魔王さまは自由がほしい
そして、回り込まれた!
通常あり得ないはずの影が弾け、宙を舞う。
いや、舞うという表現かどうかはわからないがとりあえず、影がまるで溶けるように消えながら落ちる。そしてその中心には膝をつき、頭を下げる紫色のメイド服を着たマリアベルジュの姿があった。
「六死天統括、マリアベルジュ」
静かに宣言し、立ち上がると優雅に一礼、むろん、それは魔王ソロティスのみにであるが。
「それで同じく六死天ある二人がなにをしているのです?」
手にしていたモップの先端を武器を構え、斬り合いを中断したままの二人に冷たい視線を送りながら突きつけるマリアベルジュ。
「キルルはまおーさまと遊んでただけだよ?」
「この私様を侮辱したポンコツをスクラップにしようとしていただけですわ」
今だに一触即発の二人の空気にマリアベルジュはため息をつく。
「それでも魔王軍最強の六死天ですか? ただの街中の不良ではないのですよ」
マリアベルジュの呆れたような声色に睨み合っていた二人がギロリとマリアベルジュを睨む。
「キルルがいてまおーさまがいるなら遊ぶしかないじゃない?」
「魔王様はおもちゃではありませんよ。コルデリア、あなたもですか?」
キルルからコルデリアへと視線を移し、マリアベルジュは問いかける。
「私様はちが…… いえ、そうですわ、いい加減あなたが六死天統括であることにも飽きましたし、ここは一つその地位を私様にお譲りなさいな」
「あ、それならキルルもほしい」
「はぁ、どうでもいいですよ」
人差し指を曲げ手招きするように挑発するマリアベルジュ。そんな簡単な挑発すら今の二人は見逃せない。
「欲しいなら奪いなさい。それが魔王城、いえ、魔界のルールです」
マリアベルジュの言葉にプツンと二人の何かがきれた。
『上等!』
叫ぶと共に二人の姿が完全に視界から消失。
マリアベルジュは慌てることなく後ろで今だ尻餅を付いたままのソロティスに向かい魔法を発動。薄く黒い膜がソロティスの全身を包み込むと満足気に微笑む。
「魔王様、しばしお待ちを少々、暴れますので」
「え、いや、暴れないで欲しいな〜 僕の精神衛生状のためにも」
そんな風に呑気に話すマリアベルジュの背後に細剣を構えたコルデリアが姿を表す。圧縮された魔力が細剣を黒く染め上げ、恐ろしいまでの呪詛を纏わせていた。
「私様を前に余所見とは随分と余裕ですわね!」
怒りの声と放たれたのは音。
コルデリアの腕は見えるが剣先が全く見えずただひたすらに超高速の刺突が放たれ続ける。
だが、それはマリアベルジュの持つモップによって迎え撃たれる。
超高速の刺突を打ち払い、突き払い、横から打ち付けることで軌道を逸らし、完璧なる防御を見た目はただのモップで再現する。
千の攻撃を閃の防御で守り抜く。
攻防は動物の爪が何かを削る時のような音を発し続けるが、コルデリアが攻撃を中断、床に着地すると同時に今までで一番タメを作り、全身のバネというバネを使い最大級の魔力が乗せられた突きを放つ。
「絶突!」
必ず貫くという意思、そしてそれにふさわしいほどの技量、魔力を込めたコルデリアの唯一名前を付けた技が六死天統括に向け放たれた。
閃くのは光、マリアベルジュには点にしか見えず、しかし、光のごとく迫った攻撃がついにマリアベルジュを捉え、右腕をもぎ取る。
しかし、その結果にコルデリアは苦虫を潰したような表現を浮かべる。
「私様の技で腕一本ですの!」
コルデリアが狙ったのは腕ではなく首。それでも確実に殺すという意思と共に放った技が奪ったのは右腕一本という事実に歯噛みする。
「腕一本でも大したものだとおもいますが……」
宙をくるくると舞いながら飛ぶ自分の腕を見上げ、マリアベルジュは素直な感想を告げる。
「ふふん、吸血鬼には速さが足りない」
そう告げるのはキルル。
一瞬にしてコルデリアを追い抜くと高速で回転、
「System! 超近接モード、ネーム『速いってのはいいことだ!』」
回転しながら光を放つキルルが今までの後ろに展開していたような武装ではなく、体のあちこちにスラスターのような物が付いた形態へと変わる。
「はいぱーぶーすとー!」
『イグニション!』
キルルの間の抜けた声と同時に機械音声が響き、キルルが消える。
コルデリアには見えない。マリアベルジュにも見えなかった。ただし、ソロティスには見えた。位置的な問題で。
ソロティスの位置はマリアベルジュの少し後ろだ。
そしてソロティスがキルルを見たのは正面、つまり、マリアベルジュの背後であった。
「はいぱーぶーすとーきーく!」
再び間抜けな声、それと同時に蹴りを放つ、途端、足に幾つもつけられていたスラスターが火を吹き、暴力的と言える速度に達した蹴りは反応できてないマリアベルジュの背中へと迫り、
パァン!
