エルフさんが通ります
欲しければ私を倒してみてください
「はぁ、みっともないからやってあげますよ」
街で時折見かける駄々をこねる子供のような豚を見下げながら私は仕方なしに決闘を受けることにします。
というか周りのダークエルフ達が頼むから受けてあげてくれと言われた(挙げ句の果てには土下座までされた)ために受けることにしたわけなんですがね。
しかし、この豚はゼィハより強いと聞いたんですがねぇ。
鞘からぽちを抜き刃の付いていない方で肩を軽く叩きながら私の前で決闘の準備をしているダークエルフ達に目をやります。
なにやら呪文のようなものを唱えながら紙のような物を均等な間隔で置いているのを見るとおそらくは結界のようなものを作り上げているんでしょう。それを見ていると大精霊のように何の準備もなしに結界を張るというのがいかに非常識であるかということがわかるものです。
「ふぁぁぁぁ、眠い。さっさと足でも切り落として寝るとしましょう」
『え、なにその軽さ。罪悪感とかないの?』
くーちゃんが信じられないようものを見るような目で私を見てきます。が私はそれを手で欠伸を隠しながらも苦笑します。
ダークエルフの里についたのは陽も登らぬ朝方でしたからね。夜はゼィハ捕まえるために起きていたりここに来るまでには雷纏う戦車を操ったりで全く寝てませんし。まあ、楽しかったんですが。
「……当たりどころが悪くて殺してしまうかもしれません」
「それは許可しましょう!」
『しちゃうの⁉︎』
私の背後で座っていたゼィハが鼻息荒く許可してきました。座っているにも関わらず周囲では木材が空を飛び、建物が次々と出来上がっているのを見ると幻想義手を行使し続けているのがよくわかります。それと同時にゼィハの顔色の悪さも。
「もう、魔力の使いすぎであたしもやばいんですよ。というかさっさと里から出たいです」
そう告げるゼィハは無理なダイエットをしたかのように頰がこけています。
確か無理な魔力行使をすると非常につかられるというのを里で読んだことがありましたがここまでとは。
「……あいつをぶっ殺してお見合いをなくしてさっさとこの里を出る……じゃないとじゃないと……」
ぶつぶつと血走った目で何か追い詰められたかのように呟くゼィハの姿はやたらと不気味で私とくーちゃんは無言でわずかに距離を取ることにします。
『ゼィハこわいね』
「里で読んだ昔の本にも書いてありましたがああいう風に無料で働く人のことをしゃちく、と呼ぶらしいですよ」
『どういう意味なの?』
「働くのが大好きな人のことらしいですよ」
なんか他にもブラックきぎょう、サービスざんぎょうなんて言葉も載ってましたね。昔の人はよく働いたのでしょう。
「待たせたな!」
先ほどまで無様な泣いていたとは思えないほどやる気に満ち溢れたような表情で豚が私の対面に立ちます。
その手にはその緩みきった体で振るえるのかというほどのバカみたいな大きさの剣がありました。明らかに豚の体よりも大きなものです。
「ええ、かなり待ちました。ですから私の不戦勝ということにしませんか?」
「ふざけてんのか!」
怒られました。
いや、いたって真面目なんですがね? 
だって戦ってばっかりじゃエルフ=戦闘狂みたいな括りにされてしまいそうじゃないですか。
「リリカさん、それはもう遅いかと思いますが?」
「え、遅いの?」
「ええ、あなた方エルフがやっている所業は蛮族とさほど変わりありませんよ? 見目麗しい凶戦士というのが最近のエルフ族の見られ方です。知的とは縁がないような存在ですよ」
『血的なエルフ?』
「なにやら読みが同じなだけで違う文字を使われているような気がするんですが…… むぅぅ」
一度ついたイメージというのはそう簡単に拭えるものではありませんからね。プラスで考えるのであれば幸いなことにエルフは長寿です。時間をかけていくしかなさそうです。私以外が。
「で、まだかかってこないんですか?」
話をしている間も一切攻撃の意志のようなものが見られない豚の方へ向き直ります。
「そんな卑怯なことができるか! 俺はダークエルフ一の戦士だからな」
「はいはい」
自信に満ち溢れたように宣言してくる豚にひらひらと手を振ります。
里で一番強い=強いという図式はすでに通用しないと思うんですがね。
ひらひらと振っていた手を返し、挑発するように手招きをしてやります。
「時間がもったいないから早くきてください。私は眠いんです」
「上等! お前を倒してゼィハたんと結婚まで持って行ってくれるわ!」
「え、そんな話あたしは了承してな……」
「いいでしょう、ゼィハが欲しければ私を倒してみてください」
ゼィハが顔を青くしながら否定の言葉を述べようとするのを遮り私は豚をさらに煽ります。
「おおおおおおお!」
雄叫びを上げながらどたどたと見苦しい走り方をしながら突っ込んでくる豚に私は薄い笑みを口元に浮かべながらぽちを油の乗った腹に向け繰り出しました。
「ねぇ⁉︎ あたし結婚なんてしたくないんですけど⁉︎」
もちろんゼィハの言葉は無視して。
