エルフさんが通ります
ゾンビっているんですね!
『リリカ起きて、起きて』
「ふぁ?」
頭をぺしぺしと叩かれるような感覚を受けながら私は眼を覚まします。周囲を見渡すとすでに馬車の中には私と私を起こすために残ったくーちゃんの姿しか見られません。
「もう五時間たったんですか?」
欠伸と伸びをしながらくーちゃんに尋ねるとなんとも言えない表情で私を見つめ返してきました。
「どうしました?」
『えっとね、あれから二時間しか経ってないんだよね』
はて? ではなぜ二時間で起こされたのでしょうか?
『んー、五時間で着くはずの所に二時間で着いたから?』
「どういう意味です?」
「えっとね、リリカが寝た後にね……」
くーちゃんの話を要約すると、私が寝た後にフィー姉さんが予定よりも早く帝国に着いて私を驚かそうと思いついたらしく馬車はより一層走る速度を上げたそうです。当然、今まででも限界ギリギリだったカズヤは完全に引き摺られる形になり、悲鳴が鳴りやまなかったそうですが。結果として予定の時間の半分で帝国に到着したとのことです。
「なるほど、なら他の人たちはどこにいるんです?」
『馬車の外だよ、その、すごいことになってるよ……』
「?」
顔を青くしながらくーちゃんが眼をそらしながら告げてきます。疑問には思いましたがとりあえずは外に出ないことにはわかりませんからね。包まっていた布を畳み、魔法のカバンの中に放り込むと私は馬車の荷台から飛び降ります。
するとそこには、
顔面を真っ青にしたゾンビらしきものがいました。「ううう」やら「ああああ」などといったうめき声をあげながら道端に転がっています。
「ゾンビっているんですね! 初めて見ました!」
『よく見てリリカ! ゾンビじゃないよ! ゼィハ達だよ!』
「え?」
くーちゃんに言われよく見てみると確かに顔色がすこぶる悪いゼィハ、ヴァン、ククの三人でした。目が虚ろでどこを見てるかわからなかったのでゾンビと勘違いしましたよ。
しかし、三人しか見当たりませんね? そうなるとフィー姉さんと引き摺られていたカズヤはどこに……
『何を探しているのか知らないけどカズヤならあれだよ?』
「どれです?」
くーちゃんが指差すのは赤黒い塊。よく見ると周りには引き摺られた跡のように血がこびりついていました。
「あれ、手足がないんですけど?」
どう見ても解体された肉ですね。
『引き摺られてるうちにもげてたよ』
……腕や足ってもげるんですね。それでも胸? らしきものが上下に動き、少しずつ体が修復されているのを見ると生きているんでしょう。あんな姿になっても死ねないというのは便利なのか不便なのか全くわかりませんね。少なくとも私は嫌です。
「じゃ、フィー姉さんは?」
「あ、あっちですよ…… というかあなた達姉妹はおかし……うげぇ」
ゼィハが門の方を指差している途中で嗚咽を漏らします。なにがおかしいというんですか。
「別に普通だと思うんですけど?」
「あ、あんだけ揺れてる馬車の中で爆睡できるエルフと鞭を振るいながら本を読んでるエルフは普通じゃない! です」
ククが鬼気迫る勢いでこちらに言い放ってきます。顔が青いから怖いことこの上ありません。だって蒼いですし! ゾンビにしか見えませんし!
つまるところ三人は高速で揺れ動く馬車のせいで完全に乗り物酔いをしているわけですね。
「情けないですねぇ、くーちゃんを見習いましょうよ?」
「いや、精霊でしょ?」
「わ、私たち空飛べないんですよ」
「揺れ、勝てぬ」
三者三様に答えてきます。ブロック肉は返事がありません。
「フィー姉さんは門のところでなにをしてるんです?」
「あの門のところは入国手続きをしてるんです」
また入国手続きですか。人族は好きですね。手続きとかチェックとか。とっとと入れてくれればいいものを……
「疫病などを持ち込まないためにも必要なんです。おいしいお肉を食べるためにも必要なんです!」
「そ、そうですか、なら時間がかかっても仕方ありませんね」
私の心を読んだかのようにククが魂の叫びのごとく言ってきます。この子、食べ物のこととなると目の色が違いますね。食のためなら仲間すら売るかもしれませんね。いや、実際にカズヤを売り払っているわけですからね。
「おーい、入って大丈夫だってさ〜」
フィー姉さんが大きな声をあげながらこちらに向かい手を振ってきています。
「さっ、いきますよ! 新しい国は楽しみです!」
『元気だねー』
あきれる声をあげながらも私の頭の上に着地したくーちゃんと共にフィー姉さんの方へと向かいます。後ろにはゾンビのような足取りでゼィハ達が続きます。
「ううう」
「あああぁぁ」
「がぁぁぁぁ」
せめて人語を話してほしいものです。周りの馬車の人たちが酷くおりえてますし子供にいたっては泣いてますからね。ため息をつきながらもうめき声を上げ続けるゾンビ(仮)三体を引き連れ私は注目を集めながら歩くのでした。
「ふぁ?」
頭をぺしぺしと叩かれるような感覚を受けながら私は眼を覚まします。周囲を見渡すとすでに馬車の中には私と私を起こすために残ったくーちゃんの姿しか見られません。
「もう五時間たったんですか?」
欠伸と伸びをしながらくーちゃんに尋ねるとなんとも言えない表情で私を見つめ返してきました。
「どうしました?」
『えっとね、あれから二時間しか経ってないんだよね』
はて? ではなぜ二時間で起こされたのでしょうか?
