エルフさんが通ります

るーるー

は? ノックは常識でしょう?

『いやぁぁぁぁぁぁぁあ!』


 私が笑いながら魔ノ華マノハナを振るい魔力弾を乱射していると悲鳴が上がりまくっていました。
 魔ノ華マノハナから放たれた魔力弾は大きく、通路を塞いでいた瓦礫を粉砕、さらには上から降り落ちてくる瓦礫すらも叩き潰し眼前の障害をなかった事にしていきます。
 ただ威力が高すぎたせいで瓦礫を貫通し、さらなる破壊を繰り広げていますが……


「リリカ! やめて! さっきから天井が変な音してるのよ!」
「私には聞こえないから問題ないですよ」


 ベシュの抗議の声を無視した私は魔ノ華マノハナを振るう手を止めません。
 上がり続ける崩壊音、さらに重なるように悲鳴が上がります。


「ははははははは!」


 対して私は愉快でたまりません。物を壊すのがこんなに愉快な事だったとは初めて知りました。
 土煙がもうもうと立ち登り、魔力の光が暴れ狂います。ひたすらに衝撃を、より強い衝撃を放つためだけに魔ノ華マノハナを指揮者の如く操ります。
 それをしばらく繰り返しているといつしか悲鳴は聞こえなくなりただただ破壊音だけが響くようになり、次第に砂埃も上がらなくなってきました。


「ん?」


 魔ノ華マノハナによる魔力弾応射を止め、刀な状態に戻すと私は瓦礫が完全に消え失せた通路に向かいツカツカと進みます。


『終わった?』


 耳を塞いでいたくーちゃんが尋ねてきます。よく見るとベシュ達も耳を塞いでいた。


「終わりましたよ」


 魔ノ華マノハナを鞘へと戻し真名解放状態を解除します。
 周囲に漂っていた嫌な感触の魔力が消え去っていました。まぁ、魔ノ華マノハナに吸わして壁の破壊に使ったからなんですけどね。


「だいぶ清々しくなりましたね」
「清々しいとかの前に死ぬからね!」


 私の後を追うようにベシュ達がやってきます。


「あんな落盤に巻き込まれて死ぬようならそこまでの人生でしょ?」


 ベシュがあの程度で死ぬとは思えませんが。
 ベシュならば 巨大を討つ剣ヴァングラミーを使えば容易く自身だけなら守る事ができるでしょうし。


「さて、お目当のものはこの奥ですかねぇ」


 破壊し尽くした通路の先、そこには明らかにこの洞窟であるダンジョンには不釣り合いな歪な扉がありました。


「扉ぁ?」


 私の前方に同じ扉を見たベシュか明らかに怪しんでいるかのような声を上げますが私は好奇心を抑えきれずに扉に向かい駆け出します。


『リリカ! 危ないよ!』


 素早く扉に近づくとドキドキしながらノックをします。


「こんにちはー」
「ちょ⁉︎ なんで挨拶してるの!」
「何言ってるんでか? ノックは常識でしょう?」


 ベシュはここまで頭が悪かったでしたかねって…… なんですか? ガルムにオーランド、くーちゃんまでも信じられない物を見たと言わんばかりの表情です。


「……なんですか?」
『リリカ、なにか悪いものでも食べたの?』


 いや、なんでそんな心配そうな顔をしてるんですか。


「どこかで頭を打ったのかも」
「ならかなりの強打だぞ? あの歩く非常識が常識を語ってるんだぞ?」
「……夢じゃない?」


 いや、反対のエルフ共も大概な物言いだった。
 無性にイライラしますね。


「はいはーい、今いきまーす」


 そんなイライラしている私の耳に能天気な声が入りました。
 そう、ダンジョン内にこんな扉があるからいけないんです。


「はい、どちらさま……」
「これのせいで!」


 叫び宙に跳躍。クルリと体を回し、今まさに開けられようとした扉に向かい後ろ回し蹴りを叩き込んだ。


「え…… ぐばりうぇぇぇぇぇ!」


 無意識のうちに魔力で強化し放った蹴りは扉をいとも容易く砕き、さらには開けようとした人物の顔面に突き刺さり、扉の向こう側へと吹き飛ばしました。一瞬、顔が見えましたがすぐに吹き飛ばされた扉の主は扉の中に消えると中から何かが壊れるような音を響かせ、悲鳴をあげていました。


「ふぅ、すっきりした」


 軽やかに着地し、悲鳴と破壊音を聞いて満足した私は満足します。


『ああ、良かったリリカはリリカだ』


 なぜかくーちゃんがホッとしていました。

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