エルフさんが通ります
さてどうしますかね
「ふふーん、黒の軍勢ですか」
オーランド、ガルムが去った酒場で私は楽しげに笑ながら新たに頼んだ果実水を飲みます。
『なにか楽しいことわかったの?』
自分の分のおやつを食べ終わったくーちゃんがテーブルに座り私を見上げて来ます。
これは楽しいに決まっています。
「森巫女様が出した予言は外れたことがないと有名ですからね。となると確実に北でなにかが起こります」
これは退屈しません。事に巻き込まれればの話ですが。
しかし、おしいのはここでなにが起こるかということが全くわからないということです。
「今わかっていることは北でなにかが起こるかという予言、そして混乱と共にやってくるという黒の軍勢」
この情報だけではわかりませんね。
一番理想的なのは、
「向こうから接触してきてくれるととても楽なんですがねぇ」
『危ないんじゃないの?』
「今の所は私にも被害もなければ利害もないんですけどね」
退屈じゃなかったらいいんですけどね。
とりあえずはこの街で情報を集めるしかないですね。
「もし、そこのあなた、黒薔薇に興味はお有りで?」
私の視界に一輪の黒い薔薇を持った人が立っていました。
その人物に視線を向けると翠の髪の女性が立っています。
「ああ、騎士の国のお姫様ですか」
「覚えていただいていて光栄ですわ、リリカ様」
にっこりと笑いかけてくるのはかつての国のお姫様でした。服装は以前のような豪華な衣装ではなく真紅のドレスに身を包んでいますね。確か名前は……
「名前なんでしたかね?」
「あら、そう言えば名乗っていませんでしたね。私の名前は」
「お嬢様」
名乗ろうとしたお姫様の後ろからこれまた以前みたメイドさんがこちらに向かい歩いてきている所でした。
以前と同じような黒と白を基調とした服ではなく完全に黒で統一された服を着こなしています。
「アリエル」
いささか不機嫌そうな表情を浮かべながらアリエルと呼ばれた元メイドを見ます。
なんだかメイドさんも以前とイメージが違いますね。なんか前はオドオドしていた気がするんですけど。
「なあに、アリエル。私は気に入ったんだけど?」
「お嬢様、さすがに承認されかねますけど」
なんの話をしてるかはわかりませんが、なにかもめてるみたいですね。
「なにやら楽しい話ですか?」
「ええ、パーティにお誘いに」
「お嬢様……」
呆れたかのようなアリエルの声が響き、挙句にため息をついていますね。
『絶対やばいやつだよ?』
「そんなことはありませんよ。精霊さん」
くーちゃんの方を見ながらお嬢様がにこやかに微笑みます。ふーん、精霊が見えてるんですね。
『わたし、見られてる!』
なぜか体を隠すような素振りを見せるくーちゃん。
「だから来ていただけませんか? リリカ・エトロンシア様」
そう言いながらお嬢様は私に手を差し出して来ます。
これは悪魔の囁きというやつですかね。
「退屈はしませんよ?」
悪戯の共犯を持ちかけるような無邪気な笑みを浮かべてきます。
ははぁ、これは私と同種ですね。
人の不幸になる所を見るのが面白くて仕方が無い。そういった笑み。
「あなたも退屈なんでしょうねぇ」
そう微笑みながら私はお嬢様が差し出してきた手を握り返しました。
「ようこそ、黒の軍勢、『黒薔薇』へ」
悪魔の手は意外に人肌でした。
オーランド、ガルムが去った酒場で私は楽しげに笑ながら新たに頼んだ果実水を飲みます。
『なにか楽しいことわかったの?』
自分の分のおやつを食べ終わったくーちゃんがテーブルに座り私を見上げて来ます。
これは楽しいに決まっています。
「森巫女様が出した予言は外れたことがないと有名ですからね。となると確実に北でなにかが起こります」
これは退屈しません。事に巻き込まれればの話ですが。
しかし、おしいのはここでなにが起こるかということが全くわからないということです。
「今わかっていることは北でなにかが起こるかという予言、そして混乱と共にやってくるという黒の軍勢」
この情報だけではわかりませんね。
一番理想的なのは、
「向こうから接触してきてくれるととても楽なんですがねぇ」
『危ないんじゃないの?』
「今の所は私にも被害もなければ利害もないんですけどね」
退屈じゃなかったらいいんですけどね。
とりあえずはこの街で情報を集めるしかないですね。
「もし、そこのあなた、黒薔薇に興味はお有りで?」
私の視界に一輪の黒い薔薇を持った人が立っていました。
その人物に視線を向けると翠の髪の女性が立っています。
「ああ、騎士の国のお姫様ですか」
「覚えていただいていて光栄ですわ、リリカ様」
にっこりと笑いかけてくるのはかつての国のお姫様でした。服装は以前のような豪華な衣装ではなく真紅のドレスに身を包んでいますね。確か名前は……
「名前なんでしたかね?」
「あら、そう言えば名乗っていませんでしたね。私の名前は」
「お嬢様」
名乗ろうとしたお姫様の後ろからこれまた以前みたメイドさんがこちらに向かい歩いてきている所でした。
以前と同じような黒と白を基調とした服ではなく完全に黒で統一された服を着こなしています。
「アリエル」
いささか不機嫌そうな表情を浮かべながらアリエルと呼ばれた元メイドを見ます。
なんだかメイドさんも以前とイメージが違いますね。なんか前はオドオドしていた気がするんですけど。
「なあに、アリエル。私は気に入ったんだけど?」
「お嬢様、さすがに承認されかねますけど」
なんの話をしてるかはわかりませんが、なにかもめてるみたいですね。
「なにやら楽しい話ですか?」
「ええ、パーティにお誘いに」
「お嬢様……」
呆れたかのようなアリエルの声が響き、挙句にため息をついていますね。
『絶対やばいやつだよ?』
「そんなことはありませんよ。精霊さん」
くーちゃんの方を見ながらお嬢様がにこやかに微笑みます。ふーん、精霊が見えてるんですね。
『わたし、見られてる!』
なぜか体を隠すような素振りを見せるくーちゃん。
「だから来ていただけませんか? リリカ・エトロンシア様」
そう言いながらお嬢様は私に手を差し出して来ます。
これは悪魔の囁きというやつですかね。
「退屈はしませんよ?」
悪戯の共犯を持ちかけるような無邪気な笑みを浮かべてきます。
ははぁ、これは私と同種ですね。
人の不幸になる所を見るのが面白くて仕方が無い。そういった笑み。
「あなたも退屈なんでしょうねぇ」
そう微笑みながら私はお嬢様が差し出してきた手を握り返しました。
「ようこそ、黒の軍勢、『黒薔薇』へ」
悪魔の手は意外に人肌でした。
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