浮遊図書館の魔王様

るーるー

第二話 卒業式に連行されました

 時計塔、それはファンガルム皇国のファンガルム魔法学園の通称である。
    ファンガルムと名が付いてるが王都ではなく副都に居を構えている。
 学園のど真ん中にバカみたいに大きな時計塔があるためそう呼ばれている。
 当然、学園の目的としては優れた魔法使いをよに送り出すことになる。
 ファンガルム魔法学園の歴史は長い。ざっと500年くらいだろう。
 やれ、有名な魔法使いが創設しただの。やれ、歴代の先輩がどんな、偉業を達成しただのと埃が積もるくらいには歴史はあるのだ。
 そんな教科書に載っていることを増幅魔法拡大された声で話す校長(名前は忘れた)の口調とは裏腹に乾燥地域のような頭部を見ながら、


「まぁ、わたしには関係ないんですけどね」


 とぼそりと呟く。
 意識を取り戻したわたしは椅子に縛鎖で縛り付けられ身動きが取れない状態だった。
 どうもわたしが気を失ってる間に卒業式会場に連行されたみたいだし。
 軽く体を動かしてみるけど縛鎖は全く外れるような気配はない。周りを見渡すもアトラの姿も目につかない。


「アトラなら魔封じの鎖で縛ってるぞ。それとそれはそんな簡単には解けないから大人しく座っとけ。レクレ」


 首だけ振り向くと腕を組んで立ってるファス監察官が目に入った。


「監察官、これは虐待ではないですか? もしくは悪質ないじめです」
「私は体罰を虐待とは考えてないし、安心しろ。目に付くとこには傷は残さないようにしてやる」
「……お心遣いありがとうございます」


 この人はいつか魔法弁護士に訴えられるんじゃないだろうか。
 そんなことより、


「あの監察官」
「なんだ」
「このわたしの座ってる場所なんとかなりません?」


 今わたしの縛って座らせられてる場所、校長がスピーチしているところから五メートルも離れていない場所である。
 つまり、わたしからは卒業式に参加している生徒がほぼ見えるし、生徒からもわたしの姿は丸見えなわけであって。


 お、落ち着かない。


「校長のスピーチを真横で聴けるなんて嬉しい限りだろ?」
「いえ、校長の頭部に当たったライトの光が反射してわたしの目に入るので眩しいんですが」


 これは本当である。光魔法でも使ってるんじゃないかと思うほどの反射率。これは公害です。はっ! これってまさか……


「新手の拷問⁉︎」
「そんなわけないだろ」
『ウォッホン!』


 校長の咳払いでファル監察官とわたしが黙る。


『私語はその辺でよろしいですかな?』


 テカテカと光る頭をこちらに向けながら校長が怒りに震えよるような声を出した。


「すいません。あまりにつまらなくて聞くに耐えなくて……」
『もう少し隠すようにして発言したまえよ⁉︎』


 む、本音でいったのがまずかったか。ならば、


「あまりに高尚すぎて、途中から支離滅裂な会話に聞くに絶えず……」


『だまりたまぁえよ⁉︎』


 ……どうしろと言うんですか。
 めんどくさくなったわたしはだんまりを決め込もうと決意した。


「君はもう少し世渡り上手にというか、他人の心情を組むようにするべきだよ」


 なんてことをファス監察官に言われる。心外だなぁ。


「監察官、わたしほど他人の心情を組むことに長けた人はいないと思いますよ?」
「……一応聞いとくがどの辺がだ?」


 なんだか呆れた口調じゃないかな? 監察官。
 そんな監察官にわたしは堂々と縛られながらも胸を張り、


「わたしは他人の嫌がること察するのが得意ですから!」
「レクレ、それは心情を組むとか心配りとかからは一番程遠い言葉だからな?」


 あの、そんなめんどくさいと言わんばかりの目をやめてもらえませんかね。
 そんな話をしてるとパチパチと拍手の音が聞こえてきた。どうやらハゲの話が終わったようだ。
 めんどくさいから寝よう。そうしよう。
 そう考えたわたしは目を閉じ夢の世界に飛び立とうとした。


『次に卒業生主席、カハネル・リテミス。卒業生次席レクレ・フィンブルノ。前へ』


 なんで名前呼ばれたんでしょう?
 頭に疑問符を浮かべていたわたしだが、縛鎖が解かれたことで呼ばれたのがわたしだと再確認する。


「卒業生主席と次席の挨拶だ。当たり障りないことを言ってこい。どうせ挨拶用の原稿なんて書いてないだろ?」


 よくご存知で。苦笑いを浮かべながらわたしはハゲ校長の前に歩き出した。

「浮遊図書館の魔王様」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「その他」の人気作品

コメント

コメントを書く