という軽い音を廊下に塗り響かせながらマリアベルジュの上半身を消し飛ばした。
いや、完全に消し飛ばしたわけではなく壁に幾つもの水っぽい音が響いていることから蹴り砕いた、が正しいであろう。
「ぎゃぁぁぁ! マリアが死んだぁぁぁ!」
悲鳴を上げるのはいつものごとく魔王ソロティスである。
下半身のみを残し噴水のごとく紅い液体を吹き出すマリアベルジュを見て、そして紅い液体が自分にかかることでいろいろなゲージが振り切ったようだ。
超高速で動いたキルルが廊下を削るように回転しながら勢いを殺し、膝を付く。
「まおーさま、マリアが、あのマリアがあっさりと死ぬわけないじゃない」
キルルが至る所から煙を出しながらも警戒を怠らず、紅い液体を今だに吹き出すマリアベルジュの下半身を注視する。コルデリアも同様である。
『いやですね。死なないのはそうですが痛いことには変わりありませんよ?』
マリアベルジュの声が響く。ただし、どこからかはわからない。発声を行う部位のある上半身はキルルが蹴り砕いたからだ。
下半身から飛び出ていた紅い液体が止み、廊下に紅い水溜り作っていた。
「あの女、やっぱり死にませんのね……」
忌々し気に言いながら細剣を構えるコルデリア。
「絶対殺して……」
殺意の篭った発言する途中、キルルの言葉は無理やり止められる。
紅い水溜りから飛び出してきた腕によって。
「やっぱり!」
すぐさまスラスターを作動さし離脱しようとしたキルルであったが飛び出してきた腕のほうが先にキルルの脚を掴み、後退という選択肢を奪う。
「なら!」
判断は一瞬、後退から前進に切り替えたが高速で回転、残りの下半身を粉砕するべく突き進む。
それを読んでいたかのように紅い腕は形状を変化。
幾本もの槍へと姿を変え、その全てが回転するキルルへと迫った。
高速回転するキルルが槍を砕きながらも前進するが紅い水溜りから次々と放たれる槍が確実に勢いを殺す。
そして、ついにキルルの回転が弱まったその時、ついに紅い槍がキルルの腕を貫く。
「ガギィ!」
悲鳴を上げ、動きが止まった一瞬の間に紅い槍が殺到、瞬く間に槍が突き刺し、抉り、機械パーツを砕き、四肢を完全に停止させる。
『あ、アイカワラズにズるい能りょくダネ』
体の至る所を貫かれ、身動きが取れないキルルだが頭部だけが無事なため、マリアベルジュの下半身だけが立つ紅い水溜りを笑いながら見つめる。
パシャンといい音を立て、下半身が紅い水溜りへと変わり、水溜りの中からマリアベルジュが姿を表す。マリアベルジュの体が水溜りから姿を表すたびに周囲の紅い水溜りは減り続け、やがて水溜りがなくなった時には無傷のメイド服を着たマリアベルジュが立っていた。
「全く、同僚の上半身を吹き飛ばすとか常識を疑いますよ」
「いや、なんでマリア生きてるの?」
自分の目の前で動く非常識を見ながらソロティスは尋ねた。
するとマリアベルジュは満面の笑みを浮かべ振り返った。下半身はそのままで上半身だけが百八十度回転するという異常な動きをして。
「気になりますか? 魔王様! 私のことが!気になりますか!」
やたらと「私の」を強調してくるマリアベルジュ。
「そりゃ、気になるよ」
「そうですか! ついに坊ちゃんも私に興味を持つ年頃に! マリアは、マリアは感動のあまり涙が……」
とマリアベルジュがハンカチで涙を拭っていると彼女の胸元から刃が生えた。
「私様を無視とは!」
ソロティスからはマリアベルジュの後ろで怒りの焔を宿した瞳で睨むコルデリアを見た。
一方、胸から突き出した細剣をマリアベルジュはキョトンとしていた目で見ていたが特に気にすることなく横にそっと動いた。マリアベルジュが動くだけで普通なら血が流れたりするものであるが、彼女の動いた箇所は傷はなく刃は水面の上を動いて行くかのように横に流されていき、やがてとぷんっという音と共に腕から刃が抜ける。
「この……デタラメ体質!」
傷をつけることができなかったからかワナワナと震えるコルデリアであったが、細剣を仕舞う。
