エルフさんが通ります

るーるー

卑怯? 利にかなった戦い方です

「さて待っていてくれるとはなかなかに律儀ですね」


 斬りかかってくればあっさりと殺せたでしょうに。ニヤニヤと笑っているだけというのはそれだけ自信があるのでしょうけどね。


「隙を見て斬るなんてせっかくリリカに勝つのにやりたくない」
「効率的でしょ?」


 やれるときにやる。
 それが殺るであっても私のスタンスは変わりません。楽をして利を取ります


「また誇りですか、ただ古臭いだけですよ」
「そこまで言うのならば……」


 言葉の途中でべしが視界から消えた! ように観客には見えたのでしょうが、私には走っているベシュが見えるんですよね。
 背後に回り込み大剣を上段に構えていることもね。


「すぐさま跪かせてあげる!」
「いやぁ、ムリでしょ」


 すぐに後ろに振り返ると殺意にまみれた刃が私目掛けて振り下ろされるのが全く同時でした。
 当然そんなもの食らうわけにはいかないので刀を振るいあげ迎撃しますがもともとバカみたいな膂力があるベシュは一瞬の均衡をたやすく力尽くで壊します。
 しかし、一瞬でも動きが止まれば私も後ろに下がれるので適当に、でも、当たれと願いながら刃をベシュの顔面に振るいながら後ろに下がりました。
 立て直す隙を与えないと言わんばかりにベシュが再びこちらに踏み込んで来ます。自身の体を回転さし、遠心力を得、横からの受けるのも馬鹿らしいほどの破壊力の斬撃を受けるなど愚の骨頂。
 私も雪煙を上げながら、静止からの加速。回転しながら迫るベシュに向かい疾走。途中こちらからは手にしていた妖刀ぽちを全力でベシュの顔面に向け投擲します。
 相変わらず回転しながらまっすぐかっこ良く飛ばすことはできませんでしたがそれでも狙い通り大剣を力任せに回転しながらこちらに向かってくるベシュの頭に向かい飛翔します。このまま行けばベシュの無防備な頭を輪切りへと変えてくれるでしょう。


「ぬがぁぁぁぁぁぁ!」


 しかし、腐っても戦闘狂。
 横薙ぎに回転さしている刃の軌道を膂力のみで無理やり上へと向け、致命傷を避けます。
 相変わらず気合いで押し切る戦い方です。あれがいわゆる脳筋というやつでしょう。
 しかし、いかに脳筋といえどもかなりの無茶をしたのか勢いが落ちます。
 ベシュに向かい走り続ける私は動きの鈍くなったベシュの大剣に全てを弓矢にオールボゥを付けた手で触れます。
 大剣が銀の光に包まれ、一本の銀矢に変わったのを見た私は力尽くで銀矢を奪いそのままベシュの背後へと走り抜けます。


「ああ⁉︎」


 間の抜けたベシュの声が背後から聞こえますが、、私は足に力を入れ急停止、そしてすぐ様反転。
 ガラ空きとなったベシュの背中に向かい銀矢を両手でもち振りかぶります。
 再び、銀矢が光を放ち元の大剣に戻ると私ではとても持てない重みになります。初めから支える気などなかった私はそのまま重みで振り下ろされた大剣を少しの力を入れて軌道を修正します。


「自分の大剣でぶち抜かれてください!」


 軌道を修正された大剣はガラ空きのベシュの背中へと自ら落ち、彼女の背中から鈍い音を立てながら地面に突き刺さりました。
 さすがにベシュもエルフの服を来ているので即死にはなりません。
 背後からの衝撃でよろめいたベシュでしたが首だけをこちらに向ける彼女の瞳はまだ折れていません。だから……


「トドメです!」


 突き刺さりもう振り上げられない大剣から手を離し、私は勢いのついたまま大地を蹴り、こちらを睨みつけるベシュの背中へと渾身の膝蹴りを叩きつけます。
 足から確実に何かを砕いた感触を得た私ですがまだ、油断はしません。ベシュの髪を掴みにげれないようにするとそのまま地面に勢い良く倒します。
 地面にベシュの身体が倒された瞬間、背中に接触している膝から再び何かが折れる感触が伝わってきました。


「がひゅっ!」


 明らかに異常な呼吸音をして倒れたベシュの上からゆっくりと立ち上がり、顔にかかった銀の髪をかきあげました。


「勝ち」
『完璧殺し技だよね⁉︎』
「エルフ流戦闘術心得、死ぬまで攻撃をやめるなとありますからね。今回は話を聞く必要がありますから九割殺しで済ましてますよ?」
『これで九割……卑怯な戦い方なきがするよ』
「卑怯? 利にかなった戦い方ですよ? 不満なら脚でも斬りますか?」
「それはやめてもらおうかリリカ」


 私が魔法のカバンマジックバックに手を入れナイフを取り出したのを見てオーランドが止めに入ってきました。ガルムのほうはポーションを取り出しながらこちらに歩いてきています。


「このバカベシュが言った通りに情報は渡す。ポーションもだ。一応は幼馴染には配慮するものだろう?」


 ガルムが放ってきたポーションを受け取りながらベシュの上から仕方なしにどいてあげます。
 私が退くとガルムは素早く近づくとポーションをベシュの口元に持っていくと何本も飲まし始めました。明らかに口から零れてますし苦しそうな声をベシュが上げていますがガルムは気にせずに「飲め飲め」と次から次えとベシュの口に注ぎ込んでいきます。


「さて、では情報を貰いましょうか」


 ポーションを飲みながらオーランドに振り返ると、彼は嫌そうな顔をしながらも頷くのでした。

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