街で時折見かける駄々をこねる子供のような豚を見下げながら私は仕方なしに決闘を受けることにします。
というか周りのダークエルフ達が頼むから受けてあげてくれと言われた(挙げ句の果てには土下座までされた)ために受けることにしたわけなんですがね。
しかし、この豚はゼィハより強いと聞いたんですがねぇ。
鞘からぽちを抜き刃の付いていない方で肩を軽く叩きながら私の前で決闘の準備をしているダークエルフ達に目をやります。
なにやら呪文のようなものを唱えながら紙のような物を均等な間隔で置いているのを見るとおそらくは結界のようなものを作り上げているんでしょう。それを見ていると大精霊のように何の準備もなしに結界を張るというのがいかに非常識であるかということがわかるものです。
「ふぁぁぁぁ、眠い。さっさと足でも切り落として寝るとしましょう」
『え、なにその軽さ。罪悪感とかないの?』
くーちゃんが信じられないようものを見るような目で私を見てきます。が私はそれを手で欠伸を隠しながらも苦笑します。
ダークエルフの里についたのは陽も登らぬ朝方でしたからね。夜はゼィハ捕まえるために起きていたりここに来るまでには雷纏う戦車を操ったりで全く寝てませんし。まあ、楽しかったんですが。
「……当たりどころが悪くて殺してしまうかもしれません」
「それは許可しましょう!」
『しちゃうの⁉︎』
私の背後で座っていたゼィハが鼻息荒く許可してきました。座っているにも関わらず周囲では木材が空を飛び、建物が次々と出来上がっているのを見ると幻想義手を行使し続けているのがよくわかります。それと同時にゼィハの顔色の悪さも。
「もう、魔力の使いすぎであたしもやばいんですよ。というかさっさと里から出たいです」
そう告げるゼィハは無理なダイエットをしたかのように頰がこけています。
確か無理な魔力行使をすると非常につかられるというのを里で読んだことがありましたがここまでとは。
「……あいつをぶっ殺してお見合いをなくしてさっさとこの里を出る……じゃないとじゃないと……」
ぶつぶつと血走った目で何か追い詰められたかのように呟くゼィハの姿はやたらと不気味で私とくーちゃんは無言でわずかに距離を取ることにします。
『ゼィハこわいね』
「里で読んだ昔の本にも書いてありましたがああいう風に無料で働く人のことをしゃちく、と呼ぶらしいですよ」
『どういう意味なの?』
「働くのが大好きな人のことらしいですよ」
なんか他にもブラックきぎょう、サービスざんぎょうなんて言葉も載ってましたね。昔の人はよく働いたのでしょう。
「待たせたな!」
先ほどまで無様な泣いていたとは思えないほどやる気に満ち溢れたような表情で豚が私の対面に立ちます。
その手にはその緩みきった体で振るえるのかというほどのバカみたいな大きさの剣がありました。明らかに豚の体よりも大きなものです。
「ええ、かなり待ちました。ですから私の不戦勝ということにしませんか?」
「ふざけてんのか!」
怒られました。
いや、いたって真面目なんですがね? 
だって戦ってばっかりじゃエルフ=戦闘狂みたいな括りにされてしまいそうじゃないですか。
「リリカさん、それはもう遅いかと思いますが?」
「え、遅いの?」
「ええ、あなた方エルフがやっている所業は蛮族とさほど変わりありませんよ? 見目麗しい凶戦士というのが最近のエルフ族の見られ方です。知的とは縁がないような存在ですよ」
『血的なエルフ?』
「なにやら読みが同じなだけで違う文字を使われているような気がするんですが…… むぅぅ」
一度ついたイメージというのはそう簡単に拭えるものではありませんからね。プラスで考えるのであれば幸いなことにエルフは長寿です。時間をかけていくしかなさそうです。私以外が。
「で、まだかかってこないんですか?」
話をしている間も一切攻撃の意志のようなものが見られない豚の方へ向き直ります。
「そんな卑怯なことができるか! 俺はダークエルフ一の戦士だからな」
「はいはい」
自信に満ち溢れたように宣言してくる豚にひらひらと手を振ります。
里で一番強い=強いという図式はすでに通用しないと思うんですがね。
ひらひらと振っていた手を返し、挑発するように手招きをしてやります。
「時間がもったいないから早くきてください。私は眠いんです」
「上等! お前を倒してゼィハたんと結婚まで持って行ってくれるわ!」
「え、そんな話あたしは了承してな……」
「いいでしょう、ゼィハが欲しければ私を倒してみてください」
ゼィハが顔を青くしながら否定の言葉を述べようとするのを遮り私は豚をさらに煽ります。
「おおおおおおお!」
雄叫びを上げながらどたどたと見苦しい走り方をしながら突っ込んでくる豚に私は薄い笑みを口元に浮かべながらぽちを油の乗った腹に向け繰り出しました。
「ねぇ⁉︎ あたし結婚なんてしたくないんですけど⁉︎」
もちろんゼィハの言葉は無視して。
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