エルフさんが通ります

るーるー

派手なのが好きなだけですよ

『ミャァァァア! こんなのばっかりだぁぁぁぁ!』


 私の瞳に悲鳴を上げながらどこでも自爆くん私の人形に戦いを挑むシェリーの姿が映ります。どこでも自爆くんの一体と視界を繋げているためまるで自分で見ているかのような臨場感が味わえます。
 ボロボロの姿を見るにフィー姉さんの闘気オーラによる攻撃とどこでも自爆くんの自爆攻撃は通っているようですね。その証拠に防御なんて言葉をしらないかのようにシェリーに突撃し続けるどこでも自爆くんを見てシェリーの顔色が変わっています。
 必死に逃げようとしているシェリーですが未だに変な拘りを持っているのか王座の周りから離れようとしません。
 そのためどこでも自爆くんを自爆さすことなく操り、チビチビと攻撃を仕掛けてやります。それでもシェリーにはいつ自爆されるのかわからない恐怖をからか必死に逃げ回っている姿はなんとも情けない姿で見ていて自然と口元に笑みが浮かんでしまいます。


『ねえねえ』


 にやにやと笑っているとくーちゃんが私の服の裾を掴み引っ張ってきます。


『わたしも見たいんだけど?』
「ああ、いいですよ」


 こういうのはあまり好きではないと思ってたので意外でしたが特に断る理由もありませんので魔法で私が見ているものが見れるように繋いであげます。


『おお! これすごいね!』


 私の横で戦闘を見ることはあっても実際、戦闘をしている目で見たことはないくーちゃんが興奮したように声をあげます。
 ふっふっふ、動きまくる視線というのはなかなかに高揚感を誘うものですからね!


『でも視界が次々と変わるのはなんで?』
「ああ、自爆するたびに他の自爆くんに視界が変わってるんですよ」
『え! この視界が揺れるのって自爆してるの⁉︎』
「ええ」


 驚くくーちゃんに合わせるかのように頭上で大きな爆発音が響き、小さな破片がパラパラと音を上げながら落ちてきます。


「しかし、粘りますね」


 私の視界にはまだひたすらにどこでも自爆くんを切り裂いているシェリーの姿が見て取れます。それはもう必死です。
 切り裂かれるたびに自爆し、幾度となく爆発に襲われてなお戦い続けているシェリーに私の胸はなんかこう……


「ムカムカしますね」
『えぇ⁉︎ なんか今の雰囲気なら感激するとこじゃないの⁉︎』
「え? だってあんまりにも長いもんですからね」


 あと同じような光景しか見れないから退屈なんですよ。飽きたんですよ。


『飽きっぽすぎる!』


 あまりの退屈さにあくびが出ます。
 というかとっとと沈んでくれると面倒なことなく助かるんですがね。
 わざわざ対峙するなんて邪魔くさい。


「あ、でも対峙しないと殴れないですね」
『え、今頃気付いたの⁉︎ てっきり消し飛ばすとばかり思ってたよ』


 楽な方に考え過ぎていましたね。そうです。私はシェリーをぶっ飛ばさないと気が済まないのでした。


「ふむ、そうなると」


 腕を組みながら思案していましたが作戦変更です。
 どこでも自爆くんとの視界共有を切り、爆発音が鳴り響いている天井が見える元の視界に戻ります。


「まずは始末しましょうか」


 組んでいた腕を解くと片手を上に上げると指を鳴らします。


『なんで指鳴らしてるの?』
「……特に意味はありません」


 この行為自体に意味はありません。ただなんかかっこいいかなぁというレベルの問題です。
 そんな純粋に人を哀れむような目で見ないでください! エルフですけどぉ!
 ですが指を鳴らした瞬間に未だにシェリーと戯れているどこでも自爆くん達へと魔力を送ります。
 さて、ただでさえ魔力の塊であるどこでも自爆くんですがそこに許容量を超える魔力を流し込むとどうなるか。


『どうなるの?』
「それはね」


 くーちゃんに話を続けようとした瞬間、大きく城が揺れます。しかも上からは大量の瓦礫が降るほどです。さらには連続で鳴りあがる轟音のせいで耳がおかしく鳴りそうです。


『耳いたぁぁい!』


 くーちゃんが耳を抑えながら悲鳴を上げています。私も同じような状態です。ついでに言うと横でくーちゃんが叫んでる分さらに痛いです。


『ギャァァァァァァァ! また爆発したぁぁぁ!』


 しかし、私は上を見上げ、聞こえてくる悲鳴に姿は見えないながらも満足気な笑みを浮かべます。


「許容を超えると爆発するんですよ」
『リリカって実は爆発好き?』


 派手なのが好きなだけですよ。

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