エルフさんが通ります
私の想像とは違いますね
ヒュンヒュンと軽い音が鳴り響き周囲の地面に弓矢が突き刺さります。
どうもあのハゲは自分の光る頭を標的にされたようで死んだようですね。さらには一応は第一騎士団の隊長だったこともあり死んだことで周りが動揺したことも悪かったようです。
今が好機と言わんばかりに敵軍たるピリァメイスは弓矢を放ちつつこちらに前進してきているようです。
「このままではやられっぱなしだ! こちらからも弓矢、魔法を放て!」
おそらくは副隊長らしき人物が声を必死に張り上げ指示を出しています。
そのかいあってかこちら側からも弓矢、魔法が飛び始めました。空中では弓矢、魔法が飛び交い互いの陣営に飛び込むとなかなかの至る所から悲鳴が飛び交い始めます。
「これ、私も弓矢使ったほうがいいですかね? というかあれ弓矢ですよ? ピリァメイスはメイスしかつかわないんじゃなかったんですか⁉」
盾に身を隠しながらぽちを弓の形に変形させ矢筒をとりだした私は横で同様に盾に隠れるゼィハに尋ねます。彼女は盾に隠れながら本を読むという端から見れば狂人のような所業をしています。
そして、私の声に気付いたのか本を閉じこちらを見てきます。
「なんですか?」
「いや、私も弓矢を射たほうがいいのかなぁと思ってね。あとなんで矢が飛んでくるんですかね?」
一応は戦争に参加してるわけですしね。
「彼ら曰く弓矢は『空飛ぶメイス』らしいですよ。それと弓矢を射るのであればもう少し待ちましょう」
「なぜです?」
戦闘中とはおもえないほどのゆったりさで魔法のカバンからいろいろと取り出し、カップに何かを注いでいます。その湯気がでるカップを優雅に口元に持っていきます。
「あー、紅茶おいし」
『ゆる⁉︎ リリカもゆるいけどゼィハもゆるいよ⁉︎』
「いえ、くーちゃん。私もさすがにあれほどゆるくはないて思うんですがね」
さすがに戦いながら紅茶は飲めませんよ。
「戦いの定石というのはあたしにはわかりませんがドラクマとピリァメイスに限ってはわかります」
「と言うと?」
口にしていたカップを放すとゼィハは指を三本立ててきます。
「一つは今やっている遠距離での削り合いです。主に弓兵や魔法使いが活躍する場ですね。この段階で敵の数を削っておけばかなり有利に戦闘を進めることができます」
「二つ、次に前に出るのは歩兵です。剣、槍、斧といった接近戦に強い武器を扱う者たちが映える番です。英雄と呼ばれる類の人物がよく生まれるのがここです。同時に一番戦場が膠着する場でもあります」
「三つ、騎兵または魔法騎兵の出番です。これが戦場の花形とも呼ばれる者ですね。圧倒的な機動力を持って敵を叩き潰します」
「とこれら三つが今まで私が見てきたピリァメイスとドラクマの戦争の形ですね。ですので少し待つと歩兵が前面に出だします。弓を射ながら戦場を見るならそれからでもいいでしょう」
「なるほど」
確かに盾の陰から覗くと先ほどまで私の周りにいたはずの冒険者達の姿が見えませんし、いたとしても私と同じような遠距離系、弓兵や魔法使いばかりですね。
弓矢も先ほどのように凄まじい数ではなく少なくなってます。というか前線に向かった冒険者や騎士団の上に降り注いでますが。あれ、大丈夫ですかね?
「歩兵もある程度は魔法で強化されてますから易々とは死なないで……」
ゼィハの言葉の途中で私の視界に入っていた歩兵の一部が弾けとびました。
なにやら赤黒い物も飛び散ってますね。
「あれで無事とはドラクマの騎士や冒険者は丈夫なんですねぇ」
先ほどの攻撃は明らかに魔法。しかもかなりの高位魔法でしたね。
「あー、状況が変わりましたね。ピリァメイスが魔法を使ってくるとは……」
「あ、メイスしか使わないんじゃないんですか?」
「大方、次は『メイスの波動』とでも言うんでしょう」
『いい加減だなぁ』
三人で話している間も『メイスの波動(仮)』がこちらの陣営に炸裂していきます。ですがピリァメイスの方にも高位魔法が放たれ始め双方に多大な被害を出し、隊列は崩れ穴が開きつつあります。さらにその穴を広げるべく、前衛か前進。もう何が何だかわからない乱戦が始まりました。
「……なんでしょう。私が想像していた戦争より大分血生臭いですね」
『すごいね』
今、私の前で繰り広げられているのは優雅さや気品といったものが全く存在しない殺し合いです。
唖然として見ていると軽い音が私の耳に入り、さらには頬に痛みを感じました。
「痛!」
「突っ立ってると死にますよ」
盾に隠れたまま再び紅茶を飲みながらの読書に戻るゼィハ。私は痛みがあった頬を軽く指で拭うと血が付いていました。
『大丈夫?』
「ええ、大丈夫です、私は大丈夫、非常に落ち着いています」
ええ、落ち着いていますとも。手にしていたぽちをゆっくりと構え乱戦が行われている前方へと向け矢を番えます。
