エルフさんが通ります

るーるー

新手の魔物ですかね?

『豪華な場所は息がしづらい。というか行きたくないもんじゃ。なんかだるいし by長老』


「ああ、なんとなく言ってる意味がわかりましたねぇ」


 現在の場所は帝国の王城。
 天井から下げられた宝石がやたらと散りばめられた装飾品が光を反射させまくっています。あきらかに目に悪そうです。
 あと確実と言っていいほどに空気が悪いです。いろいろな臭いのせいで鼻が痛いです。


「醜悪もとい臭悪です」
「あら、上手いことを言いますわね」


 げんなりしている私の横では澄ました顔でいたシェリーが何か面白いものを見たかのような目を私に向けてきました。


「シェリー、なんの魔法を使っているか知りませんがいいご身分ですね」
「サンクロレディア、です。シェリーではありませんよ」
「はいはい」


 面倒ですね。シェリーなのに別の名前で呼ばないといけないとは。まぁ、今更言っても仕方ありませんからね。
 私は諦めるようにため息をつき周囲を見渡します。といっても知り合いなどいるはずもなく見る人見る人が初めて見る方々なわけなんですよね。


「そういえば、シェ…… サンクロレディア。このぶとうかいとやらは一体なんのために行われるものなんです?」


 こういった模様しはなにか理由があって開かれるもののはずですからね。


「この舞踏会は言うならばお披露目ですよ」
「お披露目?」


 誰のでしょう? 王位継承権の正式な発表でしょうか。
 そうなると必ずヴィツーが妨害してくると思いますが。


「勇者のですよ」
「勇者? ああ、カズヤですか」


 そういえば勇者一同も帝国にきているんでした。


「となると勇者 パーティが全員いるわけですか」


 なにそれ、とんでもなく面倒なことじゃないですか。暗殺どころの話ではありませんよ。カズヤとククの実力はわかりませんがフィー姉さんと闘うのは非常に面倒なんですが。


「こちらからも質問をしても?」
「私のわかる範囲なら答えますよ」
「今日はあのダークエルフと精霊はご一緒ではないのですか?」
「あー、あの二人は留守番です」


 というか誘ったら微妙な顔をして断られたんですよね。


「あ、見付けた~」


 大きな声で呼ばれたため振り返ると真紅のドレスに身を包んだフィー姉さんが手をふり、周りの人たちを蹴散らしながらこちらに向かってきていました。
 なんというか視界に入っていないような感じですね。


「ではリリカさん、私は失礼ますわ」
「え、私、一人にされちゃう系?」


 まるでフィー姉さんをおそれるかのようにして高速でシェリーが移動していきます。後ろに控えているアリエルも同じように動いているように見えないにも関わらず高速で動いていきます。
 あれ、新しい魔法なんでしょうかね。


「来てたの〜? どうやってきたの〜? 誰の紹介〜? お姉ちゃんにも言ってくれればよかったのに〜 そのドレス似合うわね〜!」


 ええ、悪意がないのはわかってるんです。ですが肩を掴んで逃げ道を防いだ挙句にすごい力で揺さぶるのやめてくだだだだだだだださい。


「姉御、妹君がくるしそう」


 音もなく私とフィー姉さんの間に小柄な少年ヴァンが着飾った姿で現れます。


「ああ、ヴァンくんもいるんですね」
「本来ならば出たくはない。仕方ない。主がでるし」


 無表情の中に若干の面倒くさいという色が見て取れます。しかし、この二人がいるということは他の二人はと。


「クク、あそこ」


 ヴァンが指差したほうへと瞳を向けるとそこだけやたらとカチャカチャという騒がしい音が響いていました。私は一度そこを見たあとに軽く目をこすり見間違いではないかと思いながら再び確認します。


「……あれは現実ですかね?」
「信じたくないのはわかる。けど現実」


 見慣れた光景なのかヴァンは否定してきました。
 私が見た光景、それは残像が残るほどの速度で動きながら料理という料理を皿に乗っけては席に着き、動いている時以上の速さで皿に乗せた料理を書き込むようにして口の中に入れているククの姿がありました。
 その姿は以前見た時と同じ純白のシスター服ではありましたがなんというか周りに積まれている料理の量のせいかあまりにも嘘っぽいシスターとなっていました。
 そして食べ方が女性の割りには凄まじく豪快です。本来ならば切り分けてとるであろう料理は手掴みでとり口の中へと放り込み、フォークに突き刺したものも放り込み、挙句にナイフでは切らずに料理を突き刺し放り込む。そのくせに着ている純白のシスター服には汚れひとつついていないという異常な光景です。 


「新手の魔物ですかね?」


 名前をつけるなら腹ペコ人間といったとこですかね?
 普通では考えられないというか人の許容量を明らかに超えているだろう量を容易く食べていくククをみて思わず感想が口から溢れます。


「いや、あれが普通なんだ。シスターククは」


 ため息をついたヴァンをよそにククは嬉々とした様子で再び皿に大量の料理を乗せ平らげていくのでした。

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