エルフさんが通ります

るーるー

さあ、死んでください

「ふーむ、あれはなんなんですかね?」


 緋、蒼、翠、白の光、いや、あれはおそらくは魔力の色なんでしょう。それらの魔力を纏った者がシャチク、オリハルドラゴン、勇者パーティという名のカズヤソロの間に地面に穴をあけるほどの勢いで着地してきました。
 おかけで私はカズヤを殺すタイミングを完全に逃してしまったわけなんですがね。


『リリカ〜』


 構えていた弓を下げ、背後から聞こえる声へと振り返ります。


「おや、くーちゃんとゼィハ。ちゃんといきていましたか」


 振り返るとヨロヨロと歩くゼィハ、そしてその頭の上に座るくーちゃんの姿が目に入りました。


「いや、正直お腹に一回衝撃が走ったことしか記憶にないんですが…… あたしはなんでこんなにボロボロなんでしょうか?」
「ええ、モンスターに襲われたんですよ。まさかゼィハを一撃で昏倒さすとは思いませんでした。強敵でしたよ」
『!(しれっと嘘をついた!)』


 頭は打っていないはずですが記憶がないというのは非常に好都合です。今後もゼィハを盾として使う前提で考えて一時的に記憶がなくなる薬を作った方がいいかもしれませんね。死ななきゃポーションで体の傷は消せるわけですしね。
 とりあえずはボロボロのダークエルフの服を着替えているゼィハを手招きし、戦場を指さします。


「なんです?」
「あなたの意見が聞きたいんですがあそこにいるのはどれくらい強いと思いますか?」


 そう言い指差したのは先ほど降りてきた四人組。
 その四人組とカズヤを警戒するようにオリハルドラゴンは唸りを上げながら構えのようなものを取っています。
 一方。勇者パーティの方はというとカズヤはあからさまに警戒のレベルを上げていますが、結界の中で過ごしているヴァン、クク、フィー姉さん達はというと完全に寛ぎ状態。さっき同様に助ける気なんて全くないようです。


 そして私の作り出したシャチクはというと。


「休憩五分終了! ハイヨロコンデ!」


 場の空気などを全く読まずに呪われた武器を振りかぶりカズヤへと斬りかかっていきました。


「ぐっ! こいつ場の緊張感とか感じないのかよ!」


 呪われた武器で斬りかかってくるシャチクの攻撃をいなすカズヤが苦々し気に漏らします。
 ははは、シャチクにそんな空気を読むなんて機能ありませんよ。あれば元デブは私にダークエルフの里で喧嘩など売ってこなかったでしょうし。そんな魔物みたいにはならなかったでしょう。


「…… あの四人は別格すぎますね。始まりの魔族と呼ばれてもおかしくないくらいの」
「よくわかりませんが強いんですね?」


 なにその始まりの魔族とか…… かっこいい響き。


「一人一人がシャチクと戦っている勇者と同等、もしくらそれ以上の力を持ってます」
「え、面倒ですね」


 まともに戦いたくはありません。でもあんなところにいられたら勇者もぶち殺せませんし。このまま放っておく? いや、そんなことをしていてカズヤが死ぬのであれば問題はありませんがもし生き残ってオリハルドラゴンを狩り、聖剣を覚醒されたら私の命がなくなります。
 命大事にが私のスタイルですのでね。


「となるとやはり当初の予定通りにカズヤをこの距離で射抜くしかありませんね」


 幸いなことに新たに姿を現した四人組はまだカズヤとシャチクとの戦いには参戦する様子が見られません。
 よし、やっぱり殺りましょう。


「くーちゃん、魔力を」
『やっぱりやるんだ……』


 溜息をつきながらもくーちゃんは私の番える魔力の塊と化している矢にさらに魔力を注いでくれます。
 音が鳴るほどの魔力を纏った矢を再び弓へと装填し狙いを定めます。


「ハイヨロコンデ! ハイヨロコンデ!」
「この! しつこい!」


 聖剣を使うカズヤですが完全に疲れ切っているようです。動きにキレが見られません。
 一方のシャチクの動きは全くの衰えが見られません。さすがは亡者といったところでしょう。


「さあ、死んでください」
『にこやかな笑顔を浮かべたまま物騒なことを言わないで!』


 番えた矢から手を離し、魔力を纏った矢は天高く飛び立つのでした。



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