エルフさんが通ります

るーるー

おまえ、使えるやつだったんですね

 さて、戦闘では壁役というのがとても大事になります。
 壁役というのは言わば私のような弓を使う者や魔法使いといった言わば後衛を護るために前線で戦い続ける人のことをいうわけですが、エルフの里では一通り武器を触らされるので得意、不得意はありますができないことはないのです。
 ちなみに私は後衛に入るわけですがベシュ、オーランド、ガルムは前衛に位置します。しかもかなり強いと付きます。
 そんな強い彼女らと対等に戦えるのは魔ノ華マノハナや精霊であるくーちゃんの魔法があるからなわけで私一人ではすぐにやられることでしょう。


 さて、そんなとてもお強い三人が壁役にいるわけなので私はというと一応弓を出してはいますが眺めているだけで魔物が吹き飛んでいくという大変楽な位置にいるのです。


「せい!」


 声を上げながらベシュが 巨大を討つ剣ヴァングラミーを振るい土の塊の魔物であるゴーレムを容易く断ち切ります。
 あれ結構硬いはずなんですけどねぇ。
 オーランドとガルムは切り裂くことはできませんが回避しやすい位置取りをし続けちまちまと削っています


「気長な作業ですねぇ」
『リリカできなかったじゃん』
「むぅ……」


 くーちゃんの言葉に私は黙り込みます。
 そう、私はくーちゃんの言う通りベシュのように断ち切るともオーランド達のように立ち位置を変えながら切るということができなかったのです。
 きっかけは妖刀ぽちでゴーレムを一刀の下に切り捨てた時でした。


「リリカってその刀以外でゴーレム切れるの?」


 ベシュが何気なく言った一言で私はオーランドの剣を使いゴーレムに挑むことになったのです。
 結果はええ、全く切れませんでしたよ!
 おかげでベシュには笑われる羽目になったので死にたくなりました。
 つまりは私はこのぽちの切る味に頼りすぎていたということがよくわかったのです。


「そこそこ戦えるようになっていたと思っていただけにショックですよねぇ」
『慣れればいいだけじゃない』


 自信なくしますよ。闘い方、ちゃんと学ばないといけませんね。


「ちょっとリリカ! あなたちゃんと援護しなさいよ!」


 意気消沈している私とは真逆? というべきかベシュが怒りながらこちらに向かってきています。
 その後ろには叩き斬られ土塊に戻ったゴーレムの姿がありました。


「別に普通に勝てるでしょ? 弓矢もタダじゃないんですから。ベシュの実力なら楽勝でしょう?」
「ま、まぁね! 私にかかれば楽勝よ!」


 ちょっと褒めただけで機嫌が直ります。この娘、本当に大丈夫でしょうか? あっさりと騙されて身ぐるみどころか奴隷にされてしまってもおかしくないくらいチョロいですね。
 まぁ、これのおかげで楽できるんですからパーティにいる間は煽てておきましょう。


『あ、悪い笑顔だ』


 最近くーちゃんは私の笑顔を悪いてとしか言わなくなりましたね。
 しかし、刀と弓と二つも武器を持つとかさばりますね。


「ぽち、お前気を利かせて弓の形とれないのですか?」


 元は大剣だったのが刀の形に変わったのですから弓の形にくらい変われるでしょう。


「それともできませんか?」


 私は若干意識して馬鹿にするように告げます。
 すると抗議するかのようにぽちが震え魔ノ華マノハナになってもいないのに黒靄が現れ私の背負っている弓に纏わりつき始めます。瞬間、背負っていた弓は溶け出しました。


「ああ⁉︎ 貰ったばかりなのに!」


 私が大声をあげている間に黒靄は再びぽちの中に戻って行きました。そしてぽちが振動し始めています。


「なんです?」


 なんとなく抜け! と言われている気がしたのとで仕方なしにぽちを鞘から抜き放ちます。
 するとぽちの真紅の刀身が割れ刀の柄下からも刃のような物が現れ、上と下の切っ先を繋ぐように魔力の糸が張られました。


「おお」
『形変わった!』


 くーちゃんと私は感心した声を上げます。試しに魔力の糸を引っ張ってみると弓の弦を引っ張っているような感覚でした。
 試しに矢を番えてみると普通に弓として機能しています。


「おまえ、使えるやつだったんですね」


 しみじみというと不機嫌そうにぽちが震えてきます。


「元にももどれるんです?」


 尋ねるとぽちは素早く元の刀の形状へと戻りました。
 な、なんで便利な武器ですか。
 これなら遠距離、近距離両方いけますね。


「リリカ! 早く来なよ! 次の階層への階段見つけたよ!」
「はいはい」


 随分と先のほうで飛び跳ねているベシュを見ながらわたしは理想の形に変化したぽちを鞘に収め笑いながら歩くのでした。

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