エルフさんが通ります

るーるー

なんで真っ赤なんです?

『リリカ! リリカ!』


 声が聞こえます。頭がぼーとしますが声が聞こえるのはわかります。起きなきゃと体を動かし、激痛が至る所を走り回り、ぼやけていた頭、視界が一気にクリアになります。


「いっだぁぁぁぁぁぁぉぁ⁉︎」


 激痛というのも生ぬるい。でも生きてるので死ぬほどではない痛みが絶えず襲ってきたため大声を上げてしまいます。


『リリカ⁉︎ よかった生きてた!』


 涙ぐんだくーちゃんが私の体に体当たりをするかのように飛び込んできます。いつもならたいしたことがない衝撃ですが今は涙が出るほどに痛いです。


「く、くーちゃん、少し離れてください。あとなんで真っ赤なんです?」


 私の眼に映るくーちゃんは余すとこなく血に濡れたかのように全身が真っ赤です。


『リリカ、きづいてないと思うけど額が切れて血が流れてるんだよ』


 自分の額を指すようにしていたくーちゃんに言われるがまま額を触るとべったりと血が触った手につきました。なるほどこれが目に入ってくーちゃんが赤く見えたわけですね。確かに周りを見渡してみれば全部赤いです。横には気絶する前にみた瓦礫らしきものが真っ二つなは砕けて転がっていました。


『いや、リリカの頭が石頭で本当によかったよ! 瓦礫が寸分狂わずに頭に直撃てたからね』
「……それで眼に血が入ったんですね。あ、あと鼻血も出てるみたいです」


 痛み体を動かしとりあえずは座り、腕を無理やり動かし眼や鼻を拭うと服にたっぷりと血が付きます。
 よかった! 私の体、エルフの体で本当によかった! 今この時ほどエルフに生まれたことを感謝したことはありませんでした。


「で、どれくらい気を失ってました?」
『二、三分だよ? リリカ大丈夫?』
「大丈夫です。それよりあのは勇者バカとヴィツーは?」


 尋ねた答えが返ってくるよりも早くに熱波が私を襲います。視線を上げるとカズヤが光り輝く聖剣を振りかざしながらヴィツーとぶつかっているところでした。


「ぬがぁぁぁぁ!」
「勇者ブレェェェド!」


 二人は互いに叫び合いながらぶつかり会い数度打ち合っては離れるというのをひたすらに繰り返しています。その度にその余波の煽りを受けるかのようにして周囲の建物が崩れる、もしくは高熱に耐えきれないかのように溶け出していました。この国に住んでる人達には天災にあったと思ってもらうしかありませんね。


「皇帝死んでますけどこの国は大丈夫なんですかね」


 今思い出せば爆破さしたところには剣聖の姿もありましたね。この国の民達のためにはまぁ、後継者が死んでないことを祈っておいてあげましょう。祈るだけならタダですし。
 そんなことを考えながら魔法のカバンマジックバックに手を痛めながら滑らせ中から船上で作り上げた薬、超再生薬を取り出し一気に飲み干します。瞬間、体全体を覆っていた激痛が気を失いそうになるような痛みへと変わります。それを歯を食いしばり堪えます。この薬は大概の傷なら治してくれるんですがその際に激痛が襲ってくるんですよね。
 砕けていた腕が徐々にもどり、所々切れていた皮膚も時間を巻き戻すように塞ります。軽く血を拭うとその下には傷など見当たらない皮膚が見えました。


「よし」


 痛みが引いたことを確認した私はゆっくりとした動作で立ち上がり体を軽く動かしてみます。特に異常なしと。
 転がっていた魔ノ華マノハナを拾い上げ軽く振るった後にその漆黒の刀身を眺めます。
 先ほど頭の中? であったアルガンテロアの事を思い出していると次々と頭の中に情報が流れ込んできます。魔ノ華マノハナの本当の能力、使い方、そして魔の欠片とはなんなのかという情報がです。


「なるほど、これは確かに便利ですが頭を覗かれているような感触は深いですね」
『どうしたの?』


 心配そうにくーちゃんが私を見てきています。そんなくーちゃんを安心させるように軽く笑いましたが何故かくーちゃんは顔を蒼くして後ろに下がりました。


「起きろ、魔ノ華マノハナ。食い尽くせ」


 私の言葉に魔ノ華マノハナが震え悪食アグラニを使った時のような黒靄が発生します。ですがその黒靄は魔ノ華マノハナの刀身に纏わりつくように動き刃としての形を形成しています。
 それを満足げに見ながら今度は頭上でぶつかり合う化け物を見上げます。


「二人とも生きてるようで好都合ですね」


 さて、新しい能力とともに借りを返すとしましょうか。

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