「きょ、今日のところはこれくらいで許して差し上げますわ!」
ビシッと指をマリアベルジュに向けてさすと踵を返しつかつかと歩き去って行った。
「それでは坊ちゃんには私の事を隅から隅まで手取り足取りお教えしますわ!」
「やだよ! なんだか危険な香りがするよ!」
「香り⁉︎ 匂いですか! ならば今から最高級の香水を! し、初夜ですし!」
なぜか頬を染めながらモジモジとするマリアベルジュの姿にソロティスは悪寒を感じ取る。
「違う! なんだか違う! 危機のレベルが違う!」
ジリジリと迫るマリアベルジュから後ずさりながらソロティスは逃げようとするがすでにキルルから逃げた時に魔力を使い切ってしまっているため全くと言っていいほど動けていなかった。
(うわぁぁ、まずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずい! このままじゃ僕、奪われる⁉︎)
普通は女性がうかべそうな思考しながら手をワキワキさしながら迫るマリアベルジュを見るしかできないソロティス。
観念し、目を閉じる。
ガシっという音が鳴るとズルズルと引きずられ始めた。
「ですが、まずは課題をやっていただきます。とりあえずは五倍。そのあとに手取り足取り腰取りといきましょう」
本気か本気じゃない発言をしてくるマリアベルジュ。ソロティスは自分を引きずるマリアベルジュを見上げながら安堵と同時に不安を掻き立てられた。
「五倍とか死ぬかもしれない……」
少し死を覚悟してソロティスは 自 室に連行されていくのだった。
「あレ、きるる、放置」
頭部以外が破損したキルルを放置して。
いや、舞うという表現かどうかはわからないがとりあえず、影がまるで溶けるように消えながら落ちる。そしてその中心には膝をつき、頭を下げる紫色のメイド服を着たマリアベルジュの姿があった。
「六死天統括、マリアベルジュ」
静かに宣言し、立ち上がると優雅に一礼、むろん、それは魔王ソロティスのみにであるが。
「それで同じく六死天ある二人がなにをしているのです?」
手にしていたモップの先端を武器を構え、斬り合いを中断したままの二人に冷たい視線を送りながら突きつけるマリアベルジュ。
「キルルはまおーさまと遊んでただけだよ?」
「この私様を侮辱したポンコツをスクラップにしようとしていただけですわ」
今だに一触即発の二人の空気にマリアベルジュはため息をつく。
「それでも魔王軍最強の六死天ですか? ただの街中の不良ではないのですよ」
マリアベルジュの呆れたような声色に睨み合っていた二人がギロリとマリアベルジュを睨む。
「キルルがいてまおーさまがいるなら遊ぶしかないじゃない?」
「魔王様はおもちゃではありませんよ。コルデリア、あなたもですか?」
キルルからコルデリアへと視線を移し、マリアベルジュは問いかける。
「私様はちが…… いえ、そうですわ、いい加減あなたが六死天統括であることにも飽きましたし、ここは一つその地位を私様にお譲りなさいな」
「あ、それならキルルもほしい」
「はぁ、どうでもいいですよ」
人差し指を曲げ手招きするように挑発するマリアベルジュ。そんな簡単な挑発すら今の二人は見逃せない。
「欲しいなら奪いなさい。それが魔王城、いえ、魔界のルールです」
マリアベルジュの言葉にプツンと二人の何かがきれた。
『上等!』
叫ぶと共に二人の姿が完全に視界から消失。
マリアベルジュは慌てることなく後ろで今だ尻餅を付いたままのソロティスに向かい魔法を発動。薄く黒い膜がソロティスの全身を包み込むと満足気に微笑む。
「魔王様、しばしお待ちを少々、暴れますので」
「え、いや、暴れないで欲しいな〜 僕の精神衛生状のためにも」
そんな風に呑気に話すマリアベルジュの背後に細剣を構えたコルデリアが姿を表す。圧縮された魔力が細剣を黒く染め上げ、恐ろしいまでの呪詛を纏わせていた。
「私様を前に余所見とは随分と余裕ですわね!」
怒りの声と放たれたのは音。
