エルフさんが通ります

るーるー

動く世界

『はーいまなさんこんにちは』
わたくし、今代の魔王を就任いたしましたシェリーと申しますわ』
『さて、本来なら魔族の皆さんだけに魔王就任の挨拶をするはずだったんですが、今回の挨拶は全種族の方々が見えるようにということで空にわたくしの姿を映し出していただいています』
『どうです? 凄く美少女でしょう? 歴史の本を作ってる方々には是非にわたくしが絶世の美女であったということを記していただきたいですわ』
『お嬢様、投影の魔法も無限ではありませんのでご用件は手短にお願いします』


『わかってますわ、んん! 今代の魔王として全種族の皆様に宣言さしていただきます。この世界を刺激に満ちた世界にするために……』


『種族をいくつか消し飛ばそうと思います』


『あ、種族とは関係なしでいにしえより生きている方々にはこの世界から消えていただきます。老害は必要ありませんので。いつまで経っても保守的な姿勢では新たな考えを阻害するただの邪魔者ですので』


『次に都市をいくつか潰します。特に魔法道具マジックアイテムを作り生活を豊かにしているところを優先的に潰します』


『あ、あと王族も殺します。凝り固まった頭は新しいものに変えた方が良いでしょうし』


『これらを実行し、わたくしは生きるのに必死な世界を作るということを今、宣言さしていただきますわ! あ、ついでに穀物などが豊かな国も焼きましょう! その方がみなさん必死になりますよね!』


『これら全てを三月後には開始していきますので意義のある方々はベリアサル平原に浮かぶ我が魔王城までいらっしゃってくださいな。いつでも歓迎いたしますわ』


 このような映像が流され、世界は一気に混乱の渦に叩き込まれた。しかし、大半の国が冗談であろうということで大した行動をとらなかった。


 それに少しばかりイラついたシェリーは魔王城の一部の力を解放。魔力による砲撃で小国を一つ消しとばした。『生きるのであれば必死になってほしいですわ』というメッセージを添えて。


 さすがに国を吹き飛ばされては各国も本気ならざる得ない。すぐさま軍、冒険者を動かし、各国が魔王城へと挑んでいったのだが纏まりなくただただ突撃するだけの兵などは魔王城から現れたメイド部隊に蹴散らされるのであった。


 さすがに兵を悪戯に死なすのはまずいということに気づいた王もいたため緊急で各国の王が集まる会議を開催。
 それにより魔王シェリーを倒すまでの間、争っている国は休戦を結び、魔王を倒すのに全力を注ぐという同盟、のちの歴史で『魔王絶対許さない同盟』が結ばれることとなった。


 それからの各国は慌ただしく動いた。
 むやみな突撃ではなく、斥候を出し、戦力の把握に努めたり、魔王城の見取り図に多額の懸賞金をかけたりと情報戦に移行したのである。


 そして魔王シェリーが宣言した三カ月まで残り一週間を切った頃、『魔王絶対許さない同盟』はベリアサル平原に大軍を集結しつつあった。



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