エルフさんが通ります
蹴りで
「うまうま」
食堂から入手したサンドイッチを頬張りながら私は笑みを浮かべます。しかし、食べている場所は食堂ではなく宿屋の屋根の上という変わった場所です。
「食事しながら仕事をする私は実に勤勉だと思うんですよね」
一人つぶやきながら魔法のカバンから昨日シェリーから貰った魔法道具を取り出します。取り出されたのは紐でくくられ丸められた羊皮紙。その紐を解くと羊皮紙に描かれているのは帝国の街の地図です。ただの地図であればさほど珍しくはありませんがこれは魔法道具。さらにはシェリーが渡してきたものですからね。ロクでもないものなんですが。
「覗き見る真実、眼を開け」
魔法道具を動かすための呪文を唱えると今まではただ描かれていただけだった地図の上に幾つもの点が現れます。それもかなりの量で。
「うげぇ、気持ち悪!」
ざわざわと動き回るその姿はまるで虫のように見えて見ているこちらの気分が悪くなります。
「この動いているの人間だというのがよけいに気持ち悪いですよね」
地図上で動き回る黒い点。これは地図に描かれている場所にいる人間なわけですからね。この魔法道具を使えばどこに人がいるかがわかるという人を追い回す職業の人には必須のアイテムらしいんですよね。なにせ黒い点の下には名前らしいものが記されていますし。
地図を動かしながら王城の方へとうごかしていくと王城では動かないと点がいくつもあることに気付きます。
「止まってるのは守ってる兵士ですかね。しかし、これどうやって皇帝見つけたらいいんですかね」
よくよく考えたら私、この国の皇帝の名前知らないんですよね。そもそも顔すら見た事ありません。いくら名前が表示されていても誰かわからないというのが問題です。
「こういう時は人頼ですね」
屋根から自分の取っている部屋へと入り宿屋の人に尋ねるべく歩こうとすると、
「ハァハァハァハァ」
「……」
人の荷物を漁りながら息を荒くしている人と出くわしました。
いえ、出くわしたというのは正確ではなく私が一方的に発見しました。その証拠に変態は私に全く気付かずに洗濯予定である下着や服をなぜか頭に被ったり匂いを嗅いでいたりしています。
「どちらさまで?」
「っ⁉︎」
突然話しかけられた事に驚いたのか頭に下着を被ったままというかなり間抜けな格好で男は意外にも俊敏に跳びのきます。いつの間に取り出したのか片手にはかなり大振りのナイフが握られています。かなり凶悪なものなんでずもう片方の手にはしっかりと下着が握り締められているので見ていて緊張感が削がれるような光景です。
「お、お前どこから」
「どこからと言われましてもここは私が取った部屋ですし」
どこにいても文句を言われる筋合いはないと思うんですけど。
「宿屋の外出届けには外出と書いてあっただろうが!」
「外出届け? ああ、外出するなら書いてくれと言われたあれですか」
さっきサンドイッチを貰いに行った時に食堂で食べなかったものですから外出すると思われたようでしたので外に行くなら名前を書くように言われたんでした。なんでも三日ほど帰ってこない冒険者の場合は死んでいる可能性があるのでギルドへの問い合わせに名前が必要だとかなんとかと言ってましたね。
そんなわけで私は一応屋根の上(宿屋の外にはいるわけですから外出かな?)というわけで外出のところに名前を記入したわけです。
「台帳を見てるあたり用意周到…… あ! あなた帝国で噂の通り魔ですか?」
「と、通り魔だと?」
あれ、なんか反応が違いますね。そういえばシェリーもどんな通り魔かは一切言っていませんでした。
「ちっ!」
「あ」
一瞬だけ目を離した隙に変態はまたもどこからか取り出した小さな球体の物を指で挟んでいました。その球体を床に叩きつけた瞬間、青い煙が私の視界を完全に覆い尽くします。
「なん、ですか! これ!」
