エルフさんが通ります

るーるー

崇めれるところを見たことがないんですけどね

「ん? 誰かと思えばドラクマで泣きながら姿を消した大精霊(笑)のイフリュート様じゃないですか」
『そこはかとなく悪意を感じる言い回しだよね⁉︎』


 座っていたイフリュートが立ち上がり私に食ってかかってきます。同時に彼女の怒りに呼応するように背中の炎の羽根が勢いよく燃え上がっています。


「冗談ですよ。で、なんでここにいるんです? 別にもう氷に閉じ込められているわけでもないんですから元の住処に帰っても問題ないはずでしょう?」


 彼女、イフリュートは炎の大精霊。そして今いる土地は雪の国ドラクマですどう考えても正反対の土地ですからね。


『私はセルシウスのとこに寄った帰りだよ。まぁ、留守だったけど……』
「嫌われてるんですね」
『き、嫌われてなんかないわよ!』


 いや、冗談じゃないですか。なんでそんな大声出しながら怒りますかね。


『……セルシウス様はイフリュート様を嫌ってるの』


 くーちゃんが耳元で小さく囁いて教えてくれます。まさか当たりでしたか。


『ベタベタつきまとってきて鬱陶しいらしいよ』
「あー、そんなタイプですね」


 一度許すとひたすらにベタベタと接してくるタイプですし、私もあまり好きなタイプではありません。
 そういえばゼィハは全く会話に参加してきませんね、そう疑問に感じ隣に立つゼィハへと視線を向けると、


「……」


 固まってました。
 イフリュートを見た状態で完全に固まってました。


「どうかしましたか? ゼィハ」


 固まったゼィハを軽く揺すると彼女はハッとしたような表情を浮かべ雪がつくのも構わずにその場に跪くと頭を下げます。


「リリカさん! 大精霊なんですよ⁉︎ もっと頭を低くしておかないと!」
『ふふーん! そっちのダークエルフは私の偉大さがわかっているようね!』


 やたらと低姿勢で接するゼィハを見てイフリュートは凄く満足そうです。その満足そうな笑みを浮かべたまま次は私の方を見てきます。
 なんでしょうか。


「さあ! そこのエルフも私に頭を垂れなさい!」


 いい笑顔を浮かべながら私を指差してきます。
 人に向けて指をさすなと教育を受けなかったんでしょうか? このダメ大精霊は…… いや、そもそも大精霊に親がいるのかもなかなかに疑問ですが。
 私はにっこりと笑顔を浮かべます。


「嫌です」
『なんでよぉ!』


 先ほどまでの笑顔とは打って変わりいきなり泣き出しそうになってます。


『普通はね! 大精霊とかすごい貴重なのよ⁉︎ 激レアよ⁉︎ この頭を下げてる人が普通なのよ! 崇めてよ! 私をもっとあがめてよぉぉぉ!』


 終いにはダダをこねるかのように雪原を転がりまわり始めました。
 これで崇められると思ってる当たりが頭の悪さを助長している気もしますが。


「いや、貴方と出会ってから崇めれるようなとこ見たことないんですけどね?」
『ちゃ、ちゃんと雪崩止めたよ?』
「あれはそもそも貴方が氷に閉じ込められていなかったらおこらなかった災害ですよ? 責任を取るのが当たり前です」
『グヌヌヌヌ!』


 本当に子供ですね。


「で、なにしに来たんですか?」
『えっ? あ! それそれ! あなたが持ってるやつよ!』


 イフリュートは思いだしたかのように私が天に掲げている小さな物を見る兵器スモールウェポンを指差してきます。


「これが何か?」
『どっかで見たことがあるような、なかったような』


 腕を組み首を傾げながら悩むイフリュート。ゼィハの方を見てみると彼女は未だ膝をついたままの姿勢で首を振ります。


「これに見覚えが……」


 イフリュートに見えるように小さな物を見る兵器スモールウェポンを下ろし彼女に近づけます。
 淡く蒼色に光っていただけのレンズが激しい光を放ち始めます。


「ゼィハ、これはなんです?」


 さっきまでとは全く違う輝きを放っているので尋ねますがゼィハは顔を青くしたまま首を振ります。


「わかりません。ですがすごい魔力が集まってます」
「ですよねー」


 さっきから徐々にですが蒼色のレンズが紅色へと変色してきてるんですよね。


「取り返しがつかつかなくなる前に放り投げてください!」


 確かにこれをこのまま持っておくのはまずい気がしますね。というかこれって……


「イフリュートの魔力が流れ込んできてませんか?」


 よく見るとイフリュートの炎の羽根が崩れ紅い魔力がレンズへと吸われていくのがわかりました。挙句にレンズがカタカタと揺れはじめます。


「あ、まずい」


 さすがに危機感を覚えたので私は小さな物を見る兵器スモールウェポンを宙へ、より正確には前線の方へと放り投げます。
 それを見てゼィハが悲鳴を上げました。


「ちゅ、宙に投げる人がいますか! レンズがこちらに向いたらあたし達死ぬじゃないですか!」
「『あっ!』」


 投げた後に日言われては後の祭り。
 光を放っていたレンズが今まで以上に輝きそして爆発しました。



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