エルフさんが通ります

るーるー

やだなぁ、そんなわけないじゃないですか

「く、来るな! バケモノ!」
「失礼な、美少女でしょ?」


 私に向かい、と言っても特に狙いをつけずに放たれる魔弾を魔力を集中さした瞳で捉えながら私は反論します。
 バカみたいに増えた魔力を惜しみなく使っている今の私は魔力を込めた瞳で見た物がかな〜りゆっくりと見えます。
 それこそ魔弾が発射されこちらに迫るのさえです。
 そこまでしなくても魔法道具マジックアイテムの向きからどこに向かって飛んでいくのかを予測することができるのですが飛んで来るのが一つではないので予測はできても回避が難しいのですよね。


「おっと」


 見えていない背後からの攻撃を体を捻り躱すとさらに飛来する魔弾を切り捨てます。そして背後から不意打ちをしてきた奴の方を見ると驚きの表情を作っていました。


「くそ! なんであたらねぇ⁉︎」
「完璧に背後を見ていやがらなかったのに避けやがった! 背中に目でも付いてやがるのか!」
「やだなぁ、そんなわけないじゃないですか」


 背中に目があればそれはそれで完璧な化け物ですがそんなわけありません。私がしたのは魔力が多くなったからできる方法、自分の体の周りを魔力で覆い服のようにしただけなんですからね。これは防御用ではなく感知するためのものなので攻撃を受けたら普通に痛いのですがこの状態ですならば例え見えていない背後からの攻撃でも魔力の服に触れた瞬間に私が反応できるというものです。
 超視力、身体超強化、さらには超反応という魔力を喰う三つの魔法を同時に展開さしているにも関わらず私の体内の魔力の減りは非常に緩やかですからね。


 迫る魔弾を踊るように避けながら距離を詰め、擦れ違いざまに超振動の魔法を発動さしたままの魔ノ華マノハナを振るい叩き斬る。これを幾度も繰り返していくわけなんで私がかなり優勢ではるんですが徐々に私が動けなくなってきます。
 別に魔力が尽きかけているとかではなくローブ組の動きが変わってきたからです。


「ああ、もう!」


 苛ただしげに唸ると私は動き迫る魔弾を切り払いさらに回転。背後からの魔弾も切り裂きます。


「くーちゃん、さっさとゼィハを起こしてください! 守りながら戦うのはめん…… 辛いです」
『今面倒って言いかけたよね⁉︎』


 いまだに気絶したままのゼィハの顔にビンタを喰らわし起こそうとしていたくーちゃんが叫びます。
 そう、ローブ組の狙いが暴れまわる私から気絶して防御もできない状態にあるゼィハへと移ったために私も動けないゼィハを守るために攻め切れず身動きが取れなくなっているのです。


「むー! こっちに来ない!」


 遠くから魔法道具マジックアイテムを打ち続ける奴らにイラつきます。あの距離では魔ノ華マノハナを振り回しても届きません。


『リリカ! あの前にやった糸みたいなやつにするやつは!』
「やってもいいですが確実にくーちゃんたちを守れませんよ?」


 あれは少しためがいるんですよね。一人ならば避けれるんですが守るとなると他二人を見捨てるしかありません。


『がんばって守って!』
「しかし、そうなると手詰まりなんですよね」


 魔力が増えたことでできることは増えましたが私の使う大技には微妙なタメが存在しますからね。かといって魔ノ華マノハナの刃を伸ばしてみてもやすやすと躱されてますしローブどもはやたらと動きが早い。


 ……面倒だから守るのをやめてぶっ飛ばしたほうが早そうな気がします。


『やめてよね⁉︎ 本当にやめてね⁉︎』
「そんな焦らなくてもくーちゃんは魔力で守ってるじゃないですか。それでゼィハも数秒守っでもらえれば……」
『自分の周りに魔力を広げると魔力の消費量が跳ね上がるんだよ⁉︎』


 となるとこのちまちました攻防をまだ続けないといけないわけなんですがね。どっちの魔力の消費が多いかは謎ですが。
 しかし、正直な話が飽きるんですよね。
 いっそのこと本当に見捨てようかと考えた瞬間、私の視界に黒い魔力の閃光と白い魔力の閃光がぶつかり合っているのが目に入ります。そして数秒後、私の頭にいいアイディアが浮かび上がります。


「ああ、これでいきましょう」
『ま、また悪い顔してるよ!』


 美少女はどんな顔をしても絵になるんですよ。

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