吸っても特に害はなさそうですが完全に視界を殺されました。これでは追うことは不可能に近いでしょう。そう、控えめに扉を開ける音さえ響かなければ。
「そこぽい!」
エルフ自慢の耳が捉えた音の方へというか扉のある正面へと一気に駆け跳躍。下半身のみに身体強化魔法を施し空中で体を回しバネの力で回し蹴りを見えませんがおそらくは扉があるであろう場所へと放ちます。
メキョっという音と足への不快な感触を味わいながらも手応えを感じた
「手応え! あり!」
私は若干の抵抗がありましたがそのまま足を振り抜きます。
「アガガガガガガ⁉︎」
おそらくは蹴られた変態の悲鳴と何かを削り取るかのような破壊音が響いていきます。
足を振り抜き感触が消えると私は音を立てながら床へと着地。次に風魔法を使い今だに視界を妨げる青い煙を吹き飛ばします。
煙が晴れた後には部屋の惨状が露わになります。と言っても破壊の爪痕があるのは入り口付近だけですが。
入り口の扉は吹き飛び、横の壁には何かで抉り取ったかのように穴が線上に空いています。その線上の先には先ほど逃げようとした変態が顔から血を流しながら手足を奇妙な方向に曲げながらよくわからないオブジェと化していました。
「……しまった。目的とか聞くの忘れてました」
聞こうにも完全に気を失っていますからね。どうしようもありません。
「な、なにごとです……⁉︎」
破壊音を聞きつけた宿屋の人がやってきましたが途中で言葉を止めました。
「あ、いいところに。これ変態なんです。私の部屋に入って下着漁ってました」
「あ、はい」
私が奇妙なオブジェを指差しながら答えると宿屋の人はこくこくと頷いてくれます。
「あの、これどうやったんですか?」
恐る恐るといった感じでぽっかりと穴が空いている壁を指差しながら尋ねてきます。
「蹴りで」
「け、蹴りですか」
蹴り、とやたらとうわ言のように言う店の人を他所に私は壁にめり込んだ変態に近づき無理やりに壁から引き剥がすのでした。
食堂から入手したサンドイッチを頬張りながら私は笑みを浮かべます。しかし、食べている場所は食堂ではなく宿屋の屋根の上という変わった場所です。
「食事しながら仕事をする私は実に勤勉だと思うんですよね」
一人つぶやきながら魔法のカバンから昨日シェリーから貰った魔法道具を取り出します。取り出されたのは紐でくくられ丸められた羊皮紙。その紐を解くと羊皮紙に描かれているのは帝国の街の地図です。ただの地図であればさほど珍しくはありませんがこれは魔法道具。さらにはシェリーが渡してきたものですからね。ロクでもないものなんですが。
「覗き見る真実、眼を開け」
魔法道具を動かすための呪文を唱えると今まではただ描かれていただけだった地図の上に幾つもの点が現れます。それもかなりの量で。
「うげぇ、気持ち悪!」
ざわざわと動き回るその姿はまるで虫のように見えて見ているこちらの気分が悪くなります。
「この動いているの人間だというのがよけいに気持ち悪いですよね」
地図上で動き回る黒い点。これは地図に描かれている場所にいる人間なわけですからね。この魔法道具を使えばどこに人がいるかがわかるという人を追い回す職業の人には必須のアイテムらしいんですよね。なにせ黒い点の下には名前らしいものが記されていますし。
地図を動かしながら王城の方へとうごかしていくと王城では動かないと点がいくつもあることに気付きます。
「止まってるのは守ってる兵士ですかね。しかし、これどうやって皇帝見つけたらいいんですかね」
よくよく考えたら私、この国の皇帝の名前知らないんですよね。そもそも顔すら見た事ありません。いくら名前が表示されていても誰かわからないというのが問題です。
「こういう時は人頼ですね」
屋根から自分の取っている部屋へと入り宿屋の人に尋ねるべく歩こうとすると、
「ハァハァハァハァ」
「……」
人の荷物を漁りながら息を荒くしている人と出くわしました。
