エルフさんが通ります
あの変態と知り合いですが
「いつの間に……」
『ねー』
私とくーちゃんが船の外、甲板と呼ばれる場所に出た時にはすでに船は港から出ており、蒼い海へと突き進んでいました。
これ、船が出ること伝えてないのは問題にならないんでしょうか?
「しかし、船が動くとなんというか地面というか揺れが気になりますね」
足が接している部分が微妙に揺れるのでなんとも言えない感覚です。船から下の海を見てみると水がぶつかってきているのでそのせいで揺れているのでしょう。
しかし、そんな風にして興味深げに海を見ていると背後からべったりという音が聞こえてきそうな視線が私の背に突き刺さります。
「……なんですかね、この嫌な視線」
『気持ち悪』
私の頭に乗るくーちゃんも同様の視線に晒されているのか同じような気分のようです。
このままいても仕方ないのでゆっくりと後ろを振り向くと一人の人族の青年が目に入ります。黒髪に腰には私の持つぽちと同様の形の刀ともう一振りの剣が吊るされており、やたらと輝きを放つ鎧を着ています。
「え……」
「え?」
「ロリエロフきたぁぁぁぁ⁉︎」
「ぎゃぁぁぁぁぁ!」
奇声をあげると共に青年が私の視界から完全に消えます。そして次の瞬間には私は背後かから抱えあげられるようにして持ち上げられ床から足が完全に離れました。
ただそれだけならば私もここまで悲鳴をあげることはなかったでしょう。
こいつが掴んだ場所に問題さえなければ!
「離しなさい!」
「おっと」
全身を一瞬にして魔力で覆い背後の青年を混同させるべく肘打ちを放ちますが軽い声と共に青年は私を解放し私の繰り出した肘打ちを躱し距離をとりました。
キッと睨みつけるように青年をみるとニヤニヤとした気持ち悪い笑みを浮かべています。
「……いきなりなにをしてくれてるんですか」
自分でもかなり声が低くなっていることがわかります。かなら、イラついてますから。
青年のほうはというとニヤニヤ顔をやめないまま自分の両手を眺めたあとに私へと視線を戻してきました。
「ん? エルフってもっと胸あるんじゃねえの?」
額に青筋が浮かぶのが初めてわかりました。
この男、あろうことか私を抱え上げる時に脇を持つのではなくよりにもよって胸を掴んできやがったのです! 許すまじ。
自然な動作で腰のぽちを鞘から引き抜きます。
「お、怒った? 怒った顔も素敵だよ」
青年のほうも楽しげにしながらもこちらが武器を構えたにも関わらず腰の武器を抜くそぶりすら見られません。
その動かなさ、そして発する言葉の一つ一つが癇に障ります。
「……よし、殺りますよ」
『女の敵だね!』
死体は海に落とせば問題ありませんし。手早く人生を終わらして差し上げましょう。
ぽちの刃を閃かせながら私は憎き敵へと踏み出します。魔力で強化された一撃。見切れるはずがありません。敵の視線は私を見ることはできておらず反応すらできていません。
断罪の一撃が命を刈り取るべく振るわれましたがその一撃は私の息を飲む音と共に静止されました。
「な!」
私が殺意を込めた一撃はいつの間にか私と青年の間に滑り込むように姿を見せた子供の握るナイフに止められていました。
「主、油断しすぎ」
「おお、いやお前なら止めてくれるかと思ってたからな」
ボサボサの青い髪の少年に主と呼ばれた敵は朗らかに笑いながら頭をかいています。
「肯定。主に死なれるとヴァンは非常に困る。」
「おお、ヴァンがついにデレ期に⁉︎」
たわいない会話をする二人ですがその間に私は魔力をさらにそそぎ込みナイフを断ち切ろうとしますがビクともしません。
「なんなんですあなたは? あの変態の知り合いですか?」
「肯定、そして否定。主は変態ではあるが知り合いではない。強いて言えばあの人は…… サイフ?」
なんで疑問系なんでしょうか?
