ」


 わたしの問いかけに気だるげに答えるお姉さん。
 好奇心が刺激されます。


「後でさわってもいいですか?」
「んっ!ご主人」


 アトラの咳払いでハッと我に返る。
 危ない危ない。
 本でしか見たことないからついつい興奮してしまったよ。あとで聞くことにしよう。


「おもしろい人ですなぁ」


 カラカラと笑うベアトリス。
 三人目……三人は金髪の……


「なんでファス先生がいるんですか!」


 わたしは大声を上げ立ち上がる。
 腕を組みこちらを楽しそうに観察していたファスがやれやれと言った様子でため息をつく。


「私も着たくて来たわけじゃないよ、レクレ君。監査部として一応来たに過ぎないよ」


 そうだよね。この暴力教師が交渉とかないよね。言葉と同時に拳が出るような人だしね。


「失礼なことを考えてると殴るよ」


 心を読まれた⁉︎
 あーやだやだ。なまじ自分を知ってる人との交渉は。


「監査部が交渉するんですか?」
「私は交渉とか面倒なことは嫌いなんだよ。だから勝手にやってくれ」


 ファスは手をひらひらとさし、まるで興味がなさそうだ。
 まぁ、こちらとしても横槍がはいらないのは助かるんだけどね。
 そう、思っているとマーテが紅茶の入ったカップを四つわたしたちの前に置き、お辞儀をして退室する。
 さてと、


「じゃ、話しましょうか」
「まずはそちらの、レクレ殿の要求をお聞きしたい」
「わたしの要望はこの」


 わたしは山積みになった日記、レシピ、帳簿を指差しながら、


「不必要な本の返却ね。あ、持ち主をちゃんと探してもらうよ?」


 考えてた問題だからちょうどよかった。押し付けよう。


「悪事のことに書いた書物はどうなりますか?」
「ああ、あれもいらないから持って帰って。あれは教育に悪い、有害図書だよ」


 子供のうちからあんな悪どいことやるようならうちの子はやめてもらおう。
 いや、体罰はよくないからまずは説教をアトラに任せよう。


「あ、あとこの図書館への不干渉かな」
「それはあの本を集める魔法を今後も使う上でですか?」


 ウフクスが困ったような顔をしながらいってくる。
 そんなウフクスを見るとなかなかに好感が持てる。
 話が通じるからやりやすい。


「いや、この国ではもう使わないよ。本はあらかた揃った。ああ、もうひとつ、月に一回のこの図書館への納品ね。その月に発売された本の新刊を全部一部ずつだよ?」


 本収集ブックメディリィを使うと同じ本を何冊も集めちゃうし一般家庭からも取り上げちゃうからね。小遣い貯めて買った本が巻き上げられたらたまったものじゃないだろうし、わたしなら怒り狂うね。


「と、現状の要望はこんなものだよ」
「つまりまとめるとこちらへの要望は
 不要な本の返却
 図書館への不干渉
 月に一回の新刊の納品
 以上の三点でよいということですか?」
「そうなるね」
「ベアトリス卿」


 ウフクスがベアトリスの名を呼びそちらに視線を向ける。
 ベアトリスは指輪に唇を付け考え込んでるみたいだけど。


「その要望なら可能じゃろ」


 ベアトリスの発言にウフクスがホッとした表情を浮かべる。
 ふむ、あの関係を見るに決定権はベアトリスが握ってるのか。


「では、今度はこちらの要望を言ってもいいかえ?」
「どうぞ」


 要望を出して来るのはベアトリス。ウフクスは根っからの武人ぽいからね。


「その前に今回のお主との戦闘でというか強制転移の後の話じゃな、幾つか悪事が暴露された貴族がおってのぅ」


 レキとマーテが無差別に複製してばらまいたやつか。確かに何人かの貴族は捕まってたみたいだったけど。


「正直な話、貴族三十二門と言っても世襲制の時代遅れの産物じゃとわっちは思っとる」


 確かに本で読んでいる限りでは貴族三十二門は世襲制だ。それも初代の三十二人がファンガルム皇国の健立に貢献したからこそ貴族三十二門という特別な位ができたと言ってもいい。


「そして悪事が暴露された貴族三十二門の数は十八門。約半数じゃな」
「貴族じゃないわたしが貴族を罰した報いを受けろと?」


 わたしが軽々というと逆に後ろから重苦しい殺気が放たれる。多分、レキとアトラなんだろうし、わたしには向けてないのはわかるんだけど冷や汗がでるよ。
 ベアトリスはケラケラと笑う。


「そんなことは言わん。むしろ皇国のゴミを掃除してくれたことに礼を言いたい位じゃよ」


 回りくどい、つまり何が言いたいの。
 なんかイライラする喋り方だし、


「そう苛立つでない。これはお主にとっても我らにとっても納得のいく要望だと思っておるよ」


 ベアトリスはにっこりと笑い、


「どうかの、お主、貴族になり国に仕える気はないかえ?」


 そう尋ねてきた。

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