エルフさんが通ります
よばい?
「素敵ですわ!」
本当に他人事だと思ってキラキラした瞳で見てくるのやめてほしいですね。
アリエルに身動きを取れなくされ仕方なしにドレスを着ることを了承した私でしたが早くも後悔し始めています。
やたらとヒラヒラしていますし肩は丸見えですし、この服に防御力を望むのは難しいでしょう。というか斬られたら一発でドレスは斬れるわ、斬られた私の体もあっさりと肉塊に変わるでしょうね。それが恐ろしく不安です。
今思うとエルフの服がどれだけ異常な防御力を誇っていたかがよくわかるというものです。
『リリカも女の子なんだからちゃんと着飾ればいいのに』
「いや、めんどくさいじゃないですか?」
里でもやたらと服やら髪飾りやらを綺麗にするのが好きな人たちはいましたが聞いていると怖気の走るような話ばかりでしたからね。
やれ、髪型のセットに一時間掛かっただの爪の手入れに時間が掛かったなどと自慢し合っていましたし。正直な話、そんなことに時間を使うくらいなら私は睡眠時間を延ばすことに使いますね。
「では今から髪型のセットに入ります」
「え⁉︎ まだやるの⁉︎」
「当たり前です。次はその無造作に放置されていた髪をきっちりと手入れさしていただきます」
私の上げた講義の声など聞こえないかのようにアリエルがどうやってしまっていたのかと聞きたくなるほどの量の道具をスカートの下から幾つも取り出してきます。
「リリカ様、諦めた方がいいです。姉様は一度やると決めたらやりきる女です」
「リリカ様、諦めた方が身のためです。姉さんは一度言ったら変える気はありません。頑固一徹?」
ウルルとククルがやたらと実感のこもったような声で告げてきます。彼女達もなにかあったんでしょうかね。
次にこの三人の主であるシェリーの方へと視線を向けると何故か彼女は上を向き震えていました。
なにやらぶつぶつと小さく呻いています。
「やっばぃ、美少女の裸体やっばぃ……」
なにを言ってるのかよくわかりませんが褒められているんでしょうか?
普通なら聞こえないくらいの声ですがエルフの耳はきっちりと戯言でも拾ってくれるのです。
「はぁ」
ため息をつきげんなりとしてしまいます。
このドレスを着るためだけに早一時間は経つでしょう。さらに髪型のセットなんてしていたらどれだけ時間が掛かるかわかったものではありません。
逃げましょう。
決心すると同時に背後の扉に意識を向けます。扉の両脇にはククルとウルルが控えていますが残り少ない魔力を一時的に全開まで上げれば突破できるでしょう。
決定です。
「逃がしませんよ」
「ひぃぃ⁉︎」
魔力を練り上げようとした瞬間、アリエルに肩を結構な力で掴まれ逃走を阻止されます。
「装飾品や服に関してはアリエルは凄まじいまでの執念を見せますので注意してくださいね?」
「その情報はもっと早くに欲しかったですね」
他人事のように言ってくるシェリーを睨みつけますがシェリーは視線には全く気が付かずにカップを傾け優雅にお茶を飲んでいました。
「まずはこの髪から」
「……もう好きにしてください」
嬉々として私の髪を触ってくるアリエルの異様な気配にさすがに私は諦めました。
「ふんふんふーん」
髪をやたらとなんとも感想に困るような微妙な鼻歌混じりアリエルがでいじくりまわしている軽いノックと共にゼィハが部屋に大きな荷物を抱えて入ってきました。
「……やはり捕まっていましたね」
「わかってたならば一言欲しかったですね」
「動かないでください」
「あだぁ⁉︎」
ゼィハの軽口に応えるように軽く頭を動かしながら答えるとアリエルに怒られ頭を無理やり元の位置に動かされます。地味に首筋が痛いです。ゼィハはというとなぜか暗い笑みをかすかに浮かべると何事もなかったかのようにベッドに寝そべり袋から勝手したらしい本を取り出し読み始めました。なんたる自由人。
「でも、なんで今こんな服を着せられるんです?」
「誘惑のためですわ」
「いや、それはわかったんですけどね……」
知りたいのは何故今なのかということなんですがね。なんだかんだとしているうちにすでに日が沈み始めていますし。
今着せても誘惑に行くなら昼にしないとダメだと思うんですが。
「あら、夜這いなら問題ないでしょう?」
「よばい?」
なんでしょう? 聞いたことがない言葉です。
私が首をかしげようとするとアリエルが無理やりに元の位置に戻すので頭の中に疑問符が浮かぶだけです。
そしてしっかり頭の中に大きな疑問符を浮かべているとバサリと何かを落とすような大きな音が鳴り響きました。そちらを向いた瞬間、再びアリエルの無言の怪力によって頭を元の位置に戻されます。
彼女にはおもいやりとかそういったものが全く足りない気がします。
首に痛みを覚えながらそう思います。
「よ、夜這いですって!」
瞳だけ動かし横眼で音のなった方を見ると凄まじく動揺したようなゼィハがわなわなと震えていました。
「あ、あたしまだえっちしたことないのに! 夜這い⁉︎」
ゼィハは一体なにを言っているのでしょう?