落ち着いてますよ? ですが、
「よくも私に血を流させましたね!」
『めちゃくちゃ怒ってるじゃん⁉︎』
風の魔力を弓矢へと込め、私は風矢を乱発するのでした。
どうもあのハゲは自分の光る頭を標的にされたようで死んだようですね。さらには一応は第一騎士団の隊長だったこともあり死んだことで周りが動揺したことも悪かったようです。
今が好機と言わんばかりに敵軍たるピリァメイスは弓矢を放ちつつこちらに前進してきているようです。
「このままではやられっぱなしだ! こちらからも弓矢、魔法を放て!」
おそらくは副隊長らしき人物が声を必死に張り上げ指示を出しています。
そのかいあってかこちら側からも弓矢、魔法が飛び始めました。空中では弓矢、魔法が飛び交い互いの陣営に飛び込むとなかなかの至る所から悲鳴が飛び交い始めます。
「これ、私も弓矢使ったほうがいいですかね? というかあれ弓矢ですよ? ピリァメイスはメイスしかつかわないんじゃなかったんですか⁉」
盾に身を隠しながらぽちを弓の形に変形させ矢筒をとりだした私は横で同様に盾に隠れるゼィハに尋ねます。彼女は盾に隠れながら本を読むという端から見れば狂人のような所業をしています。
そして、私の声に気付いたのか本を閉じこちらを見てきます。
「なんですか?」
「いや、私も弓矢を射たほうがいいのかなぁと思ってね。あとなんで矢が飛んでくるんですかね?」
一応は戦争に参加してるわけですしね。
「彼ら曰く弓矢は『空飛ぶメイス』らしいですよ。それと弓矢を射るのであればもう少し待ちましょう」
「なぜです?」
戦闘中とはおもえないほどのゆったりさで魔法のカバンからいろいろと取り出し、カップに何かを注いでいます。その湯気がでるカップを優雅に口元に持っていきます。
「あー、紅茶おいし」
『ゆる⁉︎ リリカもゆるいけどゼィハもゆるいよ⁉︎』
「いえ、くーちゃん。私もさすがにあれほどゆるくはないて思うんですがね」
さすがに戦いながら紅茶は飲めませんよ。
「戦いの定石というのはあたしにはわかりませんがドラクマとピリァメイスに限ってはわかります」
「と言うと?」
口にしていたカップを放すとゼィハは指を三本立ててきます。
「一つは今やっている遠距離での削り合いです。主に弓兵や魔法使いが活躍する場ですね。この段階で敵の数を削っておけばかなり有利に戦闘を進めることができます」
「二つ、次に前に出るのは歩兵です。剣、槍、斧といった接近戦に強い武器を扱う者たちが映える番です。英雄と呼ばれる類の人物がよく生まれるのがここです。同時に一番戦場が膠着する場でもあります」
「三つ、騎兵または魔法騎兵の出番です。これが戦場の花形とも呼ばれる者ですね。圧倒的な機動力を持って敵を叩き潰します」
「とこれら三つが今まで私が見てきたピリァメイスとドラクマの戦争の形ですね。ですので少し待つと歩兵が前面に出だします。弓を射ながら戦場を見るならそれからでもいいでしょう」
「なるほど」
確かに盾の陰から覗くと先ほどまで私の周りにいたはずの冒険者達の姿が見えませんし、いたとしても私と同じような遠距離系、弓兵や魔法使いばかりですね。
弓矢も先ほどのように凄まじい数ではなく少なくなってます。というか前線に向かった冒険者や騎士団の上に降り注いでますが。あれ、大丈夫ですかね?
「歩兵もある程度は魔法で強化されてますから易々とは死なないで……」
ゼィハの言葉の途中で私の視界に入っていた歩兵の一部が弾けとびました。
なにやら赤黒い物も飛び散ってますね。
「あれで無事とはドラクマの騎士や冒険者は丈夫なんですねぇ」
先ほどの攻撃は明らかに魔法。しかもかなりの高位魔法でしたね。
「あー、状況が変わりましたね。ピリァメイスが魔法を使ってくるとは……」
「あ、メイスしか使わないんじゃないんですか?」
「大方、次は『メイスの波動』とでも言うんでしょう」
『いい加減だなぁ』
三人で話している間も『メイスの波動(仮)』がこちらの陣営に炸裂していきます。ですがピリァメイスの方にも高位魔法が放たれ始め双方に多大な被害を出し、隊列は崩れ穴が開きつつあります。さらにその穴を広げるべく、前衛か前進。もう何が何だかわからない乱戦が始まりました。
「……なんでしょう。私が想像していた戦争より大分血生臭いですね」
『すごいね』
今、私の前で繰り広げられているのは優雅さや気品といったものが全く存在しない殺し合いです。
唖然として見ていると軽い音が私の耳に入り、さらには頬に痛みを感じました。
「痛!」
「突っ立ってると死にますよ」
盾に隠れたまま再び紅茶を飲みながらの読書に戻るゼィハ。私は痛みがあった頬を軽く指で拭うと血が付いていました。
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