コルデリアの腕は見えるが剣先が全く見えずただひたすらに超高速の刺突が放たれ続ける。
だが、それはマリアベルジュの持つモップによって迎え撃たれる。
超高速の刺突を打ち払い、突き払い、横から打ち付けることで軌道を逸らし、完璧なる防御を見た目はただのモップで再現する。
千の攻撃を閃の防御で守り抜く。
攻防は動物の爪が何かを削る時のような音を発し続けるが、コルデリアが攻撃を中断、床に着地すると同時に今までで一番タメを作り、全身のバネというバネを使い最大級の魔力が乗せられた突きを放つ。
「絶突!」
必ず貫くという意思、そしてそれにふさわしいほどの技量、魔力を込めたコルデリアの唯一名前を付けた技が六死天統括に向け放たれた。
閃くのは光、マリアベルジュには点にしか見えず、しかし、光のごとく迫った攻撃がついにマリアベルジュを捉え、右腕をもぎ取る。
しかし、その結果にコルデリアは苦虫を潰したような表現を浮かべる。
「私様の技で腕一本ですの!」
コルデリアが狙ったのは腕ではなく首。それでも確実に殺すという意思と共に放った技が奪ったのは右腕一本という事実に歯噛みする。
「腕一本でも大したものだとおもいますが……」
宙をくるくると舞いながら飛ぶ自分の腕を見上げ、マリアベルジュは素直な感想を告げる。
「ふふん、吸血鬼には速さが足りない」
そう告げるのはキルル。
一瞬にしてコルデリアを追い抜くと高速で回転、
「System! 超近接モード、ネーム『速いってのはいいことだ!』」
回転しながら光を放つキルルが今までの後ろに展開していたような武装ではなく、体のあちこちにスラスターのような物が付いた形態へと変わる。
「はいぱーぶーすとー!」
『イグニション!』
キルルの間の抜けた声と同時に機械音声が響き、キルルが消える。
コルデリアには見えない。マリアベルジュにも見えなかった。ただし、ソロティスには見えた。位置的な問題で。
ソロティスの位置はマリアベルジュの少し後ろだ。
そしてソロティスがキルルを見たのは正面、つまり、マリアベルジュの背後であった。
「はいぱーぶーすとーきーく!」
再び間抜けな声、それと同時に蹴りを放つ、途端、足に幾つもつけられていたスラスターが火を吹き、暴力的と言える速度に達した蹴りは反応できてないマリアベルジュの背中へと迫り、
パァン!
という軽い音を廊下に塗り響かせながらマリアベルジュの上半身を消し飛ばした。
いや、完全に消し飛ばしたわけではなく壁に幾つもの水っぽい音が響いていることから蹴り砕いた、が正しいであろう。
「ぎゃぁぁぁ! マリアが死んだぁぁぁ!」
悲鳴を上げるのはいつものごとく魔王ソロティスである。
下半身のみを残し噴水のごとく紅い液体を吹き出すマリアベルジュを見て、そして紅い液体が自分にかかることでいろいろなゲージが振り切ったようだ。
超高速で動いたキルルが廊下を削るように回転しながら勢いを殺し、膝を付く。
「まおーさま、マリアが、あのマリアがあっさりと死ぬわけないじゃない」
キルルが至る所から煙を出しながらも警戒を怠らず、紅い液体を今だに吹き出すマリアベルジュの下半身を注視する。コルデリアも同様である。
『いやですね。死なないのはそうですが痛いことには変わりありませんよ?』
マリアベルジュの声が響く。ただし、どこからかはわからない。発声を行う部位のある上半身はキルルが蹴り砕いたからだ。
下半身から飛び出ていた紅い液体が止み、廊下に紅い水溜り作っていた。
「あの女、やっぱり死にませんのね……」
忌々し気に言いながら細剣を構えるコルデリア。
「絶対殺して……」
殺意の篭った発言する途中、キルルの言葉は無理やり止められる。
紅い水溜りから飛び出してきた腕によって。
「やっぱり!」
すぐさまスラスターを作動さし離脱しようとしたキルルであったが飛び出してきた腕のほうが先にキルルの脚を掴み、後退という選択肢を奪う。
「なら!」
判断は一瞬、後退から前進に切り替えたが高速で回転、残りの下半身を粉砕するべく突き進む。
それを読んでいたかのように紅い腕は形状を変化。
