エルフさんが通ります

るーるー

ふむ、真の冒険者ですか

 スタスタと私はくーちゃんを肩に乗せて歩きます。
 すでに買い物は済ませ魔法のカバンマジックバックの中には大量の弓矢、そして食料が詰め込まれています。いくら詰め込んでも問題ないのはとても素晴らしいことですね。
 目指す場所は冒険者ギルド。といってもいくのは酒場なんですけどね。
 酒場と冒険者ギルドはよく一体化しているものなんですね。


「さ、情報集めてダンジョン行きますよ」
『やる気満々だなぁ』


 肩のくーちゃんが呆れたように言ってきます。精霊にはワキワクするような出来事がないんですかね。
 そんなことを考えながら冒険者ギルドへの扉に手をかけようとすると扉が乱暴に開け放たれました。


「あぶないですね」
「ああん? なんか言ったか?」


 危うく顔を強打されかけたことに対して思わず零れた声が聞こえたのか険のある声が私の頭上からかけられました。
 めんどくさげに見上げると私より二回りは大きな男の人が立っていました。使い込んだ防具、そして使い込まれた武器、見るからにベテラン冒険者と言った風格が漂っていますね。


「私の、美少女たる私の顔に傷がついたらどうするんですか!」


 ビシッと大男に向かい指をさすと大男は何故か少し動揺してました。自分が大それたことをしでかしたか気づいたようですね。


「ふ、ふん! 俺たちは今からダンジョンに向かうんだ! そんなとこで突っ立ってるやつが悪いんだよ!」


 バツの悪そうな顔をしつつも大男は強気な姿勢は崩しません。
 あ、ダンジョンに行く冒険者でしたか。


「ダンジョンってどんなとこなんですか?」


 せっかくの冒険者ですし話を聞いてみましょう。うまくいけばなにか教えてもらえるかもしれませんし。


「なんだお前。ダンジョンに行くのか?」
「その予定です」


 逆に私が質問されたので丁寧に答えると突如、冒険者達は大きな声を上げて笑い始めました。突然のことでびくりと体を震わします。くーちゃんも耳を押さえていました。


「お前のようなチビがダンジョンに挑むとは舐められたもんだなぁ!」
「まったくだ! 冒険者を舐めてるとしか思えねぇな!」


 下品な笑い声を上げ、私を見下ろすようにしながら馬鹿にしてきます。
 いや、あなたのような大柄な男から見たら私なんて子どもみたいなものでしょうけどね。


「どうでもいいのでダンジョンについて教えてもらえません?」
「はっ! ガキに教えることなんてね! 行くぞ!」


 大柄な男が声を上げ、私を押しのけ歩き始めるとパーティメンバーらしき人たちが後に続いていきます。
 誰もが私より身長の高い方々なので私の横を通るときに笑いながら去っていきます。
 そんな後ろ姿を見ながら私はため息をつきます。


「はぁ、情報収集失敗ですね」
『え、情報収集だったの⁉︎』


 冒険者から話を聞くのが一番の情報収集だと思うんですが違うんでしょうか?
 だって場所もわからないわけですし。
 ん、場所?
 頭に何かが閃いた私は満面の笑みを浮かべます。


「よし、いきますよ!」
『冒険者ギルドは?』


 私が入ろうとしていた冒険者ギルドの扉に背を向けたことにくーちゃんが疑問を口にします。


「だってダンジョンの場所を知ってて経験豊富な冒険者ですよ? ついていったら楽じゃないですか」


 ヒャクブンハイッケンニナラズとか言うらしいですし、聞くよりも見た方が速そうですからね。


『ズルだなぁ』
「効率的と言ってください。ほら、行きますよ! 早く行かないと見失います」


 すでに姿が小さくなりつつあるおそらくは熟練度の高いであろう冒険者を目指し駆け出します。

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