エルフさんが通ります

るーるー

本当に性格が悪い

「いやはや、あの時の勇者様の悲壮に満ちた顔は見ものでしたわ。あの表情ならば魔族に高値で売れるでしょう」


 ニタニタという音がなりそうな笑みを浮かべるシェリーを見ていると「ああ、そう言えばこいつ魔族だったなぁ」ということを思い出します。
 背後のアリエルも同じように魔族なわけですが全くの無表情です。


『せ、性格悪!』
「実際は元々の性格でただ単に勇者様が弱いだけなのに魔王のせいで強くなってると思い込んでいた勇者様は見ていて滑稽でしたわ」
「本当に性格が悪い」


 しかもそれが私に害がないのであればさして問題ではないんですがね。完璧に私を巻き込んで来やがりました。


「ですがリリカさん、これであなたは勇者様が強くなるのを阻止しなければ力を増した勇者様に殺されてしまいますよ」


 うっとりとした艶のある声でシェリーは楽しげに言います。
 しかし、勇者よ。
 そんなにあっさりと騙せれていていいんでしょうか。一応魔族って人類の敵って扱いのはずなんですが普通に利用されてますよ。


「でも勇者がオリハルドラゴンに倒されるってこともありえますよね」
『あ、そっか。勇者が死んじゃう可能性もたしかにあるよね』


 冒険者が束になっても叶わないんですから勇者も勝てるとは思わないんですが。


「歴代の勇者様たちはオリハルドラゴンを倒すことはできなくても腕を切り落としたり鱗を削ったりはできたというのが古くからの言い伝えでは残っていますわ」
「カズヤが弱すぎるだけなんでしょうか? それともオリハルドラゴンが言われているよりも弱いんでしょうか?」
「いえ、オリハルドラゴンは街どころか国を滅ぼすほどの強さですわ」


 勇者強すぎでしょ……


「じゃ、カズヤが弱いんですね」
「確かに歴代の勇者様の中では最弱と名高いですし」


 歴代の中で最弱なんじゃぁカズヤはほっといても死ぬのが確定しているようなものじゃないですか。


「知らないんですか? 勇者の持つ聖剣は覚醒していなくてもドラゴンへの特攻五十倍がついてるんですよ?」


 え…… そんなのただのズルじゃないですか。特攻五十倍ってどんだけの威力になるんでしょう。たしか勇者ビームだけでもかなりの威力だった気がしますが下手したら大陸の地形どころか地図の書き直しが必要になるくらいなんでしょうね。


「というわけでどんなに弱いゴミみたいな勇者様であっても勝ってきまわ」
「えー」


 つまりこのまま放っておくとどうやってもカズヤが次に姿を現わす時は聖剣が覚醒してパワーアップしている状態で現れるということですか。


「はぁ……」


 どうやっても私が妨害をしないといけない流れにしているんですね。気に入らない流れですが仕方ありません。


「ほら、ゼィハ行きますよ」


 豚さんとの決闘以降今まで一言も発していないゼィハに声を掛けますがまったく反応が見られません。
 不審に思い振り返ると干物のようにガリガリになっているゼィハが転がっていました。


「あ……」
『ガリガリだよ』


 決闘の時に結界の中に一緒にいたゼィハ。
 さらには結界の中を満たすほどのリリカゴースト。
 さらにはゴーストは生きて者を憎むという性質を考えると結界の中にいたゼィハも対象に入っていますね。辛うじて生きているのが不思議であるくらいですね。
 ゼィハにはあとで以前と同じようにポーションをたらふく飲ませるとしましょう。


「で、オリハルドラゴンはどこにいるんですか?」
「あら、知っているものだと思いましたが?」


 さも意外なものを見るかのように私をみてきます。
 知ってるのはオリハルドラゴンの話だけで住処までは興味がないから調べていないんですよ。


「オリハルドラゴンが住む場所はこの里の遥か北にある山、オリハル山ですわ」


 また微塵も捻りがない場所に陣取ってるようですね。

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