エルフさんが通ります

るーるー

残念だなぁ

 オリハル山に向かうことにしたので物資の補給をダークエルフの里で行うわけなのですがなんと必要なものはほぼ無料で手に入りました。
 ダークエルフたちは慈悲深いんですね。


『結界ぶちぬいてデュラハンを作り出して挙句に交渉中にデュラハンに武器の素振りをさしてたら誰もがタダとしか言えなくなると思うけど?』


 失礼なことを言いますね。
 私はシャチクに渡した武器に慣れておきなさいと言っただけです。武器の訓練をする位置を指定したのは確かですがね。


「ゼィハ、あなたの準備は?」
「できてますよ。むしろ長老たちが早くあたしを追い出そうとしていることに少し悲しくなりました」


 どうやらダークエルフ達はとっとと私達に出て行って欲しいようですね。
 まぁ、わからないでもないです。
 滞在して三日、家屋はほぼ壊され、里で一番の戦士は魔物になり、挙句の果てには里を隠すために使っていた結界を作っていた森が吹き飛ばされ結界が動かなくなっているんですから。
 ダークエルフ達の心内としてはこのまま居座られてはなにをされるかわかったものではないと行ったところでしょう。


「なんなら家作りをまだやりますか?」
「さ、準備ができたならいきましょう!」


 そんなに里に居たくないんでしょうか? お見合い問題は解決しているから残っても問題はないと思うんですがね。


「イヤイヤイヤイヤ! このままあたしが残ったらあたしがなにされるかわからないじゃないですか!」
「あなたなら生き残るんでは?」


 なんとなくゼィハはしつこそうですしね。


「死んだらシャチクみたいに生きかえらしてもいいですよ?」
「え、あれ生き返るっていうか別物になってるじゃないですか……」


 ゼィハがシャチクに目をやりながら嫌そうな顔をしています。なぜかシャチクは片方で親指を立て、もう片方で手招きをしていました。
 うーん、あれはどれくらい呪いの力を使えばいいかわからなかったから全力でやってみたからああなったんですよね。おそらくですが今ならばある程度の制御は可能だと思うんですが……


「一回試してみます?」


 私がぽちの刀身を鞘から少しばかり覗かして尋ねてみるとゼィハは残像が残るほどの速度で首を左右に振り否定します。


「そんな自分が死ぬようなことを死にかけの時ならともかく健康な時に実験で支度はありません」
「えー」


 少し試したかったんですがね。
 もしかしたらゼィハはシャチクとは違う形になるのかなと興味を持ったんですかま断られた仕方ありません。


「残念だなぁ」
「ちょ⁉︎ 残念だなぁとか言いながら武器を振り回すのはやめなさい!」


 ち、あわよくば事故でやろうかと思いましたが当たる場所に降ったぽちは見えざる手イマジンハンドによって防がれてしまいました。


「わかりましたよ」


 私がため息まじりにぽちを鞘へと納めたのを見てゼィハがホッと息を吐き出していましたがここで一気に引き抜いて首をはねてもおもしろいかもしれませんね。


『リリカ〜 果物いれた?』
「……いれときたしたよ」


 少しばかり柄を持つ手に力を入れている時にくーちゃんの毒気が抜かれたためにぽちの柄から手を離します。


 死体になった時には活用するとしましょう。


「……なにか嫌な予感がしたんですが」
「気のせいですよ」


 勘が鋭くなりつつあるゼィハを軽くかわしながら、雷纏う戦車ライジングチャリオットへとシャチクを取り付けていきます。元々繋いでいた馬達はダークエルフ達に差し上げました。
 おっかなびっくりといった様子で馬を受け取っていましたが特になにも仕込んではいませんがね。


 これからはシャチクに引かせれば前方に敵はいないことでしょう。横のほうは雷纏う戦車ライジングチャリオットの雷で十分です。


「さあ、いきますよ」
『はーい』
「はやくいきましょう! 里の人の目が怖すぎます!」
「ハイヨロコンデ。休日出勤万歳」


 ……なにか新しい言葉を覚えてますね。
 さあ、勇者妨害に行きましょうか。



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