エルフさんが通ります

るーるー

使いの者?

「はい、地上」


 魔ノ華マノハナを使い岩盤をぶち破りその穴を使い地上へと向かった私は降り注ぐ太陽の光を懐かしく思いながらつぶやきます。


「ああ、懐かしき太陽!」
『いやいや、精々六時間位だからね?』


 私の肩に座ったくーちゃんが呆れながら訂正してきます。
 相変わらず細かいことを気にする精霊ですね。


「あああああああ! メガァ! 目がァァァァァァァ!」


 大きな声に振り返るとゼィハが両目を抑えながら白い服が汚れることなどを全く気にせず転がりまわっていました。


「……なにしてるんですか?」
「うう、長年のダンジョン暮らしのせいで太陽の光を見ていなかったもので顔を出した時に太陽の光に殺られかけましたよ」


 目を未だに抑えながら立ち上がってきたゼィハですが軟弱すぎるでしょう。そんなままじゃ弱肉強食のこの世界では生きてはいけませんよ。


「わ、私を置いていくなぁ!」


 ベシュも穴から顔をだしています。この凶戦士バーサーカーはかなりのタフさです。バカですが。


「ベシュ、ダンジョンを出た今あなた達とはすでになんでもありません、どこへでも失せてもらってもいいですよ?」
「あ、相変わらず凄まじく上から目線ね」
「上から目線ではありません。上なんですよ」
『言い切った⁉︎』


 ぷるぷるとおそらくは怒りで震えているであろうベシュから視線を外し考えます。これからどうするかを。


「元々は戦争見学に来たんですよね。ドラクマには」
「そうなんですか」


 ようやく目が慣れましたかと言おうとゼィハの方を向くと彼女は黒く塗りつぶされた眼鏡を着用していました。


「あー 変わった眼鏡ですね?」
「はい、これは古代魔導具アーティファクトのひとつ黒き眼鏡サングラスです」
「なんだか禍々しい名前ですね」
「なにをおっしゃりますか! この漆黒のガラスは現代の魔法技術では再現できないものなんですよ! この黒さ! 薄さ! さらには黒いのにちゃんと向こう側見えるという素晴らしい魔導具なのですよ!」
「わ、わかりました」


 ゼィハ、古代魔導具アーティファクトを愛しすぎでしょう。なんなんですかこの熱意は……
 というかこんな物でも古代魔導具アーティファクトになるんですね。確かに今の魔法技術では作れそうにありませんから。


「さて、ゼィハはどうしたいですか?」


 一応パーティの一員のわけですから意見を聞いておきましょうか。


「あたしも実験がしたいので戦場にいくなら歓迎ですね」
「となるとドラクマの戦争がいつ開戦されるかですね」


 シェリーはまだすこしかかるだろうとが言っていましたが実際はどうなのかはわかりませんからね。


「戦争になればドラクマの方に参戦するので?」


 ウキウキといった様子でゼィハが尋ねてきます。
 なんでそんなに楽しそうなんですか……


「私としては見ているだけにしたいんですが一方的というのは観客側としてはつまらないので介入しますよ」
『それは観客じゃないよ』
「つまらないものをみせるのが悪いんですよ」


 つまらないものを見る趣味はありません。どうせなら楽しいものが見たいですし。


「ん?」


 ふと考えながら視野を上に向けると一羽の鳥が大きく旋回しているのが見えました。それも私たちの頭の上をです。


『でっかい鳥だねぇ』


 くーちゃんのように素直な感想を述べる間もなく私はその鳥をしばらく見つめた後、ベシュとガルムへと視線を向けました。


「なるほど、あれがオーランドが言う『鳩』なわけですか」


 初めて聞いたときはお酒で酔っていたのでよくわかりませんでしたが『鳩』とはエルフの一族で使われる連絡用の鳥であることを思い出しました。
 その『鳩』が頭上を旋回しているということは里より何か伝令、あるいは指令が届いたのでしょう。
 真っ白な鳥がベシュを見つけると下降を開始し始めます。ベシュもそれを見て止まるように腕を出します。
 そして真っ白な鳥はなぜかベシュの腕をスルー、一度旋回するとベシュの頭の上に着地します。それはもうがっしりと鉤爪を立てて。


「痛い痛い痛い! そこ違う! なんで頭にとまるの⁉︎ 腕! 腕の方に行きなさいよ!」


 悲鳴と抗議をベシュが上げますかが『鳩』のほうは素知らぬ顔で頭に居座り続けています。


「なにやってるんですか……」


 呆れた様子でベシュの馬鹿らしい動きを見ていましたが、羽の羽ばたく音が私の耳にも響いてきたので振り返ります。すると私の肩に真っ白な紙で作られた鳥が翼をはためかせながら止まるところでした。


「……これはなんでしょう?」
「凄い! これは古代魔法の一つですよ!」


 私の肩に止まる紙の鳥をまじまじと見ながらゼィハが興奮したような声を上げます。
 私の知っている人物の中にこんな魔法を使えそうな人は一人しか心当たりがありません。
 紙の鳥に指を差し出すと特に警戒するそぶりを見せることなく私の指に乗り移り、軽い音とともに書状へと変化しました。
 これが彼女の言う使いの者、なんでしょうね。


『なんの手紙? なんの手紙?』


 紙の鳥だけでもテンションが上がっていたくーちゃんですが手紙の内容も気になるようで私の手元を覗き込んできていました。
 私も手紙を見ましたが内容が実にシンプルで好感が持てました。


「ドラクマとピリァメイスの戦争がおそらくは近いうちには開戦いたします。楽しき悪戯を 
 シェリー」


 退屈はしなさそうですねぇ

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