「俺をサイフ扱いするのはお前だけだぜ?」
そんな変態の言葉になぜか少年は照れたかのように頰を赤く染めました。なんなんですかこいつら。
なんとなく毒気が抜けたのでぽちに入れる力を抜き構えを解きます。すると少年のほうもナイフを構えるのを止め、主と呼んでいた変態の方へとスタスタと歩いていきます。
瞬間、ぽちの切っ先を変態へと向けます。
「敵に背中を見せるとは」
にたりと笑うとぽちを魔ノ華へと変化させさらには刃を変態に串刺すべく伸ばします。
青髪の少年が気づきナイフを振るいますが勢いのついた魔ノ華を弾くことなどできずに逆に吹き飛ばされます。目標までの障害物がなくなったため魔ノ華はすぐさま変態の喉元に迫ります。そして刃が貫こうとした瞬間、変態の姿が消え、轟音が二つ響き、さらには魔ノ華を握る私の腕にも衝撃が走ります。無理矢理に腕を跳ね上げらた?
「今度はなんです⁉︎」
私はただ変態を殺したいだけなのに! 二度にわたって邪魔されるとは。腕を跳ね上げられたまま私は睨みつけるように妨害者へと目線をやります。
「オイタオイタオイタはだめよ」
左目が赤く右目が青い女性がニコニコと笑っているのが目に入ります。手にはおそらくは鉄で作られているであろう拳を象った武器。まさか、ただの鉄の武器で一応は魔剣である魔ノ華を弾いたんですか?
ベタベタとする風が流れ女性の金の髪が風に流れ私は絶句します。
女性の流れた髪の隙間から見えた耳、それは紛れもなく長い耳でありエルフの耳だったのでした。
「ふ、フィー姉さん」
私の攻撃を受け止めたエルフは紛れもなく私の姉であるフィー・エトロンシアだったのでした。
『ねー』
私とくーちゃんが船の外、甲板と呼ばれる場所に出た時にはすでに船は港から出ており、蒼い海へと突き進んでいました。
これ、船が出ること伝えてないのは問題にならないんでしょうか?
「しかし、船が動くとなんというか地面というか揺れが気になりますね」
足が接している部分が微妙に揺れるのでなんとも言えない感覚です。船から下の海を見てみると水がぶつかってきているのでそのせいで揺れているのでしょう。
しかし、そんな風にして興味深げに海を見ていると背後からべったりという音が聞こえてきそうな視線が私の背に突き刺さります。
「……なんですかね、この嫌な視線」
『気持ち悪』
私の頭に乗るくーちゃんも同様の視線に晒されているのか同じような気分のようです。
このままいても仕方ないのでゆっくりと後ろを振り向くと一人の人族の青年が目に入ります。黒髪に腰には私の持つぽちと同様の形の刀ともう一振りの剣が吊るされており、やたらと輝きを放つ鎧を着ています。
「え……」
「え?」
「ロリエロフきたぁぁぁぁ⁉︎」
「ぎゃぁぁぁぁぁ!」
奇声をあげると共に青年が私の視界から完全に消えます。そして次の瞬間には私は背後かから抱えあげられるようにして持ち上げられ床から足が完全に離れました。
ただそれだけならば私もここまで悲鳴をあげることはなかったでしょう。
こいつが掴んだ場所に問題さえなければ!