幾本もの槍へと姿を変え、その全てが回転するキルルへと迫った。
高速回転するキルルが槍を砕きながらも前進するが紅い水溜りから次々と放たれる槍が確実に勢いを殺す。
そして、ついにキルルの回転が弱まったその時、ついに紅い槍がキルルの腕を貫く。
「ガギィ!」
悲鳴を上げ、動きが止まった一瞬の間に紅い槍が殺到、瞬く間に槍が突き刺し、抉り、機械パーツを砕き、四肢を完全に停止させる。
『あ、アイカワラズにズるい能りょくダネ』
体の至る所を貫かれ、身動きが取れないキルルだが頭部だけが無事なため、マリアベルジュの下半身だけが立つ紅い水溜りを笑いながら見つめる。
パシャンといい音を立て、下半身が紅い水溜りへと変わり、水溜りの中からマリアベルジュが姿を表す。マリアベルジュの体が水溜りから姿を表すたびに周囲の紅い水溜りは減り続け、やがて水溜りがなくなった時には無傷のメイド服を着たマリアベルジュが立っていた。
「全く、同僚の上半身を吹き飛ばすとか常識を疑いますよ」
「いや、なんでマリア生きてるの?」
自分の目の前で動く非常識を見ながらソロティスは尋ねた。
するとマリアベルジュは満面の笑みを浮かべ振り返った。下半身はそのままで上半身だけが百八十度回転するという異常な動きをして。
「気になりますか? 魔王様! 私のことが!気になりますか!」
やたらと「私の」を強調してくるマリアベルジュ。
「そりゃ、気になるよ」
「そうですか! ついに坊ちゃんも私に興味を持つ年頃に! マリアは、マリアは感動のあまり涙が……」
とマリアベルジュがハンカチで涙を拭っていると彼女の胸元から刃が生えた。
「私様を無視とは!」
ソロティスからはマリアベルジュの後ろで怒りの焔を宿した瞳で睨むコルデリアを見た。
一方、胸から突き出した細剣をマリアベルジュはキョトンとしていた目で見ていたが特に気にすることなく横にそっと動いた。マリアベルジュが動くだけで普通なら血が流れたりするものであるが、彼女の動いた箇所は傷はなく刃は水面の上を動いて行くかのように横に流されていき、やがてとぷんっという音と共に腕から刃が抜ける。
「この……デタラメ体質!」
傷をつけることができなかったからかワナワナと震えるコルデリアであったが、細剣を仕舞う。
「きょ、今日のところはこれくらいで許して差し上げますわ!」
ビシッと指をマリアベルジュに向けてさすと踵を返しつかつかと歩き去って行った。
「それでは坊ちゃんには私の事を隅から隅まで手取り足取りお教えしますわ!」
「やだよ! なんだか危険な香りがするよ!」
「香り⁉︎ 匂いですか! ならば今から最高級の香水を! し、初夜ですし!」
なぜか頬を染めながらモジモジとするマリアベルジュの姿にソロティスは悪寒を感じ取る。
「違う! なんだか違う! 危機のレベルが違う!」
ジリジリと迫るマリアベルジュから後ずさりながらソロティスは逃げようとするがすでにキルルから逃げた時に魔力を使い切ってしまっているため全くと言っていいほど動けていなかった。
(うわぁぁ、まずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずい! このままじゃ僕、奪われる⁉︎)
普通は女性がうかべそうな思考しながら手をワキワキさしながら迫るマリアベルジュを見るしかできないソロティス。
観念し、目を閉じる。
ガシっという音が鳴るとズルズルと引きずられ始めた。
「ですが、まずは課題をやっていただきます。とりあえずは五倍。そのあとに手取り足取り腰取りといきましょう」
本気か本気じゃない発言をしてくるマリアベルジュ。ソロティスは自分を引きずるマリアベルジュを見上げながら安堵と同時に不安を掻き立てられた。
「五倍とか死ぬかもしれない……」
少し死を覚悟してソロティスは 自 室に連行されていくのだった。
「あレ、きるる、放置」
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