いえ、出くわしたというのは正確ではなく私が一方的に発見しました。その証拠に変態は私に全く気付かずに洗濯予定である下着や服をなぜか頭に被ったり匂いを嗅いでいたりしています。
「どちらさまで?」
「っ⁉︎」
突然話しかけられた事に驚いたのか頭に下着を被ったままというかなり間抜けな格好で男は意外にも俊敏に跳びのきます。いつの間に取り出したのか片手にはかなり大振りのナイフが握られています。かなり凶悪なものなんでずもう片方の手にはしっかりと下着が握り締められているので見ていて緊張感が削がれるような光景です。
「お、お前どこから」
「どこからと言われましてもここは私が取った部屋ですし」
どこにいても文句を言われる筋合いはないと思うんですけど。
「宿屋の外出届けには外出と書いてあっただろうが!」
「外出届け? ああ、外出するなら書いてくれと言われたあれですか」
さっきサンドイッチを貰いに行った時に食堂で食べなかったものですから外出すると思われたようでしたので外に行くなら名前を書くように言われたんでした。なんでも三日ほど帰ってこない冒険者の場合は死んでいる可能性があるのでギルドへの問い合わせに名前が必要だとかなんとかと言ってましたね。
そんなわけで私は一応屋根の上(宿屋の外にはいるわけですから外出かな?)というわけで外出のところに名前を記入したわけです。
「台帳を見てるあたり用意周到…… あ! あなた帝国で噂の通り魔ですか?」
「と、通り魔だと?」
あれ、なんか反応が違いますね。そういえばシェリーもどんな通り魔かは一切言っていませんでした。
「ちっ!」
「あ」
一瞬だけ目を離した隙に変態はまたもどこからか取り出した小さな球体の物を指で挟んでいました。その球体を床に叩きつけた瞬間、青い煙が私の視界を完全に覆い尽くします。
「なん、ですか! これ!」
吸っても特に害はなさそうですが完全に視界を殺されました。これでは追うことは不可能に近いでしょう。そう、控えめに扉を開ける音さえ響かなければ。
「そこぽい!」
エルフ自慢の耳が捉えた音の方へというか扉のある正面へと一気に駆け跳躍。下半身のみに身体強化魔法を施し空中で体を回しバネの力で回し蹴りを見えませんがおそらくは扉があるであろう場所へと放ちます。
メキョっという音と足への不快な感触を味わいながらも手応えを感じた
「手応え! あり!」
私は若干の抵抗がありましたがそのまま足を振り抜きます。
「アガガガガガガ⁉︎」
おそらくは蹴られた変態の悲鳴と何かを削り取るかのような破壊音が響いていきます。
足を振り抜き感触が消えると私は音を立てながら床へと着地。次に風魔法を使い今だに視界を妨げる青い煙を吹き飛ばします。
煙が晴れた後には部屋の惨状が露わになります。と言っても破壊の爪痕があるのは入り口付近だけですが。
入り口の扉は吹き飛び、横の壁には何かで抉り取ったかのように穴が線上に空いています。その線上の先には先ほど逃げようとした変態が顔から血を流しながら手足を奇妙な方向に曲げながらよくわからないオブジェと化していました。
「……しまった。目的とか聞くの忘れてました」
聞こうにも完全に気を失っていますからね。どうしようもありません。
「な、なにごとです……⁉︎」
破壊音を聞きつけた宿屋の人がやってきましたが途中で言葉を止めました。
「あ、いいところに。これ変態なんです。私の部屋に入って下着漁ってました」
「あ、はい」
私が奇妙なオブジェを指差しながら答えると宿屋の人はこくこくと頷いてくれます。
「あの、これどうやったんですか?」
恐る恐るといった感じでぽっかりと穴が空いている壁を指差しながら尋ねてきます。
「蹴りで」
「け、蹴りですか」
蹴り、とやたらとうわ言のように言う店の人を他所に私は壁にめり込んだ変態に近づき無理やりに壁から引き剥がすのでした。
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