本当に他人事だと思ってキラキラした瞳で見てくるのやめてほしいですね。
アリエルに身動きを取れなくされ仕方なしにドレスを着ることを了承した私でしたが早くも後悔し始めています。
やたらとヒラヒラしていますし肩は丸見えですし、この服に防御力を望むのは難しいでしょう。というか斬られたら一発でドレスは斬れるわ、斬られた私の体もあっさりと肉塊に変わるでしょうね。それが恐ろしく不安です。
今思うとエルフの服がどれだけ異常な防御力を誇っていたかがよくわかるというものです。
『リリカも女の子なんだからちゃんと着飾ればいいのに』
「いや、めんどくさいじゃないですか?」
里でもやたらと服やら髪飾りやらを綺麗にするのが好きな人たちはいましたが聞いていると怖気の走るような話ばかりでしたからね。
やれ、髪型のセットに一時間掛かっただの爪の手入れに時間が掛かったなどと自慢し合っていましたし。正直な話、そんなことに時間を使うくらいなら私は睡眠時間を延ばすことに使いますね。
「では今から髪型のセットに入ります」
「え⁉︎ まだやるの⁉︎」
「当たり前です。次はその無造作に放置されていた髪をきっちりと手入れさしていただきます」
私の上げた講義の声など聞こえないかのようにアリエルがどうやってしまっていたのかと聞きたくなるほどの量の道具をスカートの下から幾つも取り出してきます。
「リリカ様、諦めた方がいいです。姉様は一度やると決めたらやりきる女です」
「リリカ様、諦めた方が身のためです。姉さんは一度言ったら変える気はありません。頑固一徹?」
ウルルとククルがやたらと実感のこもったような声で告げてきます。彼女達もなにかあったんでしょうかね。
次にこの三人の主であるシェリーの方へと視線を向けると何故か彼女は上を向き震えていました。
なにやらぶつぶつと小さく呻いています。
「やっばぃ、美少女の裸体やっばぃ……」
なにを言ってるのかよくわかりませんが褒められているんでしょうか?
普通なら聞こえないくらいの声ですがエルフの耳はきっちりと戯言でも拾ってくれるのです。
「はぁ」
ため息をつきげんなりとしてしまいます。
このドレスを着るためだけに早一時間は経つでしょう。さらに髪型のセットなんてしていたらどれだけ時間が掛かるかわかったものではありません。
逃げましょう。
決心すると同時に背後の扉に意識を向けます。扉の両脇にはククルとウルルが控えていますが残り少ない魔力を一時的に全開まで上げれば突破できるでしょう。
決定です。
「逃がしませんよ」
「ひぃぃ⁉︎」
魔力を練り上げようとした瞬間、アリエルに肩を結構な力で掴まれ逃走を阻止されます。
「装飾品や服に関してはアリエルは凄まじいまでの執念を見せますので注意してくださいね?」
「その情報はもっと早くに欲しかったですね」
他人事のように言ってくるシェリーを睨みつけますがシェリーは視線には全く気が付かずにカップを傾け優雅にお茶を飲んでいました。
「まずはこの髪から」
「……もう好きにしてください」
嬉々として私の髪を触ってくるアリエルの異様な気配にさすがに私は諦めました。
「ふんふんふーん」
髪をやたらとなんとも感想に困るような微妙な鼻歌混じりアリエルがでいじくりまわしている軽いノックと共にゼィハが部屋に大きな荷物を抱えて入ってきました。
「……やはり捕まっていましたね」
「わかってたならば一言欲しかったですね」
「動かないでください」
「あだぁ⁉︎」
ゼィハの軽口に応えるように軽く頭を動かしながら答えるとアリエルに怒られ頭を無理やり元の位置に動かされます。地味に首筋が痛いです。ゼィハはというとなぜか暗い笑みをかすかに浮かべると何事もなかったかのようにベッドに寝そべり袋から勝手したらしい本を取り出し読み始めました。なんたる自由人。
「でも、なんで今こんな服を着せられるんです?」
「誘惑のためですわ」
「いや、それはわかったんですけどね……」
知りたいのは何故今なのかということなんですがね。なんだかんだとしているうちにすでに日が沈み始めていますし。
今着せても誘惑に行くなら昼にしないとダメだと思うんですが。
「あら、夜這いなら問題ないでしょう?」
「よばい?」
なんでしょう? 聞いたことがない言葉です。
私が首をかしげようとするとアリエルが無理やりに元の位置に戻すので頭の中に疑問符が浮かぶだけです。
そしてしっかり頭の中に大きな疑問符を浮かべているとバサリと何かを落とすような大きな音が鳴り響きました。そちらを向いた瞬間、再びアリエルの無言の怪力によって頭を元の位置に戻されます。
彼女にはおもいやりとかそういったものが全く足りない気がします。
首に痛みを覚えながらそう思います。
「よ、夜這いですって!」
瞳だけ動かし横眼で音のなった方を見ると凄まじく動揺したようなゼィハがわなわなと震えていました。
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