「離しなさい!」
「おっと」
全身を一瞬にして魔力で覆い背後の青年を混同させるべく肘打ちを放ちますが軽い声と共に青年は私を解放し私の繰り出した肘打ちを躱し距離をとりました。
キッと睨みつけるように青年をみるとニヤニヤとした気持ち悪い笑みを浮かべています。
「……いきなりなにをしてくれてるんですか」
自分でもかなり声が低くなっていることがわかります。かなら、イラついてますから。
青年のほうはというとニヤニヤ顔をやめないまま自分の両手を眺めたあとに私へと視線を戻してきました。
「ん? エルフってもっと胸あるんじゃねえの?」
額に青筋が浮かぶのが初めてわかりました。
この男、あろうことか私を抱え上げる時に脇を持つのではなくよりにもよって胸を掴んできやがったのです! 許すまじ。
自然な動作で腰のぽちを鞘から引き抜きます。
「お、怒った? 怒った顔も素敵だよ」
青年のほうも楽しげにしながらもこちらが武器を構えたにも関わらず腰の武器を抜くそぶりすら見られません。
その動かなさ、そして発する言葉の一つ一つが癇に障ります。
「……よし、殺りますよ」
『女の敵だね!』
死体は海に落とせば問題ありませんし。手早く人生を終わらして差し上げましょう。
ぽちの刃を閃かせながら私は憎き敵へと踏み出します。魔力で強化された一撃。見切れるはずがありません。敵の視線は私を見ることはできておらず反応すらできていません。
断罪の一撃が命を刈り取るべく振るわれましたがその一撃は私の息を飲む音と共に静止されました。
「な!」
私が殺意を込めた一撃はいつの間にか私と青年の間に滑り込むように姿を見せた子供の握るナイフに止められていました。
「主、油断しすぎ」
「おお、いやお前なら止めてくれるかと思ってたからな」
ボサボサの青い髪の少年に主と呼ばれた敵は朗らかに笑いながら頭をかいています。
「肯定。主に死なれるとヴァンは非常に困る。」
「おお、ヴァンがついにデレ期に⁉︎」
たわいない会話をする二人ですがその間に私は魔力をさらにそそぎ込みナイフを断ち切ろうとしますがビクともしません。
「なんなんですあなたは? あの変態の知り合いですか?」
「肯定、そして否定。主は変態ではあるが知り合いではない。強いて言えばあの人は…… サイフ?」
なんで疑問系なんでしょうか?
「俺をサイフ扱いするのはお前だけだぜ?」
そんな変態の言葉になぜか少年は照れたかのように頰を赤く染めました。なんなんですかこいつら。
なんとなく毒気が抜けたのでぽちに入れる力を抜き構えを解きます。すると少年のほうもナイフを構えるのを止め、主と呼んでいた変態の方へとスタスタと歩いていきます。
瞬間、ぽちの切っ先を変態へと向けます。
「敵に背中を見せるとは」
にたりと笑うとぽちを魔ノ華へと変化させさらには刃を変態に串刺すべく伸ばします。
青髪の少年が気づきナイフを振るいますが勢いのついた魔ノ華を弾くことなどできずに逆に吹き飛ばされます。目標までの障害物がなくなったため魔ノ華はすぐさま変態の喉元に迫ります。そして刃が貫こうとした瞬間、変態の姿が消え、轟音が二つ響き、さらには魔ノ華を握る私の腕にも衝撃が走ります。無理矢理に腕を跳ね上げらた?
「今度はなんです⁉︎」
私はただ変態を殺したいだけなのに! 二度にわたって邪魔されるとは。腕を跳ね上げられたまま私は睨みつけるように妨害者へと目線をやります。
「オイタオイタオイタはだめよ」
左目が赤く右目が青い女性がニコニコと笑っているのが目に入ります。手にはおそらくは鉄で作られているであろう拳を象った武器。まさか、ただの鉄の武器で一応は魔剣である魔ノ華を弾いたんですか?
ベタベタとする風が流れ女性の金の髪が風に流れ私は絶句します。
女性の流れた髪の隙間から見えた耳、それは紛れもなく長い耳でありエルフの耳だったのでした。
「ふ、フィー姉さん」
私の攻撃を受け止めたエルフは紛れもなく私の姉であるフィー・エトロンシアだったのでした。
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