『んー、五時間で着くはずの所に二時間で着いたから?』
「どういう意味です?」
「えっとね、リリカが寝た後にね……」
くーちゃんの話を要約すると、私が寝た後にフィー姉さんが予定よりも早く帝国に着いて私を驚かそうと思いついたらしく馬車はより一層走る速度を上げたそうです。当然、今まででも限界ギリギリだったカズヤは完全に引き摺られる形になり、悲鳴が鳴りやまなかったそうですが。結果として予定の時間の半分で帝国に到着したとのことです。
「なるほど、なら他の人たちはどこにいるんです?」
『馬車の外だよ、その、すごいことになってるよ……』
「?」
顔を青くしながらくーちゃんが眼をそらしながら告げてきます。疑問には思いましたがとりあえずは外に出ないことにはわかりませんからね。包まっていた布を畳み、魔法のカバンの中に放り込むと私は馬車の荷台から飛び降ります。
するとそこには、
顔面を真っ青にしたゾンビらしきものがいました。「ううう」やら「ああああ」などといったうめき声をあげながら道端に転がっています。
「ゾンビっているんですね! 初めて見ました!」
『よく見てリリカ! ゾンビじゃないよ! ゼィハ達だよ!』
「え?」
くーちゃんに言われよく見てみると確かに顔色がすこぶる悪いゼィハ、ヴァン、ククの三人でした。目が虚ろでどこを見てるかわからなかったのでゾンビと勘違いしましたよ。
しかし、三人しか見当たりませんね? そうなるとフィー姉さんと引き摺られていたカズヤはどこに……
『何を探しているのか知らないけどカズヤならあれだよ?』
「どれです?」
くーちゃんが指差すのは赤黒い塊。よく見ると周りには引き摺られた跡のように血がこびりついていました。
「あれ、手足がないんですけど?」
どう見ても解体された肉ですね。
『引き摺られてるうちにもげてたよ』
……腕や足ってもげるんですね。それでも胸? らしきものが上下に動き、少しずつ体が修復されているのを見ると生きているんでしょう。あんな姿になっても死ねないというのは便利なのか不便なのか全くわかりませんね。少なくとも私は嫌です。
「じゃ、フィー姉さんは?」
「あ、あっちですよ…… というかあなた達姉妹はおかし……うげぇ」
ゼィハが門の方を指差している途中で嗚咽を漏らします。なにがおかしいというんですか。
「別に普通だと思うんですけど?」
「あ、あんだけ揺れてる馬車の中で爆睡できるエルフと鞭を振るいながら本を読んでるエルフは普通じゃない! です」
ククが鬼気迫る勢いでこちらに言い放ってきます。顔が青いから怖いことこの上ありません。だって蒼いですし! ゾンビにしか見えませんし!
つまるところ三人は高速で揺れ動く馬車のせいで完全に乗り物酔いをしているわけですね。
「情けないですねぇ、くーちゃんを見習いましょうよ?」
「いや、精霊でしょ?」
「わ、私たち空飛べないんですよ」
「揺れ、勝てぬ」
三者三様に答えてきます。ブロック肉は返事がありません。
「フィー姉さんは門のところでなにをしてるんです?」
「あの門のところは入国手続きをしてるんです」
また入国手続きですか。人族は好きですね。手続きとかチェックとか。とっとと入れてくれればいいものを……
「疫病などを持ち込まないためにも必要なんです。おいしいお肉を食べるためにも必要なんです!」
「そ、そうですか、なら時間がかかっても仕方ありませんね」
私の心を読んだかのようにククが魂の叫びのごとく言ってきます。この子、食べ物のこととなると目の色が違いますね。食のためなら仲間すら売るかもしれませんね。いや、実際にカズヤを売り払っているわけですからね。
「おーい、入って大丈夫だってさ〜」
フィー姉さんが大きな声をあげながらこちらに向かい手を振ってきています。
「さっ、いきますよ! 新しい国は楽しみです!」
『元気だねー』
あきれる声をあげながらも私の頭の上に着地したくーちゃんと共にフィー姉さんの方へと向かいます。後ろにはゾンビのような足取りでゼィハ達が続きます。
「ううう」
「あああぁぁ」
「がぁぁぁぁ」
せめて人語を話してほしいものです。周りの馬車の人たちが酷くおりえてますし子供にいたっては泣いてますからね。ため息をつきながらもうめき声を上げ続けるゾンビ(仮)三体を引き連れ私は注目を集めながら歩くのでした。
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