エルフさんが通ります
動くシェリー
「お嬢様」
シェリーはカップを傾け紅茶の香りを楽しんでいると気配が全くなかったアリエルが姿を現わす。しかし、シェリーは突然現れたアリエルに驚くことなく香りを楽しんだあとにアリエルへと目をやる。
「どうしたのかしらアリエル」
そんないつもと変わらぬ主人にホッとしながらもアリエルは僅かに頭を下げる。
「お嬢様、ほかの色が動きました」
「あらどこが動いたのかしら? 青はもう壊滅状態だし、紫かしら?」
色というのは黒の軍勢の派閥を指す。
シェリーは黒薔薇、すなわち黒であり、リリカにカジノごと消し飛ばされたヴィツーは青薔薇、これは青に該当するのだ。このように黒の軍勢の中には無数の色の薔薇の派閥があり、『魔王復活』という目的に向け独自に動いているのだ。
「それが…… 緋と青と翠、そして白です」
そんな中、アリエルの報告を聞いたシェリーは僅かに目を見開いた。
「あらあら、四色も動いたの?」
先に述べたように黒の軍勢の目的は『魔王の復活』である。
しかし、これは各派閥の最終目標でしかない。各派閥にはそれぞれの目的があり最後に『魔王の復活』が達成されればいいのだ。そのため利害が一致しない派閥が同時に同じ目的に向かうというのは極めて異例。そのことにシェリーは驚いたのだ。
『緋、白、翠は確か欠片を一つずつ持っていたわね』
「はい、青薔薇の物はリリカ様が手にしていますが緋と翠、そして白は一つずつ保持しています」
「これは困りましたわね。私の思い通りにいきませんしなによりバランスが崩れてしまいます」
「はい、私たちが把握している欠片の場所は六ヶ所です」
「最後の一つの場所もわかっていますが簡単に手に入る場所ではありませんし仕方ありませんわね」
深々とため息をついたシェリーはカップをソーサラーへと置き、ゆっくりと椅子から立ち上がる。
「仕方ありませんわね。もう少しリリカさんが世界を掻き回す様を見ていたかったのだけど」
「はい」
「仕方ないわ。予定を崩されるのは嫌だもの」
シェリーがそう告げ、手を無造作に突き出す。すると空間を歪め、シェリーの手は消えたように見えるのだが実際にはただ探し物をしているだけである。目当てのものを見つけたのから手を出し引くような素振りをするとそこには傷一つ付いていないシェリーの手が見て取れた。そしてもしアリエル以外の者がシェリーの手にしているものを目にしたのであれば誰もが眉をひそめ疑問をもったことであろう。
「少しばかり予定が早まりましたが仕方ありません。これを使い降臨していただくとしましょう」
「かしこまりました」
主の決定にアリエルは口を挟まずに膝をつき頭を垂れる。
「どうせなら楽しくしたいものですわね。幸いなことに器の候補はたくさんいらっしゃることですしね」
そう告げながら軽い足取りで歩き始める。アリエルはその背後に静かに続く。
鼻歌を歌い、笑みを浮かべるシェリーの顔にはリリカと同じ悪戯をする前の悪い笑顔を浮かべられていた。
「ああ、どうせならリリカさんに楽しんでいただけるように喜劇を演出して見ましょう!」
「お嬢様の御心のままに」
「これで黒の軍勢はもういらないわね。今までよく踊ってくれてありがとうございます。お父様」
扉を開け僅かに室内へと振り返ったシェリーの視線の先には身体中が剣で串刺しにされているシェリーのお父様の姿があった。すぐに関心がなくなったのかシェリーは扉を閉めるとアリエルを引き連れている外を目指す。
その手にリリカが持つ魔ノ華と同じ形をした白い剣を振り回しながら。
シェリーはカップを傾け紅茶の香りを楽しんでいると気配が全くなかったアリエルが姿を現わす。しかし、シェリーは突然現れたアリエルに驚くことなく香りを楽しんだあとにアリエルへと目をやる。
「どうしたのかしらアリエル」
そんないつもと変わらぬ主人にホッとしながらもアリエルは僅かに頭を下げる。
「お嬢様、ほかの色が動きました」
「あらどこが動いたのかしら? 青はもう壊滅状態だし、紫かしら?」
色というのは黒の軍勢の派閥を指す。
シェリーは黒薔薇、すなわち黒であり、リリカにカジノごと消し飛ばされたヴィツーは青薔薇、これは青に該当するのだ。このように黒の軍勢の中には無数の色の薔薇の派閥があり、『魔王復活』という目的に向け独自に動いているのだ。
「それが…… 緋と青と翠、そして白です」
そんな中、アリエルの報告を聞いたシェリーは僅かに目を見開いた。
「あらあら、四色も動いたの?」
先に述べたように黒の軍勢の目的は『魔王の復活』である。
しかし、これは各派閥の最終目標でしかない。各派閥にはそれぞれの目的があり最後に『魔王の復活』が達成されればいいのだ。そのため利害が一致しない派閥が同時に同じ目的に向かうというのは極めて異例。そのことにシェリーは驚いたのだ。
『緋、白、翠は確か欠片を一つずつ持っていたわね』
「はい、青薔薇の物はリリカ様が手にしていますが緋と翠、そして白は一つずつ保持しています」
「これは困りましたわね。私の思い通りにいきませんしなによりバランスが崩れてしまいます」
「はい、私たちが把握している欠片の場所は六ヶ所です」
「最後の一つの場所もわかっていますが簡単に手に入る場所ではありませんし仕方ありませんわね」
深々とため息をついたシェリーはカップをソーサラーへと置き、ゆっくりと椅子から立ち上がる。
「仕方ありませんわね。もう少しリリカさんが世界を掻き回す様を見ていたかったのだけど」
「はい」
「仕方ないわ。予定を崩されるのは嫌だもの」
シェリーがそう告げ、手を無造作に突き出す。すると空間を歪め、シェリーの手は消えたように見えるのだが実際にはただ探し物をしているだけである。目当てのものを見つけたのから手を出し引くような素振りをするとそこには傷一つ付いていないシェリーの手が見て取れた。そしてもしアリエル以外の者がシェリーの手にしているものを目にしたのであれば誰もが眉をひそめ疑問をもったことであろう。
「少しばかり予定が早まりましたが仕方ありません。これを使い降臨していただくとしましょう」
「かしこまりました」
主の決定にアリエルは口を挟まずに膝をつき頭を垂れる。
「どうせなら楽しくしたいものですわね。幸いなことに器の候補はたくさんいらっしゃることですしね」
そう告げながら軽い足取りで歩き始める。アリエルはその背後に静かに続く。
鼻歌を歌い、笑みを浮かべるシェリーの顔にはリリカと同じ悪戯をする前の悪い笑顔を浮かべられていた。
「ああ、どうせならリリカさんに楽しんでいただけるように喜劇を演出して見ましょう!」
「お嬢様の御心のままに」
「これで黒の軍勢はもういらないわね。今までよく踊ってくれてありがとうございます。お父様」
扉を開け僅かに室内へと振り返ったシェリーの視線の先には身体中が剣で串刺しにされているシェリーのお父様の姿があった。すぐに関心がなくなったのかシェリーは扉を閉めるとアリエルを引き連れている外を目指す。
その手にリリカが持つ魔ノ華と同じ形をした白い剣